総務がかかわる石綿対策、2026年から義務化へ 工作物の工事で「有資格者による調査」が必要に
建築物や設備の解体・改修工事において、石綿(アスベスト)使用の有無を調べる「事前調査」について、一部の工作物では有資格者による実施が2026年1月1日から義務化される。厚生労働省は11月14日、この制度開始に向けてオンライン広告などを活用し、「工作物石綿事前調査者」の資格取得を呼び掛ける広報活動を開始した。
企業の総務・施設管理部門にとっても、見積もり内容や業者選定時の確認項目が増えるなど、実務上の影響が想定される。
2026年から「有資格者による石綿調査」が義務に
制度改正により、2026年1月1日以降に着工する工事では、対象となる工作物において「工作物石綿事前調査者」による石綿使用の有無の調査が義務化される。これは、事前調査の質を確保し、石綿による健康被害の未然防止をはかることが目的だ。
対象となるのは、以下のような設備・施設を含む工作物である。
- 反応槽、加熱炉、ボイラー、圧力容器
- 配管設備、焼却設備、貯蔵設備
- 電気設備(発電・変電・配電・送電設備)など
従来は主に「建築物」が対象だったが、今回の制度では工場やプラント設備、電気工作物なども対象に加わる。これにより、建物以外の工事でも石綿事前調査が必要になる場面が増える。
発注前に要チェック! 総務が対応すべき3つのこと
今回の制度改正により、工事発注の段階から確認すべきポイントが増加する。特に総務担当者がかかわる以下の3点には注意が必要だ。
- 情報提供
図面や使用状況の共有解体・改修工事を行う対象物について、設計図書や使用履歴などの情報を施工業者に提供する努力義務がある。
- 発注条件の配慮
石綿使用が判明した場合、除去作業に必要な工期や費用、作業条件について、施工業者が法令に沿って対応できるよう配慮する義務がある。
- 見積・契約時の確認事項
見積段階で、石綿事前調査費用が含まれているか、有資格者による調査が行われるかを確認することが求められる。調査報告書や記録写真の提出、保管も含めて社内の発注フローの見直しが必要だ。
対象は建物だけじゃない? 工場や電気設備にも影響
今回の改正により、「建物の解体工事」だけでなく、生産設備や電気設備などのメンテナンスや改修工事も対象となる。たとえば、発電設備・変電設備・工場内の配管や熱交換器の修繕なども該当する可能性があり、見落としがちな分野での対応漏れに注意が必要だ。
厚生労働省では、2025年秋に国土交通省・環境省と共同で石綿対策に関する全国一斉パトロールの実施を予定しており、現場での指導・監視も強化される。制度施行前後には、講習予約の混雑や発注業者側の資格者不足なども想定されるため、企業としても早めの対応体制の構築が求められる。
厚生労働省の発表の詳細は、公式リリース(共同通信PRWIRE)で確認できる。また、解体・改修工事の発注者向けの注意事項は、厚生労働省「石綿総合情報ポータルサイト」やリーフレットで確認できる。
※掲載されている情報は記事公開時点のものです。最新の情報と異なる場合があります。
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