目の前の業務をこなすだけで、成長している気がしない───。総務パーソンがモチベーション高く、成長を感じながら働ける環境をどうつくるか。株式会社リンクアンドモチベーションで企業の従業員エンゲージメント向上を支援する丸山拓人さんに、難しいとされるバックオフィスの評価制度や目標設定について、2回にわたりうかがった。
総務業務も定量化は可能 ポイントは目標設定にあり
組織人事コンサルタント
丸山 拓人さん
神戸大学卒業後、新卒で株式会社リンクアンドモチベーションに入社。以来一貫して中小・成長ベンチャー企業向けコンサルティングに従事。経営理念の策定や浸透、育成体系構築、幹部育成、人事制度設計などを多岐にわたるテーマで支援。現在は、当該部門のリーダーを務める。
株式会社リンクアンドモチベーションの丸山拓人さんは、中小企業を対象にした人事制度や評価制度のコンサルティング経験が豊富だ。これまで多くの企業から、バックオフィスの目標管理や評価に難しさを感じているという声を聞いてきた。
「そうした企業のほとんどは、総務業務の評価が『勤怠承認に漏れがないか』といったオペレーションの水準にとどまっています。ミスのないことが前提で、できたことよりできなかったことに焦点が当たるので、どうしても減点方式の評価になってしまう。工夫のしがいがないため、モチベーションが上がりにくい構造だといえるでしょう。しかし私たちは、バックオフィスの業務であっても、モチベーションが向上する目標設定や評価は可能だと考えています」
こうした目標設定や評価において必要なのは、何をもって成果とするかを具体的に“言語化”することだ。たとえば総務が社用PCの発注を任されたとする。この場合、業務の目標は、滞りなく注文通りの台数が届くことだと考えがちだ。しかし、それでは評価は減点方式のままである。それよりも、「従業員の生産性を10%向上させる」ことを目標にしたら、どうだろう。効率を上げるシステムを導入したり、業務フローの再検討をしたりと、達成に向けて人それぞれに工夫の余地が生まれるだろう。
たとえばリンクアンドモチベーションでは、インターネットの接続時に行っていたVPN接続について、セキュリティを維持しつつ認証方法を改善し、日々現場が対応する工数を省くことに成功したという。これは接続の工程数を減らして生産性向上につなげる工夫であり、担当者は目標達成に向けて工夫を行ったことを評価された。この例のように、目標の設定次第で業務のクリエイティビティは変わるものなのだ。
また、丸山さんは「総務の業務は定量化しにくい」という相談を受けることも多いが、定量化は可能だと話す。業務を定量化する際は、目的を「アウトプットを高める」と「コストを下げる」の2つに大きく分けて考えると整理しやすい(図表1)。アウトプットはさらに量と質に大別でき、総務であれば量は生産性やブランド力の向上、質は従業員満足度など定性的なクオリティーが当てはまるだろう。定性的であっても、「満足度80%以上」など具体的な数値を含めて設定してあることが望ましい。
「具体的な数値を掲げるには、独自のロジックをつくるといいでしょう。たとえば現場からの問い合わせ対応について、単に件数で目標を設定するのではなく、対応の難易度やスピード、対応への評価などでポイントを定めるというやり方が考えられます。合計ポイントを目標にすることで『前期よりポイントが高まったので、生産性が向上しているね』などと評価することができます。こうした自社ならではのロジックで、工夫や努力に対する具体的な報酬を示せると、モチベーションが向上する目標設定になります」
組織ビジョンとの整合性にも留意
目標設定のフレームワークとしては、「SMART」を勧める(図表2)。SMARTでは、次の5つを必須項目として定めている。
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