著作権を考える前に 法律と法と道徳:著作権は無体財産

最終更新日:2010年03月09日

著作権を考える前に 法律と法と道徳:目次

(1) 所有できない財産 ?無体財産

世の中には、宝石や自動車や家などのように所有できる財産(有体財産)と、著作物のように、物体ではないので所有できない財産(無体財産)があります。例えば、あなたが「絵」を描いてAさんに売ったとしましょう。Aさんは絵という物体を手に入れました。つまり絵を所有する権利を持っています。しかし、絵を印刷したり、インターネットに掲載する権利はもっていません。もしその絵が燃えて灰になった場合は、絵の所有権は消えてなくなってしまいますが、絵を利用する権利は消えません。その絵のデジタルデータが残っていたら、それをもとにコピーしたり、インターネットに掲載する権利はまだ作者が持っていますから、コピーなどの利用と引き換えにお金をもらうこともできます。このような、物体ではない財産についての権利を「無体財産権」といいます。 著作権は無体財産権の一種ですが、よく「知的財産権(ちてきざいさんけん)」とも呼ばれます。知恵や才能を使って生み出される知的な権利で、しかも財産として処分できますから「知的財産権」といわれるのです。知的財産権を含めた、より広い概念として無体財産権があります。無体財産には、次の図のようなものがあります。

(2) 産業財産権

次の4つの権利は「産業財産権」と呼ばれていますが、「工業所有権」という呼び方の方が親しみがあるでしょう。最近では工業にとどまらず産業分野全体に及ぶようになったので名称が改められました。いずれも「産業の発展」のためにつくられた権利です。

●特許権(特許法: とっきょほう)特許権は、発明(自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの)を保護するために特許庁に出願し、登録されることで得られる権利です。

●実用新案権(実用新案法: じつようしんあんほう)実用新案権は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」である「考案」を保護します。「考案」は小発明とも言われます。特許権は、実用新案よりも高度なもの(これが発明)とされますが、実用新案は、発明ほど高度ではなく物品の形状、構造又は組み合わせにかかるものです。特許と同じく特許庁で登録されると得られる権利です。

●意匠権(意匠法: いしょうほう)意匠とは、「物品の形状、模様、もしくは色彩または、これらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」で、要するに商品のデザインのことです。特許や実用新案は技術的・実用的なしくみの創作ですが、意匠は物品の美しさを強調し、何らかの感動や安らぎを与えようとするものです。意匠法は、登録された意匠を保護することに、より産業の発達に寄与することを目的としています。

●商標権(商標法: しょうひょうほう)商標とは、商品やサービスにつけられる名称やマークのことです。商標は、その商品を誰が作り誰が売っているのかを知る手がかりになりますから、その商品に対する消費者の信頼を保証する機能ももちます。また、メーカーにとっては商標を宣伝することにより、商品を消費者に印象付ける機能も果たします.。もし商標を他人が勝手に使ってしまうと、消費者が混乱し、商標の信頼が壊れてしまうので、商標法は商標権に排他的独占的な権利を与えて保護しているのです。

(3) 著作権

著作権は産業財産権のような「産業を発展させる」ための権利ではなく、「文化を発展させる」ための権利です。著作権法を扱っている政府機関は文化庁です。産業財産権は特許庁が扱っています。

(4) 回路配置利用権(半導体集積回路の回路配置に関する法律)

独自に開発された半導体集積回路配置(回路素子及び導線の配置)を利用する権利です。(財)工業所有権協力センターで登録されます。

(5) 育成者権(種苗法)

新種の種や苗を作り出すためには、たくさんの費用と時間がかかりますから、新しい種類の種や苗の品種を登録した人に権利(育成者権)を与えて保護します。

(6) 不正競争防止法

平成14年6月に改正され、不正なドメイン使用等もこの法律で規制されることになりました。

(7) 肖像権

人の顔や姿をみだりに利用されない権利として判例上認められてきた権利です。一般個人のプライバシーを保護する場合と、有名タレント等の「顧客吸引力」における経済的価値を保護する場合とがあり、後者を「パブリシティー権」と呼ぶこともあります。

(執筆:のぞみ合同事務所 行政書士日野孝次朗)

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