総務のトピックス

【会計トピックス】:

企業会計基準委員会における「権利確定条件付き有償新株予約権」の検討状況(アップデート)

2016-12-05 10:00

 2016年3月29日付けで本トピックスに『企業会計基準委員会(ASBJ)が「権利確定条件付き有償新株予約権」の会計処理につき検討を開始』を掲載しましたが、その後ASBJでの検討が進んでいますので、前回執筆内容からの進展につき解説いたします。
 ASBJの検討状況として、現段階では、勤務条件が付されていないものも含めて、権利確定条件付き有償新株予約権をストック・オプション会計基準の適用範囲に含める方向性となっています。また、過去に発行されたものについては経過措置を適用し、遡及適用は行わず、従来通りの会計処理とする方向性となっています。


直近の検討における論点

 ASBJは、2016年8月22日開催の第90回実務対応専門委員会で、「権利確定条件付きで従業員等に有償で発行される新株予約権の企業における会計処理」に関する方向性の検討を行いました。
 今回、論点となったのは以下の3点です。

(1) 勤務条件及び業績条件が付された有償新株予約権の会計処理
(2) (1)につき、ストック・オプション会計基準の適用範囲に含めることとした場合、過去に発行したものに対して経過的な取扱いを設けるかどうか
(3) 業績条件のみが付された有償新株予約権の会計処理


(1) 勤務条件及び業績条件が付された有償新株予約権の会計処理

 企業が従業員等へのインセンティブ目的で発行する有償新株予約権には、通常、勤務条件(一定期間の勤務に基づく条件)及び業績条件(一定の業績等の達成に基づく条件)が付されています。このような有償新株予約権の会計処理については、その経済的性質を踏まえ、ストック・オプション会計基準の適用範囲に含め、付与日以降の将来の労働サービスの提供に対する対価として報酬費用を認識するとの案が事務局から示されています。

(2) 経過的な取扱いについて

 有償新株予約権の会計処理について、現状では報酬費用を計上しない処理が一般的となっていることから、(1)について事務局案が採用される場合、過去に発行したものに対する経過的取扱いの有無が問題となります。
 この問題への対応として、以下の3つの案が考えられるとしています。

【案1】当期の財務諸表と併せて表示される過去の財務諸表(比較情報)に遡及適用による影響を反映する。
【案2】適用初年度の期首までに発行した「勤務条件及び業績条件が付された有償新株予約権」について、新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の期首時点における累積的影響額を、適用初年度の期首の剰余金等に加減する。
【案3】適用日以降に発行した「勤務条件及び業績条件が付された有償新株予約権」から新たな会計方針を将来に向かって適用する。

 上記の3つの案につき、事務局は【案3】を採用し、以下の注記事項を付すことを提案しています。

1) 適用日より前に発行した「勤務条件及び業績条件が付された有償新株予約権」の概要(有償新株予約権の内容、規模(付与数等)及びその変動状況(行使数や失効数等))
2) 適用日より前に発行した「勤務条件及び業績条件が付された有償新株予約権」について採用している会計処理の概要

 【案1】及び【案2】は実務上の困難を伴う可能性が高いと考えられ、採用することは難しいというのが事務局提案の理由とされています。
 また、経過的取扱いを「適用日以降」とした場合、駆け込み的な発行が増えることを懸念し、委員会ではこれを「公表日以降」とする意見も出ています。

(3) 業績条件のみが付された有償新株予約権の会計処理

 最近増えている「業績条件のみが付された有償新株予約権」は、勤務条件が付されていないことから、付与日以降の将来の労働サービスの提供に対する対価として報酬費用を認識することについて反対意見も聞かれており、この会計処理についても論点とされています。
 事務局では、勤務条件が明示されていなくとも権利確定日までの勤務が期待されていると考えられること等を理由として、ストック・オプション会計基準の適用範囲に含め、原則として付与日以降の将来の労働サービスの提供に対する対価として報酬費用を認識することを提案しています。


最後に

 権利確定条件付き有償新株予約権の会計処理については、勤務条件が付されていないものも含めてストック・オプション会計基準の適用範囲に含められ、報酬費用を認識する方向性となっています。今まで損益への影響がないことをメリットととらえて権利確定条件付き有償新株予約権を導入してきた企業も多いことから、この方向性で取扱いが確定すれば、実務上大きなインパクトがあるといえます。
 また、経過的取扱いを設けることで、過去に発行したものについては遡及適用しない方向性となっており、すでに導入した企業には影響がないように配慮されています。ただし、駆け込み導入を防止するため、経過的取扱いが「適用日以降」ではなく「公表日以降」とされる可能性もあり、これから権利確定条件付き有償新株予約権の導入を検討している企業においてはその取扱いについて留意する必要があります。


連載協力:税理士法人AKJパートナーズ
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