企業の調達業務のニューノーマル。PMOとBPO、自社にとって有効なのはどちらか
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近年、人手不足や物価の高騰を受け、大手企業を中心に調達業務をアウトソーシングしていく潮流があります。製品の質にかかわるような直接材は自社内に調達専門の部署を設け、ボリュームメリットを生かして高品質な商材を安価に入手するのが一般的ですが、間接材に関しては、各部署・子会社などでバラバラに購入してしまい、購買の適正化がされていないケースが散見されます。しかし、間接材を中心に調達業務を外部企業に委託することで、さらなるコスト削減が見込めます。本稿では、調達の適正化を行うための具体的な方法について解説します。
調達効率化4つの指針
調達の効率化を達成するには、大まかに「適正化」「平準化」「集中化」「削減」の4つの指針が必要になります。
適正化
購入品や購入先を適切に選定することです。購入品の適正化は要件を見直して仕様の過不足をなくすことを指し、購入先の適正化は相見積もりの実施や価格交渉によってより安価に購入することを指します。根本的な改革になるため、金額的インパクトが大きいのがメリットですが、その分多くの労力が必要であることがデメリットです。
平準化
部署・部門によって異なる購入品・購入先の条件を全社的にそろえ、より安価に効率よく商品を購買する体制を構築します。条件をそろえればよいため、比較的スムーズに実施できるのがメリットですが、金額インパクトが大きくなりにくく、また統一条件の徹底を継続させる必要があります。
集中化
全社的に購入品を同一商品にすることで、ボリュームディスカウントによりサプライヤーからより良い条件で購買する体制を構築することです。仕様統一の効果もありコスト削減効果も出やすいのがメリットですが、費目によっては統一が難しく、企業規模が大きくなると莫大な工数がかかることもあります。
削減
業務上消費している商品の量を見直し、購買の絶対量を減らすことです。業務の内容の見直しにもつながり、環境への配慮の側面もあるのがメリットですが、行き過ぎると業務効率の低下につながることもあり慎重に実施する必要があります。
4つの指針は必ずしもで背反するものではなく、またそれぞれにメリット・デメリットがあります。今回は経営上のインパクトの大きさから、「適正化」を中心に解説していきます。
PMOかBPOか
調達の適正化には、「PMO(Project Management Office)の設置」や「BPO(Business Process Outsourcing)の実行」「購買システムの導入による見える化」といったアプローチが考えられます。企業の状況に応じて最適なソリューションは異なりますが、ここでは比較的明確に優先度を設定することが可能で、汎用的な適正化手法である「PMOの設置」と「BPOの実行」について解説します。
PMOの設置
PMOとは、組織内における個々のプロジェクトマネジメントの支援を横断的に行う部門や構造システムを指します。すなわち、部署を横断した調達の実態の把握、購買の集約化などを行うことで、最適な購買形態への改革を行うプロジェクトを立ち上げる、というソリューションです。
この方法のメリットは、企業の状況に合致すれば大きな効果が出るという点です。購入金額が大きいにもかかわらず適正化がなされていない費目の場合は、購入条件の見直しや取引先の変更によって大きく支出を削減することができます。専門の部門を設けるため、大規模な変革も可能です。
その一方で、人員の確保が必要になるため実行に移すには高いハードルがあり、対象は取引金額が大きい費目に限られます。また、大企業の場合は、すでに自社で調達の専門部署を設けて定期的な見直しを行っている場合が多く、仮に第三者の知見を借りたとしてもさらなる削減を見込むのは難しいといえます。
以上のことから、PMOの設置は、調達部門を設けておらず、あまり見直しが行われていない中堅・中小企業に有効なソリューションです。
BPOの実行
BPOとは、企業活動における業務プロセスの一部を一括して専門業者に外部委託することです。すなわち、単なる見積もり代行ではなく、仕様に過不足がないかの検討から全体最適の視点での取引先選定まで徹底的に調達を最適化するというソリューションです。
取引金額の多い費目はすでに適正化を進めている企業でも、対象の多さ・見直しの煩雑さと、削減効果の小ささから、重要度の低い費目は適正化が進められていない場合があります。この場合は、購買適正化に特化した企業にアウトソーシングすることが、費用対効果の面から最適といえます。一方で、一般的なアウトソーシングでは見直しのノウハウがなかったり、購買情報の漏えいのリスクといったデメリットもあります。さらに、通常のアウトソーシング以上に調達業務全体を委託する形になるため、より詳細なオペレーションの合意など綿密な連携が必要となります。
以上のことから、BPOの実行は自社である程度重要費目の見直しを行った大企業に、より適したソリューションといえます。
企業がコスト削減を行う上で、支出金額の多い費目から取り組むのは当然です。その一方、個別の支出金額が少なくても、その種類が多くなれば財務を圧迫しますし、削減の余地も大きくなります。企業規模を問わず、どちらの費目に対しても調達最適化し、コスト削減の効果を最大化させるためには、少額費目は外部へ委託し、自社の調達適正化チームは高額費目に注力するというのが最も効果的でしょう。
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