新型インフルエンザA(H1N1)が発生する前、対策を検討していた企業の大半は強毒型のH5N1を想定していました。その結果、対策の内容が実態とかけ離れてしまい、弾力的な運用に苦慮する企業が続出することとなってしまったのです。
しかし、危機管理において重要なことは、最悪のケースを想定して備えることであり、その点においては間違いではありません。対策のレベルを実情に応じて緩和することは比較的容易ですが、その逆は極めて困難だと思われるからです。
また、事前に計画を作成していた企業では、既に危機管理対策本部のメンバー間でコンセンサスが取れていたため、共通の言語やリスク認識ができていたようです。そのため、新型インフルエンザA(H1N1)への対応をスムーズにできたというケースが多く聞かれました。
計画が固定的に設計されていた場合、前述したように、対策の内容が実態とかけ離れてしまって運用しづらいというデメリットがあります。ですから、いくつかの想定に応じた対策のパーツを用意し、実情に応じて選択・運用できるよう、柔軟な事業計画の設計が望ましいと思われます。