総務のトピックス

【会計トピックス】:

改訂版「事業承継ガイドライン」

2017-02-21 11:00

 中小企業経営者の高齢化が進み、今後5年から10年程度で、多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えようとしています。中小企業に蓄積されたノウハウや技術といった価値を次世代に受け継ぎ、世代交代によるさらなる活性化を実現していくために、円滑な事業承継は重要な課題です。
中小企業庁では近年の中小企業を取り巻く現状を踏まえ、「事業承継ガイドライン(以下「本ガイドライン」)」を10年ぶりに改訂し2016年12月5日に公表しました。
本稿では、本ガイドラインに示された中小企業の事業承継を取り巻く現状と、本ガイドラインの主な内容を概説します。


中小企業の事業承継を取り巻く現状

1.後継者確保の困難化

 日本政策金融公庫総合研究所が2016年に公表した調査によれば、調査対象企業約4000 社のうち60歳以上の経営者の約半数が廃業を予定していると回答しています(図表1)。


図表1:後継者の決定状況

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 同調査では、経営者に廃業予定の理由を聞いたところ、「子供に継ぐ意志がない」「子供がいない」「適当な後継者が見つからない」といった後継者難によるものが廃業予定企業の約29%に達した、と報告しています。

 この背景には、経営者の息子・娘の職業選択の自由をより尊重する考え方の広がりや、自社の将来性が不透明であること等、事業承継に伴うリスクに対する不安の増大等の事情があるとされています。


2.親族外承継の増加

 後継者確保の困難化の影響から、近年、親族内承継の割合の減少と親族外承継の割合の増加が生じています。

 2015年に中小企業庁が実施した調査によれば、経営者の在任期間が35年以上40年未満(現経営者が事業を承継してから35年から40年経過している)の層では9割以上が親族内承継、すなわち現経営者は先代経営者の息子・娘その他の親族であると回答しています。

 一方、在任期間が短いほど親族内承継の割合の減少と従業員や社外の第三者による承継の増加傾向が見られ、特に直近5年間では親族内承継の割合が全体の約35%にまで減少し、親族外承継が約65%に達しているとの結果が示されています(図表2)。


図表2:経営者の在任期間別の現経営者と先代経営者との関係

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本ガイドラインの主な内容

1.早期取組みの重要性

 上述のように、後継者の決定が困難なために、業績が要因ではなく廃業の道を選んでしまう実態が存在します。そのような中小企業がやむを得ず廃業に至ることなく、円滑な事業承継を実現するためには、早期に事業承継の計画を立て、後継者の確保を含む準備に着手することが効果的です。

 本ガイドラインでは、事業承継に向けた準備に着手が必要と考えられる時期について、後継者の育成期間も含めれば、平均引退年齢が70歳前後であることを踏まえると、60歳頃には事業承継に向けた準備に着手する必要があると言及しています。

2.事業承継に向けた5ステップ

 事業承継の円滑化のためには、早期に準備に着手し、専門家等の支援機関の協力を得ながら、事業承継の実行、さらには自社の10年後をも見据えて、着実に行動を重ねていくことが必要です。

 本ガイドラインでは、円滑な事業承継の実現のためには、5つのステップ(図表3)を経ることが重要である旨を明記しています。


図表3:事業承継に向けたステップ

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3.事業承継支援体制の強化

 現状における事業承継支援は、商工会議所、金融機関等の身近な支援機関をはじめ、税理士・弁護士・公認会計士等の専門家や、事業引継ぎ支援センター等の公的・専門的な支援機関が、それぞれの立場から支援業務に関与し、その役割を担っています。

 しかし、各支援機関の取組みは、中小企業からの個別の要請に対し、単発の支援を行っている次元に留まっており、上記2.で述べた、より良い事業承継の実現に向けてステップを踏むような、切れ目の無い支援がなされているとはいえない状況にあります。

 本ガイドラインでは、各々の支援機関が自らの専門分野に責任をもって取り組むことはもちろん、支援機関相互の連携を図りつつ、ステップごとの支援を切れ目無く行う体制を構築する必要があるとされています。

 具体的には、地域の将来に責任を有する都道府県のリーダーシップのもと、地域に密着した支援機関をネットワーク化し、よろず支援拠点や事業引継ぎ支援センター等とも連携する体制を国のバックアップの下で早急に整備することを言及しています。


最後に

 中小企業は雇用の担い手、多様な技術・技能の担い手として我が国の経済・社会において重要な役割を果たしています。将来にわたり、その活力を維持していくためには、円滑な事業承継によって事業価値を次世代に引き継ぎ、事業活動の活性化を実現することが不可欠です。

 本ガイドラインを活用し、円滑な事業承継を成し遂げ、世代を超えた事業の継続・発展が図られることが期待されます。


連載協力:税理士法人AKJパートナーズ
    ( http://www.akj-partners.com/