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地域活性化に活用できる知的財産〜地理的表示〜第8回

2017年04月17日

 こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。

■ 最近の公示状況

 地理的表示保護制度では、GI申請後、農林水産省(以下、農水省)の形式的な審査を経たものについて、その申請内容が公示され、3か月にわたる第三者からの意見書提出期間が設けられます。
 公示状況は農水省のWebサイトで確認できますが、2017年4月12日現在で、「くろさき茶豆」「東根さくらんぼ」「木頭ゆず」など14産品が公示されています。
 今回公示された産品の多くは、申請日から約7、8か月後に公示に至っています。農水省の審査官の数もGIの制度導入時と比較して増加したと聞いておりますし、審査ノウハウが蓄積されてきたこともあり、審査が以前よりスピードアップしたような気がします。

■ 申請書記載の留意点

 審査官は原則、書面審査によって申請された産品が登録に値するかどうかを判断します。したがって、できるだけ早く登録を受けるためにも申請書を記載する際の留意点をしっかりと理解しておくことが重要です。
 前回は、弊所が申請代理をしたGI登録産品「伊予生糸」を例に挙げて説明しましたが、引き続き申請書の書き方のポイントについて説明します。
 まず、産品の品質については、客観的なデータが必要となります。たとえば味が「甘い」ということを表現するのであれば、ほかの産品と比較した糖度のデータを提出して客観的に説明する必要があります。
 「伊予生糸」でも、「同じ重量でも糸に膨らみがあり弾力と光沢がある」という表現について、ほかの生糸と比較できるように体積当たりの重量を数値で説明しました。

 産品の特性が生産地に帰せられる理由も明確に説明する必要があります。これについては、「なぜ他の生産地ではなく、申請に係る生産地である必要があるのか」ということを意識してまとめるとよいでしょう。
 この点、GI登録第23号の「十三湖産大和しじみ」のように、生産地が「十三湖」という極めて限定的なエリアの場合は産品の品質や、生産地との結び付きも説明しやすいのではないかと思います。
 同様にGI登録第14号の「吉川ナス」のように、特定の品種が一定の地域だけで伝統的に守られてきた場合も、産品の品質や、生産地との結び付きを説明しやすいと思います。

 その半面、「産地名称と産品名」が結び付いた名称の産品(例:夕張メロン)であっても、その産地名称と異なる全く関係ない地域でも栽培されているようなものについては、産品の特質が生産地に帰せられる説明をするのが非常に難しくなると思います。

■ GI登録効果の紹介
 最後に、GI登録効果に関する興味深い新聞記事がありましたので、ご紹介します。
 先月末(3月29日付)の日本農業新聞によると、2016年2月に「くまもと県産い草」と「くまもと県産い草畳表」がGI登録を受けたことを契機に、い業(いぐさ業)復活の動きが始まったそうです。

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(写真:農水省HP 登録公示「くまもと県産い草畳表」より引用)

 国内のい草生産業は、生活様式の洋風化による畳の需要減少や、安価な中国産畳表の輸入増加により衰退の一途をたどっていました。しかし、GI登録を契機に畳文化を見直そうという気運が高まり、全国18の畳店が中心となって畳復興のプロジェクトが立ち上がったそうです。また、畳の消臭や抗菌という機能性を生かした新素材開発も進められ、畳を取り巻く環境が変わりつつあるようです。
 い草の全国生産量の9割を占める熊本県JAやつしろも、今後は海外に販路を見出すべく畳表の輸出の検討を始めたそうです。
 GI登録から約1年しか経過していないにもかかわらず、これは大きな効果といえるのではないでしょうか。

 次回は商標とのGIとの関係について説明します。

鈴木 徳子
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