月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

総務パーソンが押さえておきたい8月のトピックス

2020-07-28 10:40

2020.August

■法務

執筆/小沢・秋山法律事務所 弁護士 香月裕爾


●新型コロナウイルスの影響による債務不履行

 たとえば、あるメーカーの工場で新型コロナウイルスの集団感染が発生し、消毒および感染拡大防止のため、工場を2週間ほど閉鎖したことにより、契約上の納期に製品を納めることができず、取引先に損失を与えたようなケースにおいて、当該メーカーは取引先に対して損害賠償責任を負うことになるのでしょうか。
 民法では、債務者の債務不履行(前記ケースは履行遅滞)について、債務者の責めに帰すべき事由(帰責事由)があることを責任発生の要件としています(同法四一五条一項)。すなわち、たとえ結果的に履行遅滞等の債務不履行になったとしても、債務者に帰責事由がなければ、損害賠償責任が発生しないことになるのです。
 そして、債務者に帰責事由のない典型的な事由として、「不可抗力」が挙げられます。不可抗力とは、外部から生じた原因であり、かつ防止のために相当の注意をしても防止できない事態です。具体例として、地震や洪水等の天災、戦争や騒乱などが挙げられています。
 前記ケースが、不可抗力を理由に債務不履行責任を免れることができるか否か、一律に回答することは困難です。もちろん、世界的な大流行となっていること、わが国でも感染者が、相当数の死亡者が出ていることなどを考慮すれば、不可抗力に該当する可能性は否定できませんが、結果予見可能性と回避可能性を検討した上で、結論を出すことになるかと思います。


■労務

執筆/斉藤社労士事務所 特定社労士 斉藤貴久


●社会保険の適用拡大(年金改革法案成立)

 2020年5月29日、年金改革法案が参議院本会議で可決・成立しました。法案の中で注目されるのは、短時間労働者に対する社会保険の適用拡大でしょう。現行法では、大企業(被保険者数が501人以上)の短時間労働者(所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満)が、4つの要件((1)所定労働時間が週20時間以上、(2)雇用期間が1年以上見込まれること、(3)賃金月額が8万8,000円以上、(4)学生でないこと)に該当する場合には、社会保険が適用されます。
 今回の法改正で、規模501人以上の適用要件が、2022年10月1日から101人以上、2024年10月1日から51人以上に引き下げられます。また、4要件のうち、(2)が削除されます。企業規模の要件は、事業所単位ではなく会社単位でみられることから、多くの企業に影響を及ぼしますので注意が必要です。


●新型コロナウイルスに関する母性健康管理措置

 2020年5月7日、厚生労働省は「男女雇用機会均等法に基づく指針」の改正を公表しました。新型コロナウイルス感染症に関する心理的なストレスが母体または胎児の健康保持に影響がある場合には、会社は医師の指導に基づいて在宅勤務や休業等の必要な措置を講じなければなりません。これは、5月7日から2021年1月31日までの時限的なものとなります。


■税務

執筆/税理士法人AKJパートナーズ


●パート・アルバイトにおける源泉徴収について

 給与所得の源泉徴収税額は、通常「月額表」か「日額表」の「甲欄」または「乙欄」を使って求めます。しかし、単発アルバイトの源泉所得税については、「日額表」の「丙欄」を使用することがあります。
 単発アルバイトの雇用契約期間が2か月以内であれば、日額表の丙欄を使用しますが、継続して2か月を超えて給与を支払う場合には、2か月を超えた日からは通常通り、甲欄または乙欄を使用して源泉所得税額を求めます。
 丙欄の場合、年末調整は必要ないので、事業主にとって便利な雇用の一つといえるでしょう。


●外国人従業員が国外の不動産を譲渡した場合

 外国人従業員が、国外の不動産を譲渡した場合、その従業員が永住者・非永住者・非居住者なのかにより、税務上の取り扱いが異なります。
 永住者は課税対象となり、その不動産の保有期間に応じて長期譲渡所得か短期譲渡所得に分類されます。一般に不動産の譲渡により生じる所得は、不動産所在地国の国内源泉所得になりますが、永住者が日本で課税され、不動産所在地国でも課税された場合、居住地国である日本で外国税額控除の適用を受けることになります。
 非永住者は、その代金が日本に送金または日本で支払われた場合のみ課税の対象となります。
 非居住者は、国外源泉所得のため、国内においては課税の対象になりません。


『月刊総務』2020年8月号P7より転載