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社会保険と金融商品の基礎知識

2012年11月06日

この度、月刊総務オンラインより、本稿の寄稿依頼を頂きました。
これからどうぞよろしくお願いいたします。


■なぜ、社会保険と金融商品の基礎知識なのか?

私は現在社会保険・金融関連分野とビジネス英語とに関わる執筆業(含む翻訳)と講師業を行っておりますが、1980年に社会人になってから30年余り、ずっと金融業界におり、直近の10年間は、投資信託、個人年金保険といった金融商品を銀行、証券会社を介して販売する業務に関わってきました。

その中で、金融業界が提供すべきであるのに、顧客である企業や一般消費者に伝わっていない大切かつ基本的な知識が2つあるということを強く思いました。

その2つの知識とは、この稿のタイトルである、社会保険に関わる基礎知識と、金融商品に関わる基礎知識です。
例えば、金融機関で最近盛んに販売している投資信託個人年金保険といった商品は、公的年金の不足を補うための商品として勧められていますが、土台となる公的年金がいつからいくらくらい払われるかを明確に教えてくれる銀行員や証券会社社員は、残念ながらほとんどいません。

しかし、民間で販売される金融商品の大きな役割は、社会保障制度の中で行われる公的な保障を補完することであり(※)、この公的保障を語らずしてやみくもに金融商品を販売するのは、顧客に無駄な買い物をさせるリスクを常に負っています。
そこで、現在の執筆や講演活動の中では、金融機関の役職員に、販売している金融商品との関わりの範囲内で必要最小限の社会保険知識をつけるよう強く勧めるとともに、一般消費者にも、最低限の知識を付け無駄な買い物をすべきでないことを伝えております。

(※)この点については、民間の医療保険が、公的医療保険の保障でカバーできないところをカバーするために存在することを考えて頂ければ、容易に理解頂けると思います。


■金融商品は薬と同じ

今、投資信託と個人年金保険というふたつの金融商品を挙げましたが、このふたつはいずれも、公的年金補完商品として銀行や証券会社の窓口で販売されています。皆様が会社を退職され、退職金を受け取られた方々が、銀行の窓口で勧められる商品の典型が、この2種の金融商品です。

では、この2種の商品の共通点と相違点を、皆様は認識されているでしょうか?
もし、認識がないようでしたら、同じ公的年金を補完する商品であっても、どちらがご自身のニーズにより近いものであるかを判断することは難しいはずです。退職金というまとまったお金を、基礎的知識無しに、勧められるままに購入した結果として、トラブルが多く発生しています。その理由は、販売員側にも、購入者である一般消費者側にもあると言って間違いないと思います。

金融商品は、よく薬に例えられます。
同じ病気であっても、人によって病状の程度や体質も違いますから、治療するには、人によって異なる治療法や薬の処方がなされるはずです。金融商品も同じで、家計の状況は、どのひとつの家庭をとっても、まったく同一であるということはありません。公的年金を補完するとはいっても、いくらぐらい足りないのか(※)、他の使い途のためにとっておくべきお金はないのか、ある期間だけ十分なお金を補えばよいのか、一生涯にわたる安心が欲しいのか、すべて個々人、個々の家庭で違います。

(※)この「いくら足りないのか」を知るために、まさに社会保険の代表格とも言えるべき公的年金に関する知識が必要なのです。

こうした個々人や個々の家庭の違いをよく認識した上で、金融商品が販売されているかというと、残念ながらここにも疑問点が残ります。この違いを明らかにするために軸となるもののひとつが社会保険の知識でもあるのですが、これがない販売員に、顧客のニーズをしっかり汲み取ることはあまり期待できません。
それに、金融機関は、「このお客さまのニーズにはどの商品が一番マッチするか」という視点よりも、「どの商品を、このお客さまに買ってもらうのが、自行、自社にとって最も儲かるか」という視点で販売することが多いので、顧客のニーズにマッチしない商品を勧めることが多いのです。また、自分のニーズに合わない商品を勧められても、そのことに気付かない顧客が多いことも事実です。


■企業の総務人事担当の立場からは?

「では、こうした事実に対して企業の総務人事担当の立場から何ができるのだ?」という声が聞こえてきそうです。
しかし、社会保険や金融商品に関わる知識は、従業員の資産形成、退職後の生活設計をより良いものにするために不可欠の知識であると考えると、従業員福利の観点から、総務人事部門からこれらに関する情報提供を大いにすべきであると考えますが、いかがでしょうか?

また、昨今徐々に導入が進んでいる、確定拠出年金制度のメリットや資産運用に関する知識も、まさに社会保険の基礎知識であり、金融商品の基礎知識です。
この他にも、労災保険、健康保険、雇用保険、介護保険等、従業員を守っているセイフティネットである社会保険制度関連の教育や情報提供は、従業員に安心感を与えますし、また伝えようによっては、企業に対するロイヤリティの向上、モラルアップ(※)にもつながります。

(※)例えば、社会保険料の半分以上は企業が負担し、その恩恵は従業員がその大半を享受するという事実を、どれだけの従業員がしっかり理解しているでしょうか。この点をしっかり伝えるだけでも、従業員の意識は変わってくるはずです。


本稿では、このような観点で、人事部から従業員に対して発して頂きたいメッセージとして使えそうなもの、あるいは福利厚生制度として検討して頂きたいもの等、さまざまなトピックスをご紹介していきたいと考えております。

戸田 博之
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