月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

社内広報担当者に必要な視点と行動

2020-11-25 10:00

社内広報担当者の役割を明確にした上で、実務上、特に意識したい行動を一般的な社内広報活動(社内報発行)に焦点を当てて解説します。

社内広報の担当者の役割

 社内広報担当者には、大きく3つの役割があります(図表1)。3つの役割を果たすことで、社内広報の成果創出に近づくことができます。

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▼(1)プロデューサー

 社内広報担当者の実務は、冊子型社内報やWeb型社内報の制作・発行が主となります。これらの制作・発行が目的ではなく、従業員エンゲージメントの構築が大目的です。経営の視座から組織課題を捉え、その解決策を社内広報活動として落とし込むプロデューサーとしての役割が求められます。
 時折、社内広報担当者から、「自分の仕事の価値がわからない」という嘆きを聞きます。確かに社内広報活動は貢献度が目に見えにくい仕事ですが、自ら仕事の価値を放棄してはもったいない。あらゆる手法を駆使して、組織課題の解決策を立案・実行すれば、周囲の評価も自己評価も変わります。

▼(2)ブリッジパーソン

 従業員とエンゲージメントを構築するためには、従業員側の視点を持つことが不可欠です。
 会社が期待する行動を一方的に従業員に押し付けることは、会社と従業員との共創関係の構築につながるものとはいえません。
 冊子型社内報・Web型社内報などの実務を担っている社内広報担当者は、「読者目線」(従業員の視点)を徹底し、経営の考えを従業員に伝わるように翻訳したり、従業員が求めている情報から逆算して企画を考えたり、現場の考えや取り組みを経営に知ってもらうなど、橋渡し役になることが大切です。

▼(3)ディレクター

 冊子型社内報・Web型社内報発行の実務では、編集委員・取材協力者・関係各部署など社内の関係者との調整が多いです。編集委員・取材協力者との調整については、本人だけでなくその上司への配慮も不可欠。企画によっては、こちらの部署にとっては良い話でもあちらの部署にとっては良くない場合もあります。バランス感覚を基に先回りした調整が必要です。
 制作を外注している場合は、制作会社への指示・提案評価が発生します。社内広報活動の実務の進行管理を担うディレクターとしての役割を担っています。

媒体全体の企画で大事にしたいこと

 ここからは、冊子型社内報・Web型社内報の実務に落とし込み、特に悩みが多い「企画」に焦点を当てて、担当者に求められる視点・行動を扱います。媒体全体の企画と、個別の特集・記事の企画に分けて紹介します。
 まずは、媒体全体の企画です。そもそも広報活動は、「なぜ」「誰に」「何を」「どうやって」の枠組みで考えます。これは活動全体、個別の施策単位の企画立案でも変わりません(図表2)。

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▼(1)なぜ

 「なぜ」は発行目的です。発行目的は、社内広報活動の原理原則といえる「企業価値向上のために従業員エンゲージメントの構築を目指す」を大目的とし、企業ごとに直面している組織課題とひも付けて考えます。
 たとえば、「従業員の離職率が高い」場合は、社内報の発行目的は「従業員の定着」であり、管理指標は「従業員の離職率」となります。

▼(2)誰に

 次に「誰に」です。大半の企業は、社内報のターゲットを明確にしておらず、「全従業員」としている場合が多いです。あるいは、「ターゲットは?」と聞くと、「正社員のほか、契約社員、内定者などにも配っています」と配布対象を挙げる担当者もいます。
 確かに社内報は全従業員に広くあまねく情報を発信する機能があります。ターゲットを設定しにくいことは理解しますが、成果創出のためには、「メインターゲット」を設定した方がよいでしょう。「ターゲット」は全従業員だったとしても、特に意識するのは誰かという「メイン」を設定します。若手、中堅、管理職などの役職や、現場の営業担当者、製造部門の従業員といった部署を、できるだけ具体的にイメージしましょう。ターゲットが明確になると、あらゆる企画を考えやすくなります。

▼(3)何を

 社内報で、日々の動きを共有しているだけでは、従業員エンゲージメントの構築にはつながりません。情報共有に意義はありますが、より戦略的に経営機能として社内広報活動を行うために、「何を」を考えましょう。
 まずは「注力テーマ」を棚卸しすることをお勧めします。注力テーマとは、「経営理念」「ダイバーシティ」「働き方改革」「SDGs」「創業○周年」「経営トップの変更」など、社内外の環境変化のトピックスをイメージすると考えやすいでしょう。
 棚卸しした注力テーマについて、それぞれ具体的にどのような情報を発信できるのかを落とし込んで考えましょう。テーマそのものの優先順位が高くても、弾が足りなければ武器になりません。テーマの重要度と発信可能な情報量の2つから、「何を」を決めます。

▼(4)どうやって

 媒体全体の企画において、「どうやって」では「編集方針」を大切にしてください。編集方針は発行目的を実現するアプローチをまとめたもので、実務担当者にとってはあらゆる判断のよりどころとなります。気持ちを込めて自分たちなりのものを作成しましょう。
 編集方針には、大きく2つのパターンがあります。
 1つは、社内報として目指す姿を明文化するパターン。たとえば、「従業員に役立つ社内報にする」「職場で会話が発生する社内報にする」などです。もう1つは、文字通り制作上の指針を明文化するパターンです。「多くの従業員を載せる」「入社3年目までの従業員でも理解できる表現にする」などです。
 発行目的が毎年変わることはありませんが、編集方針は制作上の指針ですので、できれば毎年見直したいものです。編集方針のほかに、発行・配信頻度、月間・年間計画などを明確にしましょう。月間・年間計画は、テーマ部署のバランスを意識してまとめておきます。
 冊子の場合は、各号の「台割」も必要です。台割は、冊子の全体構成です。台割を決める場合は、それぞれの企画の情報量の軽重だけでなく、内容の硬軟についても、バランスを考慮しましょう。硬い内容ばかりでは心理的に避けられてしまう場合があります。

個別の特集・記事の企画で大事にしたいこと

 次に、個別の特集・記事の「企画」について、社内広報担当者に求められる視点・行動を紹介します。
 企画のパターンは、主に特集、連載、定番企画に分かれます。特集は情報量が多く、複数の要素で構成することが一般的です。連載は、(1)情報量が多いため複数回に分けるタイプ(例:コンプライアンス基礎を全3回で紹介)、(2)同一の切り口で、毎号別の情報を発信するタイプ(例:部署紹介)があります。定番企画は、(1)特集に近い季節モノ(例:新入社員、表彰)、(2)連載とはいいにくい定型コーナー(例:入社・定年情報)があります。
 また、手法のパターンとして、「インタビュー」「リポート(取材記事)」「対談・座談会」「寄稿」などがあります。
 これらのジャンル、