総務のトピックス

【会計トピックス】:

改正「中小企業の会計に関する指針」について

2017-05-08 11:00

 平成29年3月9日に「中小企業の会計に関する指針」(以下、「中小会計指針」という。)が改正されました。この改正により、従来「今後の検討事項」とされていた資産除去債務への対応として、新たに固定資産項目に敷金に関する会計処理が明記されました(同改正指針第39項)。また、税効果会計について、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」が公表されたことに伴い、それに合わせて関連項目の見直しが行われました。中小会計指針の概要と今回の改正点を解説します。


「中小会計指針」の概要

 「中小会計指針」は、中小企業が会社法上の計算書類(決算書)を作成する際、過度な経理負担とならないように、中小企業に関係する諸団体(日本商工会議所等)が、計算書類等の開示先や会社の経理体制等の観点から実態に則した会計処理のあり方の指針となるよう取りまとめたものです。

 中小企業においては、会計情報の利用者が大企業(上場会社など)に比べて限られることから、会計基準を一律に強制適用することがコスト・ベネフィットの観点から必ずしも適切ではないケースがあります。そのため、中小会計指針は、中小企業の利害調整に期待される点(会社法目的の配当制限や税務目的の課税所得計算など)を考慮して、中小企業の経理の拠りどころとなる役割を持ちます。

 また、中小会計指針の適用対象は、以下を除く株式会社とされています。
 (1) 金融商品取引法の適用を受ける会社並びにその子会社及び関連会社
 (2) 会計監査人を設置する会社及びその子会社

 さらに、特例有限会社、合名会社、合資会社又は合同会社についても、中小会計指針に拠ることが推奨されています。


今回の改正点

(1)資産除去債務

 資産除去債務とは、有形固定資産の取得、建設、開発または通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令または契約で要求される法律上の義務およびそれに準ずるものをいいます。

 今回の中小会計指針の改正においては、資産除去債務への対応として、賃貸借契約における原状回復義務について中小企業に過大な事務負担をかけないことを前提として、以下の項目が追加されました(同改正指針第39項)。
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 上記の会計処理の具体例を以下に示します。

敷金 100(うち、返還されないことが明示されている部分:40)
返還されないことが明示されていない部分 60( = 100 - 40 )のうち、原状回復義務の履行に伴い回収が見込まれない合理的な見積金額:20

(1) 敷金等の計上
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(2) 資産除去費用の計上
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(3) 繰延資産の償却(賃貸借期間5年)
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繰延資産40 ÷ 5年

(2)税効果会計

 中小企業の多くは税務会計をベースとしているため、会計と税務のズレがほとんど発生しません。この場合、税効果会計を適用してもしなくても重要な違いはみられません。しかし、一時差異に重要性がある場合には、中小会計指針に従い積極的に税効果会計を適用することで有利な銀行融資を受けられることもあります。
平成27年12月28日に企業会計基準委員会から企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する指針」が公表されました。これに合わせて、改正中小会計指針において下記のとおり関連項目の見直しは行なわれましたが、税効果会計の記載内容に変更はありません。

【関連項目】
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 なお、繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(企業会計基準適用指針第26号)については、2017年3月31日付投稿の「繰延税金資産の回収可能性について」をご参照ください。


最後に

 従来に比べ改正後は、敷金のうち返還されないことが明示されていない部分の金額について、原状回復義務の履行に伴い回収が見込まれない合理的な見積額を敷金から減額し、資産除去費用として計上することに違いがあります。
 中小企業においては、期待される利害や計算書類の利用目的によって中小会計指針に従って経理処理を行うことが望ましいと考えられます。


連載協力:税理士法人AKJパートナーズ
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