【緊急企画】新型肺炎から社員を守る 企業の対応策(2)

ソナエルワークス代表  高荷 智也
最終更新日:
2020年03月09日

世界的な新型コロナウイルスの感染による肺炎流行が止まらない。日本でも各地で感染者出ており、もはや日常生活の中でいつ、どこで感染するかわからない状況だ。会社と社員を守るため、今後起こり得る流行シナリオを把握し、迅速かつ適切な対応を取っていこう。

※記事内容は2月17日時点のものです。

流行の初期段階に行う社内の感染防止対策

新型インフルエンザ、新感染症ともに、流行の初期段階においては体内に免疫を作るためのワクチン、あるいは特効薬のようなものが存在せず、また作製するのにも時間がかかります。そのため、微生物による感染症を防止するためには、そもそも感染しないことが重要になります。

感染ルートを把握して対策を検討

感染防止対策を行う際には、「感染方法」を確認することが重要です。

新型インフルエンザや新型コロナウイルスの感染ルートは、「飛沫感染」と「接触感染」です。「飛沫感染」は、感染者の咳やくしゃみでまき散らされた「飛沫」を、別の人が直接吸い込むことで生じます。「接触感染」は、感染者が自分の咳やくしゃみを押さえた手で周囲のモノに触れ、ほかの人がそのモノに触れた手で自分の目や鼻や口などの粘膜を触ることで生じます。

つまり、「(1)感染者がウイルスをまき散らさない」「(2)まき散らされたウイルスを除去する」「(3)手指を消毒し、不用意に自分の目や鼻や口を触らない」という対策を講じれば、感染リスクを低下させることができます。いわゆる「咳エチケット」や「手洗いの徹底」は、これらに有効であるため推奨されているのです。

致死率が低いということが明らかになれば、そこまで厳重な対策を取る必要はありませんが、致死率が高い場合、あるいは国内流行の初期段階でまだ判断ができない場合は、社内の感染防止対策を実施するとよいでしょう。

マスクは感染防止ではなく拡散防止に役立つ

ドラッグストアなどで手に入る"普通"の高機能マスク(サージカルマスク)は、正面の咳やくしゃみはある程度ブロックすることができますが、上下左右に隙間が空いているので飛沫を完全に防御することはできません。

一方、感染者がマスクを着用すると、咳やくしゃみの拡散防止に効果があります。感染が明らかであれば確実にマスクを着用させましょう。よくわからない場合や、症状が出る前に感染力を持つタイプのウイルスの場合は、社内の全員がマスクを着用するのが効果的です。

マメな手洗いとモノの消毒はほかの対策とセットで行う

こまめな手洗いや、感染者が触れやすいモノの消毒は有効です。ただし、ウイルスや感染症の原因となる微生物の種類により、有効な消毒方法が変わりますので確認が必要です。新型インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスは、石けんによる手洗いやアルコール消毒が有効です。モノの消毒については、次亜塩素酸ナトリウムの希釈水を布や紙に含ませて拭き上げる方法も効果があります。

ただし、手指の消毒をした直後にトイレの蛇口やドアなどの「モノ」に触れると、その時点で手にウイルスが付着します。この状態で自分の目や口などに触れると感染する恐れがあるため、手洗いは「不用意に目や口に触れない」という啓発とセットで行わなければ意味がありません。

また、ドアノブ・スイッチ・手すり・事務機器・トイレ周りなどを消毒しても、新たなウイルスが付着するのでは意味がありませんから、感染者のマスク着用や、くしゃみを手で受けないなどの「咳エチケット」対応とセットで行うことが重要です(図表4)。

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国内流行が広がる状況において必要な対策とは

致死率が高い、あるいはまだはっきりしないウイルスによる感染症が国内にも広がる場合は、さらなる対策の強化が必要になります。具体的には、対面による接触時間の最小化で、ポイントは「密室」を避け、「集団」化させず、「距離」を取ることです(図表5)。

不要不急の会議や出張の抑制

42-43_5.jpgまずは「会議」の抑制です。密室で、複数人が、長時間にわたり会話を交わす会議は、重大な感染ルートになる可能性があるためです。重要でない会議・集会・朝礼などをできるだけ減らし、時間を短くし、どうしても必要な場合は全員がマスクを着用、会議前後に会議室のドア・スイッチ・机・ホワイトボード器具などの消毒を実施します。

次に「出張」の抑制です。新幹線や航空機などを用いる長距離移動は、不特定多数と長時間空間をともにするため、飛沫感染・接触感染が生じやすい環境です。また、自社周辺に感染者が少ない状況で、感染者の多い地域や大都市へ移動することは、感染確率を高めることになります。会議を含めてオンラインでの対応に切り替えることなどが必要です。

時差出勤の実施や通勤手段の拡大

さらに対策を推進する場合は、通勤や業務空間における人との接触を減らす対応を行います。

都市部に事業所があり、電車通勤の社員が多い場合は、「時差出勤」を検討します。満員電車は濃厚接触による飛沫・接触感染が非常に生じやすい環境です。一時的にでも時差出勤制度を導入し、満員電車に乗らずに済むようにすることで、通勤時の感染確率を低下させることができます。時差出勤制度は、台風や大雪などの影響で鉄道の遅延や計画運休が行われる際にも有効ですので、感染症対策に限らず導入をしておくと役立ちます。

リモートワークによる在宅勤務

社内の感染防止対策としてもっとも有効な方法は、そもそも出勤させないことです。リモートワークによる在宅勤務ができれば、通勤やオフィス内の濃厚接触による感染リスクを限りなく減らすことができます。業種によってはリモートワークが難しい職種も多くありますが、一人の出社を減らすことができれば、それだけオフィスにいるほかの社員への感染確率を下げることができますので、全員実施できないからやらない、というのは早計です。

リモートワークによる在宅勤務は、大地震や浸水害などの自然災害発生時にも極めて有効な対策となりますし、平時の労働環境改善にも効果があります。また非常時にのみ取り入れる制度や仕組みは、いざというときにうまく運用できない可能性もあります。BCP専用にするのではなく、できるだけ平時から活用できるようにし、非常時に「も」使えるようにするのがよいでしょう。

リモートワークによる在宅勤務が難しい業務については、出勤者の人数を減らす準備が必要です。感染のピーク時に最低限維持しなければならない業務はどれか、その業務を行うために最小限必要な人員は何人か、などを確認しておきます。出勤者を減らせれば、それだけ社内感染の可能性を低下させることができます。

これらの対策は、あくまでも「致死率の高い感染症が国内で大流行」する場合の対応となります。流行シナリオをきちんと把握し、冷静な対応を行えるようにしましょう。

※『月刊総務』2020年4月号P42-43より転載

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著者プロフィール

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ソナエルワークス代表
高荷 智也

備え・防災アドバイザー/BCP策定アドバイザー。「自分と家族が死なないための防災対策」をテーマに、堅く思われがちな防災をわかりやすく伝える活動に従事。「企業の実践的BCP策定」ポイントを解説する専門家でもある。講演・執筆・コンサルティング・メディア出演など実績多数。防災系YouTuber、Voicyパーソナリティーとしても活躍中。

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