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地域活性化に活用できる知的財産〜地理的表示〜第13回

2017年10月02日

 こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。

 先日、ジョン・レノンさんの名前をもじった「ジョン・レモン」という銘柄の飲料を英国で販売したポーランドの飲料メーカーに対して、オノ・ヨーコさんが商標権侵害だと抗議したというニュースを見ました。
 飲料メーカー側が銘柄を「オン・レモン」に変更することで結局は和解に至ったそうですが、どこの国でも知名度を利用した便乗商法というものはあるものです。

 地理的表示についても便乗問題は他人事ではありません。
 地理的表示登録された「西尾の抹茶」(登録第27号)と似たような表示が、中国企業によって欧州連合(EU)と中国で商標出願されていることが今年の7月に判明しました。

「西尾の抹茶」(登録第27号)農水省HPより引用
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 報道によると、現在、(地理的表示の申請人でもある)西尾茶協同組合は現地当局に商標異議申し立てを申請しています。今後行政を巻き込んで対応していく必要があると思われます。

 ということで、本題に入ります。
 今回は、上述の「西尾の抹茶」問題とも関連するのですが、地理的表示(GI)と地域団体商標の相違について、「規制手段」に焦点を当てて説明しようと思います。

■GIと地域団体商標の相違(「規制手段」)

(1)GIの場合
 規制手段はGIの大きな特徴の一つです。
 地理的表示およびGIマークの不正使用に対しては、国が措置命令を行い、改善されない場合には罰則が科されます。
 生産団体にとっては、弁護士費用を含む訴訟費用等を負担することなく、自分たちのブランドを保護することができるという大きなメリットがあります。

 農水省は、地理的表示またはGIマークの不適切な使用に関する情報を受け付けるために、次の「地理的表示等の不正表示通報窓口」を設置しています。

http://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/gi_mark/contact.html

 農水省が発表した2016年度の「国内外における地理的表示(GI)の保護に関する活動レポート」によると、平成28年度に不正表示通報窓口に2件の疑義情報があり、そのうちの1件は、地理的表示を使用しているにもかかわらずGIマークが付されていない商品が小売店で販売されているという内容でした。

 報告によると、国は、当該商品の流通業者2社、生産販売業者1社に対する立入検査を実施しました。その結果、疑義商品が真正な地理的表示産品であることが判明し、関係業者にGIマークの貼付等の指導を行ったようです。

 不正使用の情報提供を促す一方で、地理的表示とGIマークはセットで使用する必要がある等の情報の周知徹底をはかる必要もありそうです。

 なお、地理的表示法は日本国内でしか効力を有しません。したがって、海外での保護まで保証はされません。ただし、日本と同等の地理的表示保護制度を有する外国と個別の?国間等の国際協定により、GIの相互保護、つまり、海外での保護が可能となります。

 国際協定については、今年の7月に、EUとの間で初めて相互保護の合意に至りました。そのため、前述の「西尾の抹茶」についても、EUに申請された商標に対する異議申し立ては認められる公算が高いと予想されています。

(2)地域団体商標の場合
 地域団体商標では、一般的な商標権と同様、商標権を侵害された場合には、権利者自身が民事訴訟(損害賠償請求、差止請求等)を提起する必要があります。

 不正品に対する取り締まりや訴訟の費用は、自ら負担する必要があります。したがって、場合によっては、これが大きな負担となる可能性があります。
 一旦裁判を起こせば長期化する可能性もあり、精神的・経済的負担が一層増し早期収拾のために結局和解を選択せざるを得ないということも起こりえます。

 地理的表示登録された産品の中には、その申請前から地域団体商標はすでに取得していたという産品もありますが、訴訟等の精神的・経済的負担軽減のメリットを享受するというのがGI申請の目的の一つであったと思われます。

 GI登録産品に関しては、前述の通り、将来的に国際協定によって海外での不正品取り締りも期待できますので、特に海外展開をしていく予定の産品については、(規制手段という側面においては)地域団体商標よりも大きなメリットを享受することができるでしょう。

鈴木 徳子
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