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『月刊総務』本誌記事:

新型コロナウイルス感染症対策に伴う休業措置・助成金(1)

2020-05-08 09:07

パンデミック宣言に引き続き、緊急事態宣言まで発令された新型コロナウイルス感染症。小中学校等の休校に加え、大規模イベントの休止、店舗の運営自粛など、私たちの生活、経済に大きな影響が表れています。
実際、新型コロナウイルスの影響で、休業の必要があるとき、企業はどうすればいいのか。また、どのような救済措置があるのか。休業措置、助成金について解説していきます。

従業員を休ませる場合の措置

休業手当の考え方

 労働基準法第26条で、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」と定められています。
 これが休業手当ですが、今回の新型コロナウイルス感染症拡大により、実施する会社の措置が「使用者の責に帰すべき事由」となるのかどうか、ということが企業にとっては気になるところです。
 直接的に会社が何かをしたことが事由で休業を命ずるわけではありませんので、それぞれの事象により個別判断ではありますが、一つの考え方として以下の通りに整理できます。

■感染しているか不明だが、休ませる場合
 発熱している場合などの一定の条件を決めて会社が休ませる場合は、休業手当の支給が必要と考えられます。
■感染している場合
 新型コロナウイルスに感染していて都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」には該当しないと推測できるため、休業手当を支払う必要はないと考えられます。
 休業手当は、使用者の責めに帰すべき事由かどうかで判断されますが、不可抗力による休業の場合は、使用者の責めに帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払い義務は発生しません。
 ここでいう不可抗力とは、以下の2つの要件を満たさなければならないと解されます。
(1)その原因が事業の外部より発生した事故であること
(2)事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること
 しかし、休業手当は労働者の最低生活を保障するために使用者の帰責事由も拡大されています。それを踏まえると、使用者の責めに帰すべきでないとされる経営上の障害であっても、その原因が使用者の支配領域に近いところから発生している場合は、休業手当の支払い義務があると考えることができるでしょう。

感染が疑われるときの対応

 新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、従業員を休ませざるを得ない場合、その対応策としてさまざまなパターンを検討しておく必要があります。ここからは、具体的な対応策について注意すべきポイントをまとめていきます。
 まず、発熱などの症状がある場合は、仕事を休むことが本人のためにも感染拡大の防止の観点でも大切な行動です。したがって、会社としては休める環境を作ることが重要です。
 会社としては、厚生労働省が「相談・受診の目安」として示している「風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合」などを参考に一定の基準が決めることで現場での判断がしやすくなるでしょう。
 また、新型コロナウイルスに感染しているわけではない場合でも、会社が休業を命ずる場合は、原則として、休業手当を支給しなければならないと考えられます。
 休業手当は平均賃金の100分の60以上を支払うこととなっていますが、休みやすい環境を作るためには、支給する率を検討することも考えられます。
 休業手当を支給した場合で一定の要件を満たせば、後述する雇用調整助成金の支給対象となり得ます。

リモートワークの活用

 感染拡大防止には、満員電車での通勤を回避することにより飛沫(ひまつ)・接触感染を防ぐ効果が考えられるため、一定の柔軟な措置を検討することが考えられます。
 その措置の一つがリモートワークの活用です。リモートワークとはオフィスで働くのではなくオフィス以外の自宅やレンタルオフィスなどの会社から離れた場所で働くことをいいます。
 労働時間管理は、オフィスで働いている場合と同じ扱いで運用が可能なため、通常と変わらない労働時間管理とすることが多いです。
 リモートで活用する各種ツールにより労働時間の把握も可能なケースが多いので、みなし労働時間管理にする必要がない場合もあります。事業場外みなしとするのは、あくまでも労働時間管理ができない場合に限りますので、管理可能であれば通常の労働時間管理で問題ありません。
 また、リモートワークの制度が導入されていない企業においては、労働契約上の根拠として就業規則などで規定がされていないと思いますので、就業規則の改定などにより、就業場所がオリモートワークの活用従業員を休ませる場合の措置休業手当の考え方感染が疑われるときの対応フィス以外の場合の労働条件を定めておく必要があります。

