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【会計トピックス】:

繰延税金資産の回収可能性について

2017-03-31 10:00

 税効果に係わる会計上の実務指針と監査上の実務指針が1998年と1999年に公表されました。その後、2014年にはこれら実務指針の見直しが順次開始され、2015年12月に企業会計基準委員会は「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下、「適用指針」)を公表しました。本稿では税効果会計の基本的な考え方と、適用指針に基づき、繰延税金資産の回収可能性の概要を解説します。


税効果会計の基本的な考え方

 税効果会計は、会計の収益・費用と、課税所得計算の益金・損金の認識時点が異なることから、会計と課税所得計算の資産・負債に差異がある場合に、法人税その他所得を課税標準とする税金を、適切に期間配分することで、税引前当期純利益と税金費用の合理的な対応を目的とする会計手法です。

 会計と課税所得計算の資産・負債の差異を「一時差異」といい、税効果会計の対象とするのに対して、会計の収益・費用になるが、税務上は永久に益金・損金にならないものは、将来の課税所得を加減算させる効果を持たないため、「永久差異」として税効果の対象から除きます。

 一時差異には将来減算一時差異と将来加算一時差異があります。将来減算一時差異は、差異が生じたときに課税所得上加算され、将来、差異が解消するときに減算されるものです。一方、将来加算一時差異は、差異が生じたときに課税所得上減算され、将来、差異が解消するときに加算されるものです。税務上の繰越欠損金は一時差異ではありませんが、課税所得が生じた場合、法人税等を軽減させるため、一時差異に準ずるものとします。

 税効果会計では、将来減算一時差異と繰越欠損金に法定実効税率を乗じた金額を貸借対照表に繰延税金資産として計上し、将来加算一時差異に法定実効税率を乗じた金額を繰延税金負債として計上します。損益計算書では、繰延税金資産と繰延税金負債の差額を、期首と期末で比較した増減額を法人税等調整額として計上します。


繰延税金資産の回収可能性に関する要件

 繰延税金資産は将来の税負担を軽減することが認められることを条件に計上が認められる資産です。従って、将来、税負担の軽減が認められる範囲で計上します。繰延税金資産の計上要件は次の通りです。

(1) 収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性

 要件の1つは収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性です。これは、将来減算一時差異の解消見込年度または税務上の繰越欠損金の繰越期間に、一時差異等加減算前所得が生じる可能性が高いかにより判断されます。ここで、一時差異等加減算前課税所得とは、将来の事業年度における課税所得の見積額から、その事業年度に解消が見込まれる当期末に存在する将来加算(減算)一時差異の金額を除いた額のことです。

(2) タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得

 次にタックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得であることが要件です。タックス・プランニングとは、将来減算一時差異の解消見込年度や税務上の繰越欠損金の繰越期間に、具体的な一時差異等加減算前課税所得の発生を計画することをいいます。例えば、含み益のある固定資産や有価証券の売却で、将来減算一時差異等の減算が生じる年度の一時差異等加減算前課税所得を確保し、繰延税金資産の回収可能性を確実にすることです。

(3) 将来加算一時差異

 上記(1)と(2)に、将来加算一時差異の解消状況を加味します。具体的には将来減算一時差異の解消見込年度に将来加算一時差異の解消や、繰越期間に税務上の繰越欠損金と相殺される将来加算一時差異の解消が見込まれるかを判断します。


これらに従い、繰延税金資産の回収可能性を判断した結果、将来減算一時差異および税務上の繰越欠損金が、将来の一時差異等加減算前課税所得の見積額および将来加算一時差異の解消見込額と相殺され、税金負担額を軽減できると認められる範囲で繰延税金資産を計上します。


企業分類に応じた取扱い

 企業を次の5つに分類し、回収が見込まれる繰延税金資産の計上額を決定します。

(1) 分類1

 過去3年および当期に、期末の将来減算一時差異を十分に上回る課税所得が生じており、かつ当期末に、近い将来に経営環境に著しい変化が見込まれない場合、繰延税金資産の全額に回収可能性があります。

(2) 分類2

 過去3年および当期に、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が、期末の将来減算一時差異を下回るものの、安定的に生じており、重要な税務上の欠損金が生じておらず、かつ当期末に、近い将来に経営環境に著しい変化が見込まれず、一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積もる場合は、回収可能性があります。
 一方、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係わる繰延税金資産は、原則的には回収可能性はありませんが、企業が合理的な根拠により説明する場合、回収可能性があると考えられます。

(3) 分類3

 過去3年および当期に、臨時的な原因で生じたものを除いた課税所得が大きく増減しており、かついずれの事業年度でも重要な税務上の欠損金が生じない場合、将来の合理的な見積期間(概ね5年)以内の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づき、繰延税金資産を見積もる場合は、回収可能性があります。
 ただし、5年を超えるものでも、合理的な根拠により説明する場合、回収可能性があると考えられます。 

(4) 分類4

 次のいずれかの要件を満たし、かつ翌期に一時差異等加減算前課税所得が生じることが見込まれる場合は分類4に該当します。

・過去3年または当期に重要な税務上の欠損金が生じている。
・過去3年に重要な税務上の欠損金の繰越期限切れとなった事実がある。
・当期末に重要な税務上の欠損金の繰越期限切れが見込まれる。

 分類4の場合、一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づき、翌期の一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積もる場合、回収可能性があります。ただし、重要な税務上の欠損金が生じた原因等を勘案し、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積もる場合、将来5年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることを合理的な根拠により説明するときは、分類2に該当します。また、将来おおむね3年から5年程度は一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることを合理的な根拠により説明するときは、分類3に該当します。

(5) 分類5

 過去3年および当期に、重要な税務上の欠損金が生じており、かつ翌期にも重要な税務上の欠損金が生じることが見込まれる場合、原則として繰延税金資産の回収可能性はないものとします。


最後に

 税効果会計は、会計と税務の違いを調整するための会計手法であり、それにより計上する繰延税金資産の回収可能性は慎重に判断する必要があります。

 なお、適用指針は2016年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用されます。


連載協力:税理士法人AKJパートナーズ
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