月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

職場の感染症対策

2020-04-08 09:04

中国で発生した、新型コロナウイルス(COVID-19)が、日本でも猛威を振るっています。会社においても、イベントの中止・出張の制限・体調不良者への対応等事業活動に大きな影響が出ています。具体的な予防法等は、さまざまな情報が発信されていますので、今回は人事・労務担当者の視点で対策を考えていきたいと思います。

背景

 新型コロナウイルスが、日本で、爆発的に流行した背景に、アジア諸国との、イン・アウトバウンドの急激な増加によって、海外で流行する、感染症に対する防疫が難しくなったことがあります。グローバル化が進展する中、今後さらなる感染症が日本で流行する可能性があります。企業は、新型コロナウイルスだけでなく、新しい感染症対策を立てる必要があります。

基礎知識

 感染ルートには、いろいろありますが、職場で問題になるのは、空気・飛沫(ひまつ)・接触感染です。特に空気感染は、感染力が非常に強いので注意が必要です。
 感染とは、病原体が体に侵入して、保菌が成立したということで、これ自体が深刻な状態というわけではありません。発熱・咳といった病気の症状が現れることを発病といい、治療が必要な状態です。病原体が排除され、発症しないか、病気になるかは、ウイルスや細菌の量や力と、体が持っている抵抗力・免疫力のどちらが強いかで決まります。
 急性感染症では、この勝負の期間を潜伏期間といいます。症状が現れていなくても、感染者は、周りの人にうつす可能性があるため、「潜伏期間は自宅待機」というのはこうした根拠によります。インフルエンザの潜伏期間は長くても四日ですが、新型コロナウイルスは、二週間といわれています。これが、対応が厄介になっている最大の原因です。

出社基準

 病気が治っても、感染の可能性がある社員の出社を認めることはできません。主治医の判断が必要ですが、責任は取れないという考えから、診断書を出さない医療機関も少なくありません。職場では、学校保健安全法の登校基準に従うのが一般的です。
 SARS・MARS・エボラ出血熱・新型コロナウイルス肺炎のような、重篤性の高い疾患は、第一種に分類されて、当局がフォローしていますので、その指示に従いましょう。第二種・第三種に関しては、具体的な条件が決まっていますので、それを参考にしてください。その他の感染症は、登校可能になっていますが、ケース・バイ・ケースの対応になります。主治医・産業医にご相談ください。

予防と対策

 新型コロナウイルスはまだですが、多くの感染症に対するワクチンが開発されています。病気の国際化が進む中、漏れなく予防接種は受けておきたいものです。会社でも、麻疹・風疹・耳下腺炎・帯状疱疹(ほうしん)・肺炎球菌など、効果が確実に望めるものを中心に啓発しましょう。会社の中で喫煙室は、感染が成立しやすい危険な場所です。禁煙活動の推進は、効果のある感染症対策ともいえます。また、高齢者、糖尿病・心臓病・脳卒中・がんといった持病をお持ちの方が重症化しやすいといわれていますので、仕事の負担の軽減も重要です。
 通勤時の感染を防ぐために、時差出勤・在宅勤務・時短を推進する企業も増えてきました。新型コロナウイルスの拡大が収まっても、新しい感染症予防の一環として、事業活動に影響がないものは、継続すべきです。今回の災害は、これまでできなかった大胆な働き方改革の実験場ともいえます。ぜひこの機会に進めてみてください。


下村労働衛生コンサルタント事務所 代表 医師 下村洋一

医師、社会保険労務士、労働衛生コンサルタント、日本医師会認定産業医、健保連巡回コンサルタント、大手私鉄の専属産業医等を経て独立。現在、大手企業や中小企業の嘱託産業医を多数務める。http://kenkouzukan.com/