トータル・コンペンセーションを考える(その2)社会保険情報をモラルアップに使う(2)
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会社の負担している社会保険料等を開示するメリット
前回は、従業員に対して税や社会保険の一般情報を提供することで、モラルアップを図れるかどうかの可能性について触れました。
今回は、会社が負担している社会保険料等についての情報を開示するメリットについて触れたいと思います。 従業員が給料から天引きされている税や社会保険料について不満を持っているとすれば、その原因はいろいろ考えられると思いますが、最も大きいと思われるのは、「何がどれだけ天引きされているかわからないから」なのではないでしょうか。 例えば、大きな天引き項目のひとつに厚生年金保険料があります。
これについては、前回ご紹介したように「長く民間企業に勤めて給料が上がって行けば、将来もらえる年金も増える」ことを伝え、将来もらえる年金の原資となっている保険料の半分は会社が「払ってくれていること」を説明してはどうでしょう。
また、年金の給付は、けがや病気で働けなくなった時にも行われる可能性があることを考えれば、自分が保険料を払っているのは当たり前でもあるのです。しかもその半分を会社が負担していることを伝えれば、モラルを引上げる効果につながると思います。 また、健康保険料も同じように、大きな負担です。
これについては公的制度をおさらいした上で、制度のメリットを享受するための保険料の半分(場合によってはそれ以上)が会社負担であることを伝えれば、大きな共感を得るはずです。
さらに自営業で働く場合と比較をすれば、年金については給付の充実度、健康保険については保険料負担において、民間企業で働く事でいかにメリットを得ているかを実感できるケースが多いと思われます。
その他の会社負担についても
社会保険料についていえば、会社が負担しているコストは、年金保険料と健康保険料に留まりません。雇用保険については会社側の負担比率が高いこと、労災保険等については会社がすべてコストを負担していること等も是非開示すべきだと考えます。 そうすることによって、企業に勤めるということでいかに会社や公のしくみによって守られているかを従業員が理解することになります。
人事総務ご担当にとっては当たり前のようなしくみを伝えるこうしたコミュニケーションが、実は従業員のモラルアップ、ひいては企業としての生産性向上に資することをご理解頂けるのではないでしょうか。
具体的な方法としては、毎月の給与明細に添えて説明文書を配布することが考えられます。ただ、それだけではなかなかメッセージが浸透しないと思われますので、説明会(「勉強会」と称しても良いのではないでしょうか)を開催し説明する、あるいはDVD等を作って研修プログラムに組込む等が考えられます。
留意点
公的制度のしくみの開示、会社負担の開示については、2つ留意点があります。 まず、公的制度の説明をする際には、会社独自で付加的に提供している年金、退職金、保険等福利厚生制度があることを同時にしっかり説明しましょう。そうしないと、従業員側は「公的制度はどこの会社でも提供している(現実には、適用事業所とならないところもあるので違いますが)のだから、この会社に特別なことではない」という反応を示す可能性があるからです。有り難みが半減することになります。
もう1点は、説明を誰が行うかについて配慮することです。
特に、会社負担部分の説明を経営者や人事総務担当がすると、従業員にとっては「有り難い話ではあるが、恩着せがましい話」と思われてしまうリスクがあります。こうした場合には、中立的第三者を立てて、セミナー形式のかたちをとるなどの工夫が必要となってくると思われます。
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