月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

テレワーク推進における留意点

2020-02-03 10:30

新型コロナウイルスの感染拡大に備え、一部企業では在宅勤務体制に切り替えるなどの対応がはじまっています。そこで今回は過去本誌に掲載された記事一部より抜粋して、テレワーク導入する際のポイントをご紹介します。

テレワークに必要な4つの要素

AdobeStock_223121660.jpeg テレワークの難しさには、導入の難しさや運用の難しさなど、さまざまあります。それらすべての原因は「一足飛びにテレワークを導入しようとしているから」ということに集約できるかと思います。
 制度の策定から着手したり、第一歩としてツールの選定を開始したり、社員全員が自宅で仕事をする日を設けてみたり......、このような取り組みをしたことのある企業も多いのではないでしょうか。
 こうした取り組みがねらい通りの効果を発揮せず、場合によっては「やりたくもないテレワークをやらされた」「ツールの使い方に慣れず業務効率が下がった」など、むしろ現場の社員に抵抗感を生んでしまったという悩みも聞かれます。
 この課題を解決する鍵は、テレワークに必要な四つの要素にあります。その4つの要素とは「文化」「制度」「ツール」「場所」です。

テレワークを自分ゴト化する「文化」の醸成

 一つ目の「文化」は、テレワークの意義を社員自身が理解して自分ゴト化すること、つまり「そもそも何のためにテレワークをするのか?」を考えるというステップです。
 前述のデータでは、テレワークを実施している人を職種別に見たときに、管理職や営業職ほどその割合が高いことがわかりました。
 しかし、この「何のためにテレワークをするのか?」は、そもそも役職や部門、日々の業務内容によって異なります。多くの企業がテレワークの導入に難しさを感じる原因の一つは、この視点が抜けていることにあるのです。
 たとえば営業職の人にとって大切なのは、できるだけ多く商談の機会を作り、効率的にまとめ、成約に結びつけることです。一方管理職は、重要な商談や会議に足を運ぶ時間を作り、意思決定のスピードを速めていくことを求められます。また開発部門の人であれば、チーム内で連携するとともに、一人ひとりの業務への集中度合いが成果に直結するでしょう。
 こうした役割の違いがあるにもかかわらず、一律の制度でテレワークを実施しようとすれば、無理が生じるのも当然です。部門別、役職別、そして個人個人が、何のためにテレワークをするのかを、自分の業務とそのミッションに照らして考えるというステップが、テレワーク成功のためには欠かせません。
 その結果、テレワークを活用する意義が感じられないという人も出てくるかと思います。その場合は、テレワークをする必要はありません。まずは、テレワークの活用によって日々の業務がどのように変えられるのかを、社員自身に理解してもらうことから始めてみてください。具体的には、アンケートの実施やワークショップの開催、1on1などの方法があります。

「制度」作りのポイントは成果評価の徹底

 文化の醸成=テレワークの自分ゴト化ができたら、次のステップは「制度」の策定です。
 部門や役職、個人によってテレワークに取り組む理由が異なるわけですから、一律の制度を全員に適用することの難しさはおわかりいただけるかと思います。もちろん、そのぶん、制度の策定は大変になりますが、ここでは策定にあたっての考え方のポイントをお伝えします。
 多くの企業ではテレワークの導入を検討する際に、社員が見ていないところでサボるのではないかと懸念していることでしょう。確かに実際、テレワークをすることによって業務のペースを崩す社員が出てくることは珍しくありません。
 制度策定にあたって多くの企業が壁にぶつかる原因は、この「テレワークをうまく活用できない人」を想定して、監視や制約の方向で制度を作ってしまうという点にあります。
 しかし、文化がきちんと醸成されて一人ひとりがテレワークを自分ゴト化できていれば、テレワークをうまく取り入れて業務効率化に活用できる人の割合も増えてきます。
 そのため、次に挙げる二軸での制度策定をお勧めします。
(1)業務に即して社員自身がテレワークの取り入れ方を選べるような、自由度の高い制度を作る
(2)万が一それによって業務のペースを崩す社員が出てきたときに、引き上げられるような制度を作る
 このとき(2)の観点から欠かせないのが、徹底した成果評価です。ここでいう成果とは、営業成績などのわかりやすい数値目標だけではありません。いつまでにどの業務をどれくらい進捗させるかなど、定性的なものも含めて成果と考え、その定義を言語化し、定期的に振り返ることによって評価していきます。
 成果評価が徹底できていると、「テレワークをしながらきちんと成果を出している人」「テレワークをしたことによって成果が出なくなってしまった人」など状況を把握して、後者のケアをすることが可能になります。場合によっては「毎日オフィスに来ているのに成果が出ていない人」の存在も見えてくるかもしれません。
 このプロセスは、成果の言語化やその評価基準の策定に時間がかかり、実際に運用を始めたあとも定期的な評価面談が必要になったりと、一朝一夕に進められるものではありません。
 しかし、成果を軸にした評価制度を整備することは、社員の働き方をきちんと捉え、必要に応じた対策を講じることにつながります。将来的にはテレワークの枠を超えて、企業が社員の多様性を受け入れるための重要な考え方になるといえるでしょう。

テレワークの目的に応じた「ツール」の導入を

 文化、制度が整ってようやく「ツール」がその役割を発揮します。テレワークをする理由は部門や役職、個人によって異なるため、すでに使っているメールソフトやスケジューラーで事足りる部門は、新たなツールを導入せずにテレワークを始めてみるのもアリでしょう。
 用途を想定してチャットツールを導入したり、営業部門であればWeb会議システムを導入したりと、ここでも大切なのは「何のためにテレワークをするのか?」に立ち返り、それに即したツールを導入・運用することです。
 このパートの最初に指摘した「ツールの使い方に慣れず業務効率が下がった」などの課題も、その大半は、利用方法を積極的に覚えようとしないという心理的なハードルが原因だと考えられますので、一人ひとりがテレワークを自分ゴト化することによって改善が見込めます。

テレワークの社会実装には「場所」が必要

 最後の要素は「場所」です。これは、テレワークの課題としてよく挙げられるセキュリティの問題とも密接な関係があります。
 通信やツールの進化に伴い、10年前に比べるとオフィス以外の場所で仕事をできる環境はだいぶ整ってきました。しかし、秘匿性の高い情報を扱うケースや緊急対応が発生するケースを考えると、外出先で仕事をするのに適した環境が十分に整っているとはいえません。カフェやコワーキングスペースで重要な書類をパソコン画面に表示している人や、電話で具体的な社名を口に出しながら会話をしている人を見ると、他人ごとながら心配になってしまいます。
 昨今は空間をシェアする方向性の考え方やサービスも浸透してきていますが、ビジネスシーンでプライベートな空間の需要がなくなることはないでしょう。
 たとえば当社の場合、こうした課題に対し、いつでも・どこでも駆け込めるテレワーク向けの空間の提供を目指し、テレワークのためのコミュニケーションブース「テレキューブ」を提供していますが、「場所」については、これから社会全体で取り組む余地のある課題だといえます。
 また、セキュリティの問題として、IT機器の持ち歩きによる情報流出の可能性が指摘されることもありますが、これは書類などを中心とした従来の仕事の仕方でも起こり得ることであり、テレワークの本質的な課題ではないと考えられます。


出典:『月刊総務』2019年10月号第2特集「現状・課題から見る テレワークの在り方」より一部抜粋


執筆 株式会社ブイキューブ
1998年10月創業。ビジュアルコミュニケーションツールの企画・開発・販売・運用・保守等を行う。ビジュアルコミュニケーションサービス「V-CUBE」を通して、世界中どこにいても働ける働き方・環境の実現を目指す。