新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークの推進、業務の電子化は避けて通れない状況となりました。政府もデジタル化に大きくかじを切り、国税関係帳簿書類等を電子保存する際の手続きなどについて大幅な見直しが行われる改正電子帳簿保存法が、2022年1月1日に施行されます。本企画では、政府与党から令和3年度税制改正大綱が発表され、大幅な規制緩和が実施されることになった背景と詳細内容について紹介します。
改正の背景
1998年に電子帳簿保存法が施行されてから23年が経過します。その間、2005年にe-文書法が施行され、国税関係書類のスキャナ保存制度が導入されましたが、保存要件を厳格に求められた結果、なかなか普及しませんでした。そのあと、2015年以降は、毎年のように規制緩和が行われましたが、この規制緩和で電子化が進むことが期待されたものの、運用面の難しさから、まだまだ浸透しているとはいえない状況でした。
今回、大幅な電子帳簿保存法の改正が行われますが、その背景はやはり新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)のまん延が大きな要因となっています。このことは、大綱の基本的な考え方の中で、「今回の感染症では、わが国における行政サービスや民間分野のデジタル化の遅れなど、さまざまな課題が浮き彫りになった。(中略)わが国社会のデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを強力に推進することとする」としており、感染症が引き金になったことがわかります。
また、保存制度の見直しの目的としては、「経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上、テレワークの推進、クラウド会計ソフト等の活用による記帳水準の向上に資するため、国税関係帳簿書類を電子的に保存する際の手続きを抜本的に見直す」としています。
生産性の向上やテレワークの推進は、従来から電子化の目的でしたが、「記帳水準の向上」はあまり聞き慣れない目的だと思います。これについては、実は中小企業や小規模事業者の記帳水準が想像以上に低いことに起因しています。適正に記帳されていないことで、緊急事態宣言下における持続化給付金や家賃支援給付金等の申請手続きに手間取ってしまったり、申請できないという事態が起こったため、政府も問題視して今回の改正の目的の一つとしています。
改正の概要
自己が作成する帳簿書類を電子的に保存するに当たり、税務署長の事前承認が廃止され、モニターや説明書の備え付けなど最低限の要件を満たす電子帳簿に関して、電子データのまま保存可能(紙での保存を不要)とされたほか、検索機能や訂正削除履歴を備えた信頼性の高い電子帳簿(優良電子帳簿)に関しては、過少申告加算税を5%軽減するなどのインセンティブ措置が適用されることとなりました。
また、取引相手から受領した紙の領収書等について、紙原本に代えてスキャナ画像を保存できるスキャナ保存制度については、ペーパーレス化を一層促進する観点から、税務署長の事前承認が廃止され、スキャン後直ちに紙原本を廃棄できるようになるなど手続き、要件が大幅に緩和された一方で、当該電子データに関して改ざん等の不正が把握された際は、重加算税を10%加重する措置が講じられることになりました。
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