総務のトピックス

【会計トピックス】:

クラウド型ソフトウエアの活用可能性と注意点

2017-09-14 09:00

 最近、「クラウド」という単語を頻繁に耳にするようになりましたが、なぜでしょうか。また「クラウド」にはどのようなメリットがあるのでしょうか。これらの疑問が少しでも解決できるように、管理部門で利用できるクラウド型ソフトウエアの紹介とともに、利用の際の注意点や会計業務に与える影響にも触れながら解説していきたいと思います。


クラウドとは

 クラウドとは、「ハードウエアを購入もしくはソフトウエアをインストールしなくても、インターネットを通じてサービスを必要な時に必要な分だけ利用できるようにした手法」と考えて大筋で正しいと思います。

 利用者のメリットとしてデータアクセスの容易さやメンテナンスが不要となること等が挙げられますが、普及に大きく貢献したのは資金繰りの優位性でしょう。サーバーやソフトウエアを購入する場合とは異なり、多額の初期費用は不要で、ほとんどのケースで毎月10万円にも満たないレベルの使用料を支払うことによりソフトウエアを利用できるため、導入に対し資金面のハードルが下がることが大きいのでしょう。このようにクラウドが普及した結果、「クラウド」という言葉も一般に知られるようになったと考えられます。


管理部門業務に関連のあるクラウド型ソフトウエア

 現在では数多くのクラウド型ソフトウエアがありますが、その中から主なものを紹介して行きます。

1.会計系ソフトウエア

(1)会計ソフト
 最近は入出金情報から自動で仕訳を起こしたりするものもあり便利になりましたが、請求書発行や給与計算等の他のクラウド型ソフトウエアと連携させることにより、利便性をさらに上げることが可能です。

(2)請求書発行
 顧客管理システム等の情報を元に請求書を自動作成し、メールにPDFやダウンロード用URLを添付して請求先に送付するとともに、会計ソフトに情報を反映させるクラウド型ソフトウエアで、請求書の封詰め業務や封筒代・切手代を削減することが可能となります。

(3)債権管理
 得意先ごとに債権額を管理するだけであれば会計ソフトで対応できますが、これはネットバンキングの入金情報を読み取り、債権の消し込みを行うことができる点で優れています。会社独自の消込方法を登録することにより、販売先と入金元の名前が違う場合や複数の支払いを合算で入金してくる場合などにも対処できるようになる優れ物もあり、得意先数の多い会社ほど利用価値が増します。


2.人事管理系ソフトウエア

(1)勤怠管理
 IDカードや生態認証等を利用し出勤・退勤の時間を記録することが基本機能となりますが、会社の就業規則や労働形態に合わせて各従業員の勤務時間や残業時間を計算し、また有給休暇の管理等をしてくれる機能を持つものもあります。勤怠管理ソフトには多くの種類があり機能面も多様ですので、導入を検討する際には自社に必要な機能を事前に整理しておくことをお勧めします。

(2)給与計算
 給与計算にあたり労働時間の集計が最も手間のかかる業務かと思いますが、残業時間等を集計する機能を持つ勤怠管理ソフトと連携させることにより、効率的な給与計算が可能となります。

(3)電子給与明細発行
 給与明細を電子化し、従業員へメール添付やURL通知で送付するものですが、給与計算ソフトと連携させることにより、給与計算のデータを利用して給与明細を自動的・効率的に作成することができるため、作業の削減に役立ちます。

(4)採用管理、人事管理
 上記以外では、採用管理のクラウド、従業員情報やスキル等を管理する人事管理のクラウドも増えてきました。しかし管理部門用のソフトウエアにしては解約率が低くないようで、自社の業務における必要性、活用可能性をよく見極めてから導入を検討されるとよいでしょう。


3.会計・人事管理以外

(1)グループウエア
 スケジュール管理、設備予約、連絡先一覧等の情報を社員間で共有するもので、最近は稟議や社内申請等のやり取りを可能にするワークフローの機能が付いているものも多いです。

(2)経費精算
 旅費交通費、接待費等の精算作業を効率化するものですが、前述のグループウエアや会計ソフトと連携させた場合、グループウエアに行き先を入力するとその情報から交通費の経費精算を自動で行い、さらには会計ソフト用に伝票の起票まで行うことも可能となります。

(3)資産管理
 固定資産管理ソフトのように減価償却費や固定資産税を計算する機能のものや、タグをハンディ端末やスマートフォンで読み込むことで実地棚卸や資産移動を管理するようなソフトウエアなどがあります。


クラウド型ソフトウエアの注意点

1.セキュリティ

 管理部門では機密性の高い情報を多く扱うため、最大の懸念点はセキュリティに関することではないでしょうか。セキュリティ対策は主にサービス提供会社で実施されますが、利用者でとり得る対策としては、ソフトウエアにアクセスできるIPアドレスを限定し、それ以外のIPアドレスからはサイト画面にアクセスできないようにする方法があります。


2.ソフトウエア間の機能連携について

 機能連携が進めば自動化の割合も増えるため、機能のつながっているソフトウエアを一気通貫で導入すれば使い勝手は良さそうに思えます。しかし多くの会社は予算の都合や業務の優先度から、個別にソフトウエアを導入し、その都度ソフトウエア間の機能を連携するため、ツギハギ的な構成となります。その結果、クラウドの場合はカスタマイズの自由度が低いことも原因にありますが、うまく機能連携ができないケースもあり、人的操作によりCSVデータを中継する方法による方がスムーズであることもあります。このような状況にならないように、機能連携の視点も含めて、長期的な導入計画を立ててみてはいかがでしょうか。


3.導入作業

 導入および連携作業には基礎データを用意する必要がありますが、この基礎データは利用者側の担当者がそろえることになります。しかし、作業に必要とされる基礎データをそろえる作業は意外と手間がかかりますので、担当者の実務的な負荷に注意する必要があります。


4.サービス提供会社の信用度

 サービス提供会社に万が一のことがあると、その後、サービスの利用ができなくなるため、ある程度普及しているソフトウエアを選択する方がよいかもしれません。クラウド型サービスを提供する会社は、一般的にサービス開始後は資金繰りが苦しく、一定規模の売上を超えてからは資金繰りが安定的になる傾向にあるためです。


会計業務等への影響

 「ソフトウエア等生産性向上IT導入支援事業」の優遇措置等により、政府はITを利用した効率的な経営を促進しており、クラウド型ソフトウエアの利用者は今後さらに増加すると見込まれます。ITの有効活用により単純業務を軽減できるため、付加価値の低い業務のみ行っていた人は活躍の場が減っていく可能性があります。これに対してITリテラシーの高い人や、ソフトウエアからのアウトプットを検証しそこから経営に有用な提言ができる人は、重宝されるかもしれません。

 また、クラウド連携が進めば、アウトプットの検証方法が内部統制上のポイントとしての重要性を増すかもしれません。
クラウド上のデータも差押えできるように国税犯則取締法が改正されるとの話もありますが、会計監査も税務調査もクラウド化による影響はそれほど大きくはないと思われます。なぜならシステムをクラウドへ移行しても、会社が業務を行うにあたりコントロールすべき重要なポイントは、クラウド移行前とほとんど変わらないと考えられるためです。


最後に

 導入したいと思えるようなソフトウエアはありましたでしょうか。利用者にとってクラウド型は資金繰りに優位性があると述べましたが、長期にわたり使用する場合は、結果的にクラウドの方がコスト的に高くなることもあります。したがって、必要な機能だけを慎重に選ぶ姿勢は必要かもしれません。

連載協力:税理士法人AKJパートナーズ
    ( http://www.akj-partners.com/