総務のトピックス

【労務トピックス】:

最高裁で労災認定された宴会帰りに起きた事故について

2017-02-17 15:00

 業務災害の認定を受けるためには、一般的に「業務遂行性」と「業務起因性」の2要素があることが必要です。今回は、労働者が歓送迎会後に参加者を住居先まで送り届ける途中に起きた交通事故が業務災害として認められた特殊な事件を取り上げます。

1.事案の概要
(行橋労基署長事件 最高裁第二小法廷 平成28年7月8日判決)

 提出期日が翌日に迫った資料の作成業務を一時中断し、会社の歓送迎会に途中参加した労働者が、歓送迎会終了後、業務を再開するために会社の所有する車で帰社する際、研修生らを住居先まで送る途上で交通事故に遭い死亡しました。

 遺族が行橋労働基準監督署長に対し労災保険を給付請求したところ、同署長は労働者の死亡は業務上の事由によるものに当たらないことを理由に不支給決定し、これを不服とした遺族が取消しを求め訴訟を起こしました。


2.裁判所の判断

 原審の判決では、本件歓送迎会は親睦を深めることを目的とした私的な会合であり、労働者が途中参加したことや研修生らを送る行為が任意であったことが、事業主の支配下にある状態とは認められないという理由で遺族の請求を退けました。

 しかし、最高裁の判決ではこれを破棄し、労働者の運転行為について業務遂行性を認め業務災害と認定しました。

 本件の論点は、従来の判決と同様に労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にある状態において発生した事故かどうかという点です。

 最高裁は原審の判断を次の(1)から(3)等の理由により是認することができないとしました。

(最高裁の解釈)
(1) 上司から歓送迎会への参加を強く求められる一方で、提出期日の延期等の措置は執られず、歓送迎会後、その業務に上司も加わると言われたことにより業務再開のために会社へ戻ることを余儀なくされたといえる。

(2) 歓送迎会の費用は会社が全額負担しており、従業員と研修生の親睦を図る目的で全員参加し、関連会社との関係強化等に寄与するものとして企画された行事の一環であるといえる。

(3) 本来、上司が研修生らを車で送る予定であったが、その経路が会社に戻る経路から大きく逸脱するものではないことを鑑みれば、労働者が上司の代わりに研修生らを送り届ける行為は、会社の要請による一連の行動の範囲内といえる。

 以上のことから、労働者は業務を中断してでも歓送迎会へ参加せざるを得ない状況であったとしました。また、住居先への運転行為について上司らの明確な指示がなかったことを考慮しても、事故が起こった際はなお事業主の支配下にあったといえ、事故死と運転行為との間に相当因果関係の存在が肯定できると判断しました。


3.宴会時における業務性の有無を判断するには

 今回ご紹介した事案は特殊な状況下における事例判決であり、本件のように宴会が職場外で開催されたことやアルコール飲料が提供されたこと等は、事業主の支配下にあることを否定しうる消極的事由となりますので、個別の事案によっては労災として認められない場合があります。

 それではどういった点が消極的事由となる可能性があるのか、いくつかポイントとなる点をご紹介いたします。

(1)開催目的:事業活動に資する性質(仕事の打合わせや接待等)はなく、慰労や懇親が中心となる場合

(2)参加の要否:業務命令ではなく、任意に参加が決められる場合

(3)参加者:運営に必要な準備を行う幹事や司会進行役ではなく、単なる出席者である場合

(4)費用:会社負担ではなく、参加者が支払う場合

(5)開催場所:勤務場所以外で行う場合(ただし、出張先や社用外出の場合はその限りではない)

(6)参加時間:入退出の時間が自由であり、時間拘束されない場合(終了時間が普段の退勤時間を大幅に超える場合は、たとえ業務性のある会合であっても消極的事由となる場合がある)


 消極的事由は上記に限定されるものではありませんが、万一宴会時に災害が発生した際は、これらの点を踏まえて業務性の有無を判断する必要があります。

連載協力:税理士法人AKJパートナーズ
    ( http://www.akj-partners.com/