総務のトピックス

【税務トピックス】:

馬券の払戻金の所得区分

2017-07-31 10:00

事案の概要

 多額の馬券の払戻金収入がある個人が、馬券の払戻金の所得(以下、「競馬所得」という。)を事業所得とし、外れ馬券の購入費用を必要経費に算入して確定申告したところ、原処分庁は、本件競馬所得は一時所得に該当するため、外れ馬券の購入費用の全額を必要経費に算入することはできないとして更正処分を行った事案があります(横浜地方裁判所平成26年(行ウ)第13号)。

 これに対し、個人(原告)がその取り消しを求めて提訴したが、結論的には、当該提訴は棄却され、原処分庁の主張が支持される結果となりました。

 本事案における、裁判所の主な判断は下記の通りです。

「競馬予想プログラムを用いて購入する馬券を抽出する作業は、日本中央競馬会(以下、「JRA」という。)に対して役務を提供されたものではないから、払戻金がJRAから受け取る対価であるということもできない。このため、(事業所得の要件である)対価を得て継続的に行う事業に当たるとはいい難い。また、下記の事情を総合的に考慮すると、本件競馬所得は、社会通念上、事業所得に該当すると認めることはできない。本件競馬所得が営利を目的とする継続的行為から生じた所得であると認めることはできないから、一時所得に該当する。一時所得である本件競馬所得の計算においては、的中馬券の購入代金に限り控除すべきである。」

(1)全ての判断を競馬予想プログラムに任せるのではなく、当該プログラムを利用して買い目の馬券を抽出した後、原告自身の主観的な判断に基づいて購入する馬券を決めており、また、個々の競走の結果を予想して馬券を購入していたことから、個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入は行っていない。したがって、要所において原告自身の判断を入れており、個々のレースの結果を自身で予想した上で馬券を購入していたことから、購入規模は別として、一般的な競馬愛好家による馬券の購入態様と質的に異なるものではない。

(2)交付される払戻金の総額が馬券の発売総額の約75%にとどまることから、一般的には、払戻金により相当程度の期間継続して安定した収益を得られる可能性は乏しいといわざるを得ない。

(3)馬券の購入履歴や収支に関して帳簿等の作成を行っていない。

(4)過去において、競馬所得が損失となっている年がある。


所得税基本通達における取扱い

 所得税基本通達34-1(2)(一時所得の例示)において、馬券の払戻金の所得区分が下記の通り例示されています。なお、当該通達は、外れ馬券に関する平成27年3月10日の最高裁の判決を受けて、改正されたものです。

「競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く。)」

(注1)馬券を自動的に購入するソフトウェアを使用して独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有することが客観的に明らかである場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当する。

(注2)上記(注1)以外の場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、一時所得に該当することに留意する。


解説

 つまり、本事案においては、営利を目的として継続的に馬券を購入しており、実際に一定の所得を得ていたようではあるが、払戻金獲得の偶発性、利益稼得の安定性及び継続性、並びに馬券購入の網羅性等の観点から、馬券愛好家が馬券を購入する行為と基本的には性質を異にするものではないとして、馬券を購入し払戻金を受け取る活動自体を事業とは認めてもらえず、事業所得の要件も充足しないため、結果として、事業所得でも雑所得でもなく、一時所得に該当すると判断されたと考えられます。なお、原告は、雑所得に該当するとの主張は行っていません。

 上記(注1)の通り、雑所得として、外れ馬券を必要経費に算入出来ることも、非常に限定的です。ただし、自身が個々の競走の結果を予想して馬券を購入していた場合において、過去における競馬所得が毎年生じている者の所得区分が雑所得と認められた事案があるため、留意が必要です(東京高等裁判所平成27年(行コ)第236号)。

 さらには、事業所得として認められることは現状では困難であると考えられます。
 
 このため、一般の競馬愛好家が高額な払戻金を得た場合には、一時所得として申告することが望ましいと考えられます。

連載協力:税理士法人AKJパートナーズ
    ( http://www.akj-partners.com/