「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護をはかり、もって文化の発展に寄与することを目的とする」と、著作権法の第1条に書いてあります。 つまり、著作者の権利を必要に応じて保護することによって文化を発展させるのです。「産業の保護のため」でも、「著作者の権利を守るため」でもなく、「文化を発展させること」が目的なのです。
著作物を創作した人を「著作者」といいます。著作権法は著作者だけでなく、実演家、レコード製作者、放送事業者等(これらを著作隣接権者といいます)についても権利を定め、保護しています。これらの人たちは、文化の発展のために保護すべきだと考えられるからです。
●著作物
「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」。つまり、著作物とは、「思想感情を創作的に表現したもの」 のことです。
●著作物の例示(著作権法第10条抜粋)
この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次の通りである。
著作権トラブルの大半は、ある表現が著作物かどうかという点にかかってきます。たとえば、次のような表現は著作物でしょうか?
A: 「○田太郎氏 年月日死去 葬儀告別式は何月何日 築地本願寺にて故人は東京都生まれ 元野球選手 解説者 享年70歳」
B: 何月何日 横浜球場 横浜×巨人 2対0 (勝)山田15試合8勝3敗 (敗)田中15試合8勝5敗
AとBを見たところ、いずれも事実をありふれた方法で表現しているにすぎず、創作性が欠けると思われるので、著作物にはあたらないと考えるべきでしょう。このようなありふれた表現について、第三者による利用が制限されてしまうと、文化の発展に良い影響を与えないばかりか、表現の自由が不当に制限されてしまいます。
(執筆:のぞみ合同事務所 行政書士 日野 孝次朗)