出社時の座席は抽選。座席管理システムで、固定席からフリーアドレスへソフトランディング
建物設備を総合的に制御・管理するための機器やシステムを提供するアズビル株式会社東東京支店では、オフィスレイアウトを見直し、それまでの固定席からフリーアドレスへと移行した。座席の予約システムとして導入したのは、「YourDesk」だ。採用のポイントや現在の使い方などについて取材した。
ランダムに予約座席を抽選。コミュニケーションを活性化
ビルシステムカンパニー 東東京支店
営業1部 課長代理 吉福 智子さん(左)
担当課長 野村 秀夫さん(右)
アズビルは、グループ全体で社員数が1万人を超えるグローバル企業だ。今回取材した東東京支店は主にビルシステム全般の制御・管理に貢献しており、社員数は約160人。オフィス移転で3つの部署が合流したのを機に、今年4月、レイアウトを根本的に見直した。その結果、同支店は固定席を廃止しフリーアドレス制へとかじを切った。今後は席数を全社員の半分に抑え、テレワークとのハイブリッドで業務を行っていく。
固定席がないとなれば、流動的な席を予約するためのシステムが必要だ。それも単に予約できるだけでは、いつも同じ席、いつも同じ人たちで固まってしまう可能性がある。オフィスレイアウトの改革プロジェクトチームは、せっかくフリーアドレスにするのだから人の流れをつくりたい、と考えていた。そこで着目したのが「座席抽選システム」だ。予約時にランダムな座席を自動的に抽選する機能があれば、コミュニケーションの活性化が期待できる。
フリーアドレス化に先立ち、プロジェクトチームは抽選機能を備えた座席予約システムサービスの比較検討を始めた。すでに他拠点で契約しているシステムもあったが、先々の予約が入れられないなど改善点があり、新たに複数社が候補に挙がった。最有力候補だったのが、サイオステクノロジー株式会社が提供する「YourDesk」だ。改革プロジェクトチームの吉福智子さんが、決定までの経緯を振り返る。
「採用のポイントは、座席抽選システムのほか、事前予約ができること、直感的な使いやすさ、予算などでしたが、いずれの点でも納得できたので導入を決めました」
YourDeskは座席管理・行動記録など、フリーアドレスやテレワークの悩みを解決するために開発されたツールだ。フリーアドレス・テレワークを一元管理でき、ランダム抽選機能のほか、座席の間引き設定などソーシャルディスタンスを意識したWithコロナ仕様にも対応している。座席の使用履歴を記録するので、陽性者が出た場合に濃厚接触者を抽出しやすいのも時代に即していた。
座席管理システムとしては10年以上の歴史があり、金融企業も多く導入する強固なセキュリティを誇る。アズビルとしては、1アカウントにつき月額100円という低価格、かつ初期費用がかからないクラウドサービスであることも魅力だったという。
導入決定までは早かったのだが、実装するにはまだハードルがあった。アズビルの求めるセキュリティ要件が非常に高かったのだ。しかしサイオステクノロジーは、金融系システムで培ったセキュリティの知見を基に迅速に対応し、IPアドレス制限と多要素認証という2つの機能を追加。社内の規定を満たすセキュリティレベルが備わったことで審査は無事に通り、フリーアドレスが本格的にスタートしたのは今年6月のことだ。
指定できる機能も残せるなど、応用の利く使い勝手の良さを評価
フリーアドレスの導入にあたっては、サイオステクノロジーに協力を依頼し、事前に勉強会を実施している。全社員が1時間弱、YourDeskの操作を学んだ。直感的な操作で難しくはないが、セキュリティレベルを上げたため「IDから申し込み→メールで届く認証コードを使って予約完了」と、ステップは通常より増えているという。
「最初は面倒だという声もありましたがすぐに慣れましたし、ビジネス上のセキュリティが優先事項でした。今は座席予約と自社の出勤シフトという2つのシステムを併用して、生産性を維持しながら感染防止に努めています」
紙の書類が多い会社だったが、フルーアドレスにすることで机上に書類がたまることもなくなり、ペーパーレスの実現にもつながった。テレワークを含め、誰がどこにいるのかすぐに検索できるので管理も簡単だ。
自席がないことにいち早く順応したのは、営業部門など普段から外出が多い部署、そして若い世代だった。反対に、管理部門など基本的に社内で仕事をする部署、あるいは年齢が上の世代では抵抗感を示す人もいたという。そういう人たちには部署内でのフォローをお願いし、プロジェクトチームもサポートを続けている。ただ、ランダム抽選機能を強制することはしていない。
「月に一度はオフィスの一角を利用した認定試験がありますし、新入社員のOJTは隣で指導するのが効果的です。固定席が必要なシーンもあるので、席を指定できる機能を追加しています」
指定席を利用して半ば固定化している人もいるが、システムの導入から取材時点でまだ3か月。レイアウト変更の直後に調査したアンケートではおおむね好評という結果が出た。ソフトランディングを目指し、当面は個々の裁量に任せる方針を取っていく。
「日常の小さな疑問や要望は、すぐに対応いただいたので満足しています。強いていえば、当社は拠点が非常に多いので、拠点間で予約システムを横断的に使えると利便性が高まると思います。ほかのビルに所属していても、お客さまに近い場所でちょっとしたミーティングをしたいというケースはよくありますので。この要望もお伝えしたところ、改善に向けて検討いただけるとのことで、アップデートにも期待しています」
YourDeskももちろんクラウドサービスの強みを生かして、お客さまの要望を迅速に機能追加していく方針だ。テレワークとのハイブリッドな働き方が主流となる中で、他拠点・他部署の社員との交流を促すツールとして大いに活用できるようになるだろう。
今後、人数の増減に合わせてレイアウト変更をする可能性もある。YourDeskには、座席利用率を可視化する分析機能も搭載されているため、フロアや座席の予約率、着席率、混雑率などがデータで示され、オフィス最適化の指針となる。こうした分析が役立つ日も、遠くないだろう。
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