総務のトピックス

【会計トピックス】:

「収益認識に関する会計基準(案)」について

2017-11-06 13:00

 企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成29年7月20日に企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」及び企業会計基準適用指針公開草案第61号「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」(以下、「本公開草案」という)を公表しました。
 本公開草案における新たな収益認識基準は、上場・非上場を問わず全ての企業に適用されることになります。本稿では、本公開草案が公表された背景や会計処理についての概要を解説します。


概要

1.背景

 我が国においては、企業会計原則の損益計算書原則に、「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。」とされているものの、収益認識に関する包括的な会計基準はこれまで開発されていませんでした。一方、国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)は、共同して収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、平成26年5月に「顧客との契約から生じる収益」(IASBにおいてはIFRS第15号、FASBにおいてはTopic606)を公表し、IFRS第15号は平成30年1月1日以後開始する事業年度から、Topic606は平成29年12月15日より後に開始する事業年度から適用されます。

 これらの状況を踏まえ、ASBJは平成27年3月に我が国における収益認識に関する包括的な会計基準の開発に向けた検討に着手することを決定し、その後、平成28年2月に適用上の課題等に対する意見を幅広く把握するため、「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」(以下「意見募集文書」という。)を公表しました。ASBJでは、意見募集文書に寄せられた意見を踏まえ検討を重ね、本公開草案を公表するに至りました。


2.適用範囲

 本公開草案においては、次の(1)から(6)を除き、顧客との契約から生じる収益に関する会計処理及び開示に適用することが提案されています。

(1)「金融商品に関する会計基準」の範囲に含まれる金融商品に係る取引
(2)「リース取引に関する会計基準」の範囲に含まれるリース取引
(3)保険契約
(4)顧客又は潜在的な顧客への販売を容易にするために行われる同業他社との商品又は製品の交換取引(例えば、2つの企業の間で、異なる場所における顧客からの需要を適時に満たすために商品又は製品を交換する取引)
(5)金融商品の組成又は取得に際して受け取る手数料
(6)「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」の対象となる不動産の譲渡


3.会計処理

 会計処理については、以下の提案がされています。

(1)基本となる原則

 本公開草案の基本となる原則は、約束した財又はサービスの顧客への移転を、当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益の認識を行うことです。また、この基本となる原則に従って収益を認識するために、次の5つのステップを適用することが提案されています。

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<ステップ1>
 当事者が、書面、口頭、取引慣行等により契約を承認し、それぞれの義務の履行を約束していること等の要件を満たす顧客との契約を識別します。

<ステップ2>
 別個の財又はサービスや一連の別個の財又はサービスを識別し、それぞれについて履行義務を識別します。

<ステップ3>
 契約等で定められた固定の契約価格の他、変動価格と現金以外の対価を考慮し、顧客に支払われる対価と金利相当分(時間価値)の影響の調整を行い、取引価格を算定します。

<ステップ4>
 契約が複数の履行から構成されている場合、履行義務の基礎となる財又はサービスの独立販売価格の比率に基づき、それぞれの履行義務に取引価格を配分します。

<ステップ5>
 履行義務を充足した時又は充足するにつれて収益を認識します。


【事例】

 システム機器(100)の販売に加え、アフターサービス(2年間で10)が付された契約を締結し、当該システム機器を顧客に納品しました(この時点でシステム機器の支配移転が完了し、履行義務が充足されたものとします)。また、顧客との契約書において、システム機器の販売とアフターサービスの提供は明確に区別されています。

<仕訳例>
20171106topics02.png
* アフターサービスは、サービス提供がされる都度、例えば期間配分によって収益計上されます。

(2)契約資産、契約負債及び債権

 顧客から対価を受け取る前又は対価を受け取る期限が到来する前に、財又はサービスを顧客に移転した場合は、収益を認識し、契約資産又は債権を貸借対照表に計上します。契約資産は、金銭債権として取り扱われ、金融商品会計基準に従って処理されます。また、財又はサービスを顧客に移転する前に顧客から対価を受け取る場合、顧客から対価を受け取った時又は対価を受け取る期限が到来した時のいずれか早い時点で、顧客から受け取る対価について契約負債を貸借対照表に計上します。

(3)特定の状況又は取引における取扱い

 本公開草案では、特定の状況又は取引における取扱いのガイダンスと設例が提供されています。
 ・財又はサービスに対する保証
 ・本人と代理人の区分
 ・追加の財又はサービスを取得するオプションの付与
 ・顧客により行使されない権利(非行使部分)
 ・返金が不要な契約における取引開始日の顧客からの支払
 ・ライセンスの供与
 ・買戻契約
 ・その他


4.開示

 開示については、以下の提案がされています。

(1)表示

 本公開草案では、企業が履行している場合又は企業が履行する前に顧客が対価を支払う場合には、企業の履行と顧客の支払との関係に基づき、契約資産、契約負債又は債権を適切な科目をもって貸借対照表に表示することとしています。なお、経過措置として、契約資産と債権を貸借対照表に区分表示しないことができ、その場合、それぞれの残高を注記する必要はありません。

(2)注記事項

 本公開草案では、顧客との契約から生じる収益については、企業の主要な事業における主な履行義務の内容及び企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)を注記することとしています。


5.適用時期

 適用時期については、(1)から(3)が提案されています。

(1)平成33年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用します。
(2)早期適用として、平成30年4月以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用できます。
(3)上記(2)に加え、平成30年12月31日に終了する連結会計年度及び事業年度から平成31年3月30日に終了する連結会計年度及び事業年度までにおける年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができます。


おわりに

 本公開草案は、国際会計基準審議会(IASB)が公表したIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」をベースに、我が国の実務上の配慮を加えて作成されています。新たな収益認識基準は、上場・非上場を問わず全ての企業に適用されることになるため、企業の業態や業種によっては収益の認識に大きな影響を及ぼす可能性があることに留意が必要です。

連載協力:税理士法人AKJパートナーズ
    ( http://www.akj-partners.com/