通報者の解雇・懲戒に罰則 2026年12月施行「公益通報者保護法」4つの改正ポイント
前回は、公益通報者保護法の基礎について紹介しました。今回は2025年改正法の概要を解説していきます。
施行日と4つの改正点
2025年改正法(以下、「新法」)では、主に、「公益通報を理由とする不利益な取り扱いの抑止・救済の強化」「事業者が公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底と実効性の向上」「公益通報者の範囲拡大」「公益通報を阻害する要因への対処」の4つの観点について改正がなされています。
なお、新法の施行日は2026年12月1日です。
不利益な取り扱いの抑止・救済の強化
(1)立証責任の転換
現行法でも、公益通報をしたことを理由とする労働者に対する不利益取り扱いについては、解雇は無効とされ、解雇以外の不利益取り扱いは禁止されています。
もっとも、実際に不利益取り扱いを受けた労働者は、自ら民事訴訟等を提起して、権利の回復をはかる必要がありますし、公益通報者が権利の回復をはかる際には、「公益通報を理由」として不利益な取り扱いが行われたこと等について立証する必要があります。この立証負担が重いことが、労働者が公益通報を躊躇する要因の一つになっていました。
そこで、新法では、公益通報をした日から1年以内に解雇または懲戒がされたときは、無効規定の適用については、当該解雇または懲戒は「公益通報をしたことを理由としてされたものと推定する」こととされました。
2号通報(※1)および3号通報(※2)については、公益通報がされてから事業者がそれを認識するまでに時間のずれが生じることから、事業者が2号通報または3号通報がされたことを知って解雇または懲戒をした場合には、事業者が当該公益通報を知った日が起算点となります。
※1 権限を有する行政機関に対する公益通報
※2 「その者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生またはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者」に対する公益通報
なお、新法では、解雇と懲戒を総称して「解雇等特定不利益取り扱い」と定義されています。
この推定規定により、公益通報者が解雇または懲戒の無効を主張する場合には、事業者が、それが公益通報を理由としてされたものでないことの立証責任を負うこととなります。
(2)刑事罰の導入
公益通報における通報対象事実は犯罪行為等の一定の重大な法令違反です。それにもかかわらず、公益通報をしたことを理由として公益通報者に対し不利益な取り扱いを行うことは、それ自体違法性が高いといえます。加えて、公益通報をしようとするほかの者を萎縮させることとなり、このような事態は抑止すべきといえます。
実際に不利益な取り扱いが通報を理由とするものと認められた裁判例もあります。また、通報者の身元が明らかになった場合の不利益な取り扱いへの労働者等の懸念は強く、現行法の禁止規定のみでは抑止力として不十分でした。
このような問題意識の下、新法では、公益通報者が公益通報をしたことを理由として、当該公益通報者に対して解雇または懲戒をしたときは、当該違反行為をした者に刑事罰(6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)を科すことが規定されるとともに、両罰(事業者が法人の場合3000万円以下の罰金、個人の場合30万円以下の罰金)が規定されました。
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