清掃費、定期購読費、研修費……どう抑える? インフレ下のコスト削減、視点と手法を解説

株式会社プロレド・パートナーズ 菊地 剛平
株式会社プロレド・パートナーズ 守家 礼真
最終更新日:
2022年12月13日
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昨今、原材料の価格高騰や円安、世界情勢を背景としたインフレが起こっています。コスト削減は企業の普遍的、かつ永遠のテーマですが、現状況下で取り組みの難度が増しており、具体的に何から手をつければいいかわからない、といった声もよく耳にします。たとえば、調達先の選定や電力会社との協議が難しい中で、水道光熱費(エネルギーコスト)のコストを抑えるのであれば、省エネ機器の導入の検討や全社的なオペレーション統制が必要になりますが、普段の取り組みとは異なるアプローチなので、具体的な検討をするには時間を要するでしょう。業務委託費、清掃費なども、昨今の人員確保の難しさを背景に上昇傾向にあります。そこで本稿では、インフレ下においてコスト削減をどういった視点で実現すべきか、具体例を交えて紹介していきます。

コスト削減の手法

コスト削減の手法には、大きく「単価削減」「量や仕様の変更」「廃止」の3つあります。

単価削減

契約先と価格交渉を実施することで、契約単価の低減をはかる手法であり、現行の契約先との価格交渉が決裂した際は、契約先を変更することもあります。

量や仕様の変更

単価がそのままであっても、発注頻度や品質の見直しを実施することでコスト削減をはかる手法です。後述しますが、清掃費や保守費の対応頻度の低減(量の変更)、消耗品のスペック再考(仕様変更)などが該当します。

廃止

ゼロ予算ベース=ZBB(Zero Based Budgeting)で物事を考え、本当に必要であるか否かを検討します。結果として、廃止にしたり、社内の業務コストを検証した上で内製化したりすることもあります。

3つの手法のうち「単価削減」に関しては、多くの場合インフレ下での取り組みが困難です。少しでもコスト削減を実施する場合には、「量や仕様の変更」と「廃止」について検討することをお勧めします。

それでは、「量や仕様の変更」と「廃止」の具体例を以下で見ていきましょう。

具体例:量や仕様の変更

量や仕様の変更については、清掃費を例に説明します。

コロナ渦下においてテレワークが推進され、以前よりオフィスに出社する社員や取引先の人数が減少したにもかかわらず、オフィスの清掃に関しては、以前と同様、といったケースが散見されます。

ある企業では、以前は全会議室をほぼ毎日利用していましたが、会議室の予約管理ツールのデータを集計したところ、その稼働率は半分以下まで減少していました。一方、清掃は変わらず毎日実施されており、委託先の清掃会社のヒアリングによれば、清掃時間の多くを会議室の清掃が占めていることが判明しました。

実施した実態調査を基に、2日に1回でも一定の品質は保てるという仮説を立て、まずはトライアルで清掃頻度を変更しました。1か月のトライアル結果から2日に1回の清掃では品質が保てないと判断し、3日に2回の委託を決定。結果、約21%のコスト低減に成功しました。

具体例:廃止

廃止の例としては、定期購読費や研修費の見直しなどが挙げられます。

定期購読費

新聞や雑誌などの定期購読が踏襲され、予算策定時にその要否が十分に検討されていない場合があります。1発注当たりの金額も小さく、現場の無用な反発を懸念してか、手つかずとなっているのです。本気でコスト低減に取り組むのであれば、こういった小さい費用であっても、きめ細かく検証すべきでしょう。

まずは、発注部署と具体的な定期刊行物を把握することが必要です。同じビル、拠点内で同様の書籍を重複して発注しているということもあります。こうした見直しは、少なくとも2、3年に1回は網羅的な整理を行うとよいでしょう。

アンケートを実施するという方法も有効です。ある企業にて、購読物の要否を聞いたところ、約23%の人が「実務に影響がなく不要」という結果が出ました。こういった簡易アンケートは、無料で使えるWebアプリなどで容易に実施できます。

また、少なくとも年1回の予算策定時においては、継続購読の要否を発注部署に問うべきでしょう。その際は、予算の大小にかかわらず、具体的な書籍名を挙げ、要否を問うようにしましょう。発注当時は大多数が必要とした書籍であっても、その後の調査で約38%の社員が「必要になった際のスポット発注で十分」と答えたケースもあります。

研修費

研修費も特に見直しがされず、同様に更新されている費用の代表格です。

ある企業では、毎年全国の営業所から本社に集まり、3年次研修や管理者研修を行っていましたが、実態に関してヒアリングを進めていくと、メインは研修後の親睦会であり、研修自体はマンネリ化していることが判明しました。

研修終了後のアンケートは大半が「満足」という回答でしたが、「研修のパートごとに満足度を調査する」「実務に生かされているか」といったその要否を見極めることを前提としたアンケートを用意することで、実態が浮き彫りになりました。

そこで、数十年にわたって人材会社がパッケージとしてきた研修内容を、社内の該当部署が主導となって自社用に大きくカスタマイズし、社内研修にて完結させることにしたのです。これにより、品質も担保された上で、コスト面でも外注していた費用の100%カットが実現しました。

総括

前述の通り、コスト削減の難易度は増しています。しかしながらこの状況下だからこそ、関係者の賛同を得やすく、見直す契機ともなり得ます。量や仕様の見直しや廃止の可否が定期的に検証されてきたか、そういった視点でいま一度社内の費用を洗い出してみるといいでしょう。こういった状況下でも取り組む余地はまだまだあるはずです。

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著者プロフィール

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株式会社プロレド・パートナーズ
菊地 剛平

建設会社にて、工事現場の予算管理や決算業務、全社管理システムの構築等に携わったのち、株式会社プロレド・パートナーズに参画。入社後はファシリティチームの一員として、主に施設管理に関する費目のコスト削減プロジェクトに数多く従事。現在ではマネジャーとして、クライアントの購買改革や大規模プロジェクトのプロジェクトマネジメント等を務める。

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株式会社プロレド・パートナーズ
守家 礼真

アパレルメーカーにて店舗の売り上げ・コスト管理、広報活動に従事したのち、株式会社プロレド・パートナーズに入社。主に金融系販管費の適正化、BPRプロジェクトを担当し、現在は大手クライアントのコスト可視化にかかるプロジェクトマネジャーを務める。

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