総務のトピックス

【労務トピックス】:

7-10月における社会保険に関する実務上の留意点・改正点

2016-08-08 18:37

 毎年7月から10月は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の手続きや保険料の計算上、変更の生じる時期です。今回は法改正も予定されておりますので、届出の内容や実務上の注意点について説明します。

・ 7月は全事業所で「算定基礎届」の提出の必要があり、給与固定部分の変動があった場合は「月額変更届」、夏期賞与の支給をする場合は「賞与支払届」の提出が必要になります。
・ 9月は厚生年金保険料率の改定が予定されています。また、7月に届け出た「算定基礎届」より従業員各人の標準報酬月額が新たに決定されますので、標準報酬月額の変更が必要となります。
・ 10月から「短時間労働者に対する厚生年金保険・健康保険の適用拡大」が開始される予定です。


1.「被保険者賞与支払届」の提出

 会社が賞与を支給した場合、「健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届総括表」と「健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届」を提出します。70歳以上の被保険者に賞与を支給した場合は、別途「厚生年金保険 70歳以上被用者算定基礎・月額変更・賞与支払届」も提出が必要です。

<実務上の主な注意点>

・ 賞与を支給しない場合も、「賞与支払届総括表」に不支給の旨を記載して、届出する必要があります。

・ 休職者に賞与を支給した場合でも、賞与保険料は通常の被保険者と同様に計算し、本人負担分の保険料を徴収しなければなりません。
・ 産前産後休業・育児休業期間中の被保険者に賞与を支給した場合については、「賞与支払届」の提出が必要ですが、賞与にかかる保険料は免除になります。
・ 退職日までに賞与を支給した場合、「賞与支払届」の提出が必要です。但し、賞与支給月と退職日の翌日が属する月(資格喪失月)が同月である場合は、賞与についての保険料はかかりません。


2.標準報酬月額の変更

 算定基礎届の提出により、その年の9月から翌年の8月まで適用となる被保険者の新しい標準報酬月額が決定されます。

<実務上の主な注意点>

・ 9月分の保険料から、決定された標準報酬月額に基づく社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料(一部厚生年金基金保険料))が適用されます。

・ 7月、8月、9月で随時改定に該当し「月額変更届」を提出した被保険者については、「標準報酬改定通知書」が送付されます。該当者は、改定月から翌年8月分の保険料まで「標準報酬改定通知書」の標準報酬月額を適用します。
・ 新たに決定された標準報酬月額については、給与明細書などで従業員に通知します。


3.厚生年金保険料率の改定及び標準報酬月額の下限等級の追加

 平成28年9月から平成29年8月までの厚生年金保険料率は18.182%になる予定です。給与計算において保険料率そのものの改定が必要となります。

 また、平成28年10月から厚生年金保険の標準報酬月額の下限に新たな等級(88千円)が追加される予定です。


4.「短時間労働者に対する厚生年金保険・健康保険の適用拡大」

 平成28年10月1日から、「特定適用事業所」に使用される短時間労働者は、新たに健康保険・厚生年金保険の適用対象となり、要件に該当した場合は、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。

【特定適用事業所とは】
 個人事業所の場合は適用事業所ごとに、法人事業所の場合は同一の法人番号を有する全ての適用事業所を一つの適用事業所とみなした場合に、使用される厚生年金保険の被保険者数が、1年間で6ヶ月以上500人を超えることが見込まれる適用事業所のことをいいます。

【短時間労働者の要件】
 いわゆる短時間労働者であり、原則として次の(1)から(4)までの全てに該当する労働者をいいます。
 (1)週の所定労働時間が20時間以上であること
 (2)1年以上の雇用が見込まれること
 (3)賃金の月額が8.8万円以上であること
 (4)学生でないこと

【施行日までの流れ】
 「特定適用事業所」に該当する、もしくは、該当の可能性がある事業所には、8月以降、年金事務所より通知文書が届きます。実際に「特定適用事業所」に該当した場合は、10月1日以降に「特定適用事業所該当通知書」が送付されます。この通知書が届いた場合、新たに被保険者となる方については「被保険者資格取得届」の提出が必要となります。


 特定適用事業所に該当する事業所とは、前年10月から本年7月までの各月のうち、被保険者の総数が500人を超えた月が6ヶ月以上ある事業所をいい、8月頃に「施行日に特定適用事業所に該当する旨のお知らせ」が、10月頃に「特定適用事業所該当通知書」が届きます。

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 特定適用事業所に該当する可能性のある事業所とは、
(1)8月時点で、過去10ヶ月間に、被保険者の総数が500人を超える月が5ヶ月ある場合
(2)9月時点で、過去11ヶ月間に、被保険者の総数が500人を超える月が5ヶ月ある場合
を指し、
(1)は8月に、(2)は9月に「特定適用事業所に該当する可能性がある旨のお知らせ」が届きます。
 いずれも「特定適用事業所」に該当した場合は、10月に「特定適用事業所該当届」と新たに被保険者となる方の「被保険者資格取得届」の提出が必要となります。


<実務上の主な注意点>

・ 使用される被保険者の総数が常時500人を超えなくなった場合でも、「特定適用事業所」として取り扱われ続けます。適用条件を下回った等により「特定適用事業所」の扱いを外したい場合は「特定適用事業所不該当届」の提出が必要になります。この届出には使用される被保険者の4分の3以上の同意を得たことを証する書類を添付します。なお、「特定適用事業所不該当届」を提出する場合は、適用拡大によって新たに被保険者となった短時間労働者に係る「被保険者資格喪失届」の提出も必要となります。

 7月から10月にかけては、標準報酬月額の等級の改正、厚生年金保険料率の変更、短時間労働者に対する適用拡大など留意すべき事柄が多くあります。漏れやうっかりミスなどにご注意ください。

連載協力:税理士法人AKJパートナーズ
    ( http://www.akj-partners.com/