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第7回:深夜に酒類を提供する飲食店の義務

2012年10月02日

深夜に酒類を提供する飲食店といえば、一般的には居酒屋やスナックが連想されるでしょう。
しかし、牛丼屋やファミリーレストランのメニューを開けば、こういった店でもお酒を提供していることがわかりますし、深夜まで営業されていますので、「深夜に酒類を提供している飲食店」なのだと言えます。

風営法を見てみると、夜10時以降営業している飲食店には【構造設備基準を維持する義務】【従業者名簿の備え付け義務】があり、もし夜10時以降に酒類を提供してれば、店舗で働く全従業員の【年齢等の確認義務】【裏付け資料の備え付け義務】も加わってきますが、牛丼屋やファミリーレストランにもこういった風営法の規制が及んでしまうということになります。

風俗営業に関連していなくとも、「飲食店」「夜10時以降」という要件が備われば、上記のような規制の対象となりうるのです。

このような規制を受けてしまう背景には、深夜に営業する飲食店というものが、本来的に風俗環境や青少年の健全育成に悪影響を及ぼす可能性が高いと想定されているからであり、酒類を提供する店ともなれば、そういった可能性がさらに高くなる、と考えられるからです。

そこで、風営法では夜0時以降にもっぱら酒類を提供する飲食店については、特別に届出義務を課しています。これは「深夜酒類提供飲食店営業」と呼ばれる営業形態であり、営業を開始する10日前までに、店舗を管轄する警察署を経由して都道府県公安委員会に営業開始の届出を行わなければなりません。

この届出を怠ると、50万円以下の罰金に処せられます(風営法第56条)が、多くの場合は行政処分(指示処分)となります。

深夜酒類提供飲食店に該当するかどうかは、「夜0時以降に酒類を提供しているかどうか」という点がもっとも重要ですが、一方では、常態として主食を提供している飲食店については、たとえ深夜に酒類を提供していても除外するということになっています。

例をあげますと、牛丼屋さんが深夜にビールを提供していても、深夜酒類提供飲食店にはあたらないし、営業開始の届出も必要ないということです。

深夜酒類提供飲食店の届出に際しては、経営に携わる方々の住民票や法人の定款などのほか、店舗の平面図も提出することになります。
平面図上では、客室の床面積や仕切りなどの高さなどのほか、照明音響設備も記載することになりますので、各客室床面積が9.5m2以下であったり、客室内の見通しを妨げる仕切り等が存在している場合には、そういった構造設備上の問題点を警察から指摘される可能性があります。

また、開始届出後においても、経営関係者の入れ替わりや住所変更、店名変更、店舗設備など一定の事由の変更が生じた場合には、その都度都道府県公安委員会に届け出る必要があります。

夜10時以降に営業する全ての飲食店は、警察行政の立入りを拒むことができませんが、深夜酒類提供飲食店は、警察官の立入りを受ける機会が多い業種となりますから、従業者名簿の整備や構造設備基準の維持など風営法の遵守を怠りなく行っていないと、風営法違反の摘発を受ける恐れがあります。

摘発を受けた場合には、刑事罰よりも営業停止などの行政処分を受ける場合の方が多いと思われます。深夜の飲食店営業は保健所だけでなく警察行政の管轄でもあるのだという認識を持って置いた方がよいでしょう。

日野 孝次朗
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