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パワハラ防止法(2)その条文の要件

2021年06月11日

 前回、パワハラ防止法の条文、趣旨、対象を見ました。今回は、条文の要件を見ていきましょう。

■パワハラの法的な定義

 2019年6月5日公布で改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)第30条の2第1項は以下のように規定されています。


事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。


 この条文により、いわゆるパワーハラスメント(以下、パワハラ)の法的な定義は、以下の3要件を満たすものであるとされました。

(1)職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
(3)その雇用する労働者の就業環境が害されるもの。

■パワハラの要件

 2020年1月15日発布の「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)で、パワハラの要件の指針についても発表されています。

 しかし、2018年3月30日に厚生労働省から公表された、「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書に記載されている「パワハラ」の指針の方がかなりわかりやすく説明されています。そこでここでは、「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書でのパワハラの要件について確認してみましょう。

(1)職場において行われる優越的な関係を背景とした言動

 優越的な関係とは、職務上の地位に限らず、人間関係や専門知識などさまざまな優位性が含まれる。結果として上司から部下という関係のみならず、先輩・後輩間や、部下から上司に対して行われるものも含まれる。これを踏まえて、具体的事例としては以下のような場合が該当する。

・職務上の地位が上位の者による行為
・同僚または部下による行為で、当該行為を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
・同僚または部下からの集団による行為で、これに抵抗または拒絶することが困難であるもの

(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

 職場のパワーハラスメントについては、業務上の指導との線引きが難しい面があり、さらには個人の受け取り方によっては、パワーハラスメントに該当すると感じる場合もあるものの、業務上の適正な範囲で行われている場合には、パワーハラスメントには当たらないとされている。これを踏まえて、具体的事例としては以下のような場合が該当する。

・業務上明らかに必要性のない行為
・業務の目的を大きく逸脱した行為
・業務を遂行するための手段として不適当な行為
・当該行為の回数、行為者の数など、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える行為

(3)身体的もしくは精神的な苦痛を与えることまたは就業環境を害すること

 検討会報告書とパワハラ防止法のパワハラの要件については、(3)のみ若干要件が異なっています。しかし、検討会報告書の要件である「身体的もしくは精神的な苦痛が与え」られれば、それはパワハラ防止法でいうところの「就業環境が害され」ているので、ほとんど同じと考えていいでしょう。検討会報告書では、この要件について以下のように述べています。

 当該行為を受けた者が身体的もしくは精神的に圧力を加えられ負担と感じること、または当該行為により当該行為を受けた者の職場環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること。これを踏まえて、具体的事例としては以下のような場合が該当する。

・暴力により傷害を負わせる行為
・著しい暴言を吐く等により、人格を否定する行為
・何度も大声で怒鳴る、厳しい叱責を執拗(しつよう)に繰り返す等により、恐怖を感じさせる行為
・長期にわたる無視や能力に見合わない仕事の付与などにより、就業意欲を低下させる行為

■パワハラに該当する例・しない例

 「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」2(7)では、さらにパワハラに該当すると考えられる例と該当しないと考えられる例についても以下の通り列挙されています。

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■パワハラに対して適切な対応を行う

 今後、パワハラ防止法に関する裁判結果なども出てくると思われますが、まだそのようなものが出てきていない現状においては、厚生労働省の指針や、それの基となったと思われる「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書で示された要件が参考となるでしょう。

 そして、事業主は以上のパワハラについて、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備などを行いましょう。相談を行った労働者に対し、解雇・その他不利益な取り扱いをしてはいけません。これに反した場合、その企業は厚生労働大臣から勧告を受け、それでもまだ従わない場合は、その旨が公表されます(パワハラ防止法第33条)。

高橋 孝治
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