導入する企業・施設が増加中のAED 設置場所やメンテナンスのポイントは?
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心停止の状態で倒れた人がいたとき、AED使用までの時間は生存退院率に大きな影響を与える。1分でも早く電気ショックを施すことが生存退院率を向上させるのだ。オムロン ヘルスケア株式会社の村上敬康さんに、AEDの認知度や理想的な設置場所、メンテナンスの注意点などを聞いた。
設置のポイントは「高密度」素早く取りに行ける場所を選ぶ
駅や企業のエントランスなどで、心停止状態に陥った人に電気ショックを与えて蘇生させる「AED(自動体外式除細動器)」を見かけることが増えた。救命活動に欠かせない医療機器としての認知度は上がっているようだ。AEDの現況について、オムロン ヘルスケア株式会社の村上敬康さんは「2004年に医療従事者ではない一般の人も使用できるようになり、最初は病院や市区町村の役所、駅といった公共施設を中心に設置されていました。そこから徐々に設置場所が拡大され、今は大きな企業をはじめ小売店、アミューズメント施設などに幅広く置かれています。メディアでも取り上げられて見聞きする機会が増えるのに従い、社会の関心が高まっていると感じます」と話す。
AEDの使用は1分でも早い方が良く、対象者が倒れてから5分以内が望ましいとされている。一般的に救急車を呼んでから到着するまでには10分前後かかるといわれ、それまでに一次救命処置としてAEDを使用できれば、助かる命があるということだ。倒れた人を発見するのに1分、呼吸の確認などに1分、AEDによる処置に1分かかるとすれば、AEDを取りに行って戻ってくるまでの時間は2分。片道1分の範囲に設置されていることが、「倒れてから5分以内のAED」を可能にする条件となる。
「つまり、AEDを有効活用するためには高密度の設置がポイントになるのです。同じ人数でも1つの場所に集まっていれば少ない台数で済みますし、多数の拠点に分かれていればフロアごと・建物ごとの設置が必要になるかもしれません。持ち運びしやすければ距離をカバーできることもあるでしょう。たとえば防災用品とともにエレベーター内に設置している施設もあり、それなら上下のフロアにすぐ移動できます。また、24時間の対応を念頭に、AEDをコンビニに貸し出している自治体もあります」
使いやすさにこだわったAED正しく使える人を増やす
AEDによる救命活動を今以上に普及させるには、設置場所を増やすほかにもう1つ、不可欠な要素がある。使う人の存在だ。AEDがあるのに使われなかったというケースは、今でも少なくない。確かに、これまで機器に触れたことのない人がいきなり救命活動を実行するには勇気が要るだろう。実際のところ、操作はどのようなステップで進むのだろうか。
同社のAED「レスキューハート」は、迷わず簡単に使えるよう設計されている。見やすい大きなパネル部に、操作ボタンは電源ボタンとショックボタンの2つだけと、シンプルなデザインにこだわった。小型軽量で持ち運びやすく、キャリングケースから出さずにそのまま使えるのも大きな特長だ。
「救急車が到着するまでの一次救命処置は呼吸の確認、胸骨圧迫、AEDという流れで行います。AEDの使い方は、AEDの電源ボタンを入れたらすぐに音声と光で次に何をすべきかがガイドされますので、操作に迷うことはないはずです。パッドを貼る位置、電気ショックのタイミング、胸骨圧迫の位置とリズムなど、ガイドに沿って行っていただきます」
複雑な手順はなく、最初の一歩を踏み出せれば誰にでも操作できる。今は学校教育や自動車教習所のカリキュラムにも応急救護を教える時間があるため、若い世代の方がAEDの扱いには慣れているという。企業で導入する際は、定期的な講習が効果的だろう。同社でもWebを使った一次救命講習や説明用DVDの配布など教育には力を入れている。
AEDは、いつでも使用できる状態になければ意味がない。ネックになるのが、胸に装着するパッドやバッテリーなど消耗品の有効期限切れだ。「レスキューハート」はパッドとバッテリーが一体型のため、消耗品の管理がしやすくなっている。
「購入時に、本体とキャリングケース、マウスピースなどの救急セットに加え、安心パックサービスという5年間のアフターサービスを付けました。パッドとバッテリーの有効期限が来る前に新しい部品が届くので交換を忘れることはありませんし、使用したら無償で丸ごと新品に取り替えます。日々の状態は機器が自動でセルフチェックをするので、問題が発生していないかどうかを確認していただくだけです。問題が起きた場合は、いつでもフリーダイヤルに連絡してください。24時間365日、対応しています」
いったん購入したら、その後のランニングコストは発生しないというわけだ。
村上さんは、AEDがより多くの場所に設置され、より多くの人が迷わず使えるようになる未来を願っている。企業の設置は義務ではないが、「レスキューハート」の設置は、そのどちらにも貢献できることは間違いないだろう。導入の際の注意点はあるだろうか。
「人が多く集まるところや移動しやすいところなど、どこに設置するのが最適なのかをよく検討するといいですね。レスキューハートは高水準の防じん・防水性能を備えていますが、大量の水が流れているような場所は避けてください。AEDの担当者を決めておくことも大切です。機器のセルフチェックなどメンテナンスを主導し、さらに従業員のみなさんに使い方を伝えていただく役割を担っていただきたいと思います」
救急蘇生のガイドラインは、世界中で5年ごとに見直されている。日本ではJRC(Japan Resuscitation Council:日本蘇生協議会)が公開しており、次の改訂は2025年の予定だ。これまでにも、救急蘇生に必須とされていた人工呼吸が、非医療従事者の一般人は無理に行わなくてもいいという見解になるなど、変更があった。担当者はこうした情報も収集し、最新のガイドラインをキャッチアップしていくことが求められるだろう。
初めてでも正しく使えるAEDが増えるほど、助かる命も増えていく。
※使用上の注意
- AEDは救命処置のための医療機器です。AEDを設置したら、いつでも使用できるように、AEDのインジケーターや消耗品の有効期限などを日頃から点検することが重要です。
- 添付文書を必ず読んでください。
- 未就学児には、未就学児専用除細動パッドパック(別売り品)を使用してください。
- 付属の除細動パッドパックを未就学児に使用する場合には、特に2 枚のパッドが触れ合うことがないよう、注意してください。
- AEDを設置した際は、AED管理者を設け、製造販売業者の推奨する保守点検を行い、いつでも使用できる状態に管理してください。
特に、除細動パッドパックの使用期限の確認および期限内の交換を確実に実施してください。 - 除細動パッドパック等の消耗品に使用期限があることを明記したAED消耗品交換時期表示ラベルを、外部から確認できるように、付属のAEDキャリングケースのわかりやすい位置に取り付けてください。
- AED設置者および管理者は、次の場合、製造販売業者または販売業者に連絡してください。
不測の事態の発生時/設置場所住所変更時/譲渡するとき(高度管理医療機器等販売業の許可業者に限る)/廃棄するとき - 除細動パッドパックは再使用禁止であり、使い捨てです。
- 医療機器は、その品質、有効性および安全性の確保を維持する期間を明確にするために、「耐用期間」が設定されています。「耐用期間」が過ぎたAEDは、できるだけ速やかに更新することをお勧めします。
お問い合わせ先
選任製造販売業者
オムロン ヘルスケア株式会社
〒617-0002 京都府向日市寺戸町九ノ坪53 番地
外国特例承認取得者
HeartSine Technologies Limited
207 Airport Road West, Belfast, Northern Ireland, BT3 9ED, UNITED KINGDOM
Tel:0120-401-066
Mail:aed-cpr@omron.com
https://www.aed.omron.co.jp/
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