社員に業務災害が発生した場合、次の手順で手続きを行おう。
その際、必ず病院の受付で労災(業務災害)であることを告げるよう伝える。もし、労災であるのに健康保険証を使ってしまうと、あとから年金事務所や健康保険組合に取り消しの申請が必要になる。
[取り消し申請の仕方]
まずは健康保険の保険者(協会けんぽ、健康保険組合)に、労災であるにもかかわらず保険証を使用してしまった旨連絡し、送られてくる納付書に従い7割部分(3割は自己負担しているため)をいったん納付する。次に納付してから約3か月経過後、レセプトセンターなどから送られてくるレセプトと7割部分を納付したときの納付書の原本を、労災の手続き書類「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)」に添付して労働基準監督署に提出する。
労災に切り替えるのが面倒だからといってそのままにしておくと「労災隠し」となり、労働安全衛生法第100条で50万円以下の罰金に課せられることもあるので注意。具体的には、労災事故が起きたにもかかわらず、「労働者死傷病報告」の書類を労働基準監督署に提出していなかったことで罰せられることになる。ちなみに「労働者死傷病報告」の書類は、労働者の休業日数が4日未満の場合と4日以上の場合とで書式が異なるので注意が必要。
「労働者死傷病報告(休業日数4日未満の書式)」
「労働者死傷病報告(休業日数4日以上の書式)」
手続きに関する案内の紙面を渡してくれる病院もあるが、ただ「労災の所定の書類を持ってきてください」といわれるのみの場合もある。可能であれば、会社は業務災害が発生した場合に、社員に行ってもらう病院(労災の指定病院を選ぶ)を数か所決めておくと良いだろう。会社の近くであれば、人事部などが直接病院に書類を持って行くこともできるし、労災の指定病院かどうかも確認する必要がなく、勝手もわかるので対処がスムーズだ。
ただし、業務災害は会社内だけで起こるとは限らず(出張中など)、かかりつけの医師がいる病院に行きたいという社員もいるので、会社は次の対処方法と手順をしっかり把握しておく必要がある。
【労災の指定病院で診療を受けた場合】
労災の指定病院かどうかを把握するには直接病院に聞く方法もあるが、厚生労働省のホームページ内に労災指定病院が掲載された労災保険指定医療機関検索があるので、それを利用するのも手だ。ただし、いつ時点の情報かによっては変更している可能性もあるので注意も必要だ。
書類を受け取った病院はその後、労働局へ書類を提出することになる。
【労災指定でない病院で診療を受けた場合】
[POINT]
(監修者:本山社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士 本山 恭子)