労働時間の調整による対応

 通常の労働時間管理をしている企業においては、始業・終業時刻が決まっていますので、時差出勤の活用も考えられるでしょう。また、フレックスタイム制を導入している企業においては、コアタイムの解除なども一案です。
 時差出勤については、法的に定められたものはありませんが、就業規則で「始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ」が規定されている企業は多いと思いますので、この制度を活用し複数パターンの始業・終業時刻を整備することが考えられます。
 通常はフレックスタイム制や裁量労働時間制を導入していない限り、労働者が自由に始業・終業時刻を決めることはできませんが、本人の希望を聞いた上で、会社が指定するという流れで繰り上げ・繰り下げの運用を検討することができます。
 フレックスタイム制を導入している企業は、コアタイムを解除することでより柔軟な働き方を取り入れることも考えられます。
 ただし、時差出勤など、暫定的に始めた対応を継続する場合は、就業規則の変更が必要です。

パートタイム労働者の対応

 パートタイム労働者であるからといって、正社員と異なる対応となることはありません。時給者なので休業させても休業手当は不要、というルールもありませんので、月給者と同様にパートタイム労働者などの時給者についても休業手当の支給は必要となります。

考えられるその他の対応

 リモートワークを導入できないため、オフィス内で仕事をする場合も、フリーアドレスなどは中止し、万一ウイルス感染者が出た場合に、本人の行動追跡が可能となるようにしておくなどの工夫も考えられます。
 感染拡大の防止の観点であれば、当然ですが、不要不急の外出を控えるために、打ち合わせや出張なども控える必要があります。オンラインツールを上手に活用した方法を、全社で取り入れていくことが考えられます。

変形労働時間制の見直し

 新型コロナウイルス感染症に関連して、人手不足のために労働時間が長くなる場合や、事業縮小により労働時間が短くなるなどが考えられます。そうなると、1年単位の変形労働時間を導入することや、実施している計画を見直す必要があることが考えられます。
 また、この場合、現在締結済みの労使協定について労使の合意解約をし、あらためて協定し直すことも可能となります(発基0317第17号令2・3・17)。
 合意解約した期間の清算として、その期間を平均し、週40時間超の時間外労働については割増賃金の支払いをするなど、労働者の不利益にならないような対応が求められます。

36協定の特別条項の考え方

 36協定の特別条項の理由として、新型コロナウイルス感染症に関することが明記されていなくても、臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合として認められるという内容が通達されています。
 そのほか、現在は特別条項を締結していない事業場も、手続きを踏み、労使合意を行うことで、特別条項付きの36協定を締結することが可能です。

非常時としての労働時間管理

 労働基準法第33条では、災害等による臨時の必要がある場合に、労働基準監督署長の許可を受けることで時間外労働を命ずることができると定められています。
 感染者の治療、感染症対策を行う場合、マスクなどの必要なものや医療機器等を緊急に増産・製造する場合など、この災害等による臨時の必要がある場合の対象となるという解釈が示されています。

職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するには

 先に挙げた事項を整備・実施することはもちろん重要ですが、基本的な対策を実施できているのか、確認することも大切です。
 厚生労働省は、ホームページにて、「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」を掲載しています。「月刊総務オンライン」の会員コンテンツ「業務資料ダウンロード」からダウンロードも可能です。衛生委員会等で共有してみてください。

『月刊総務』2020年6月号P52-53より転載


エキップ社会保険労務士法人
代表社員 特定社会保険労務士濱田京子さん
企業労務に特化し、大企業から中小企業までの顧問先の人事・労務領域の課題解決に取り組んでいる。株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン社外監査役、東京労働局あっせん委員でもあり、日々新しいことにも積極的にチャレンジしている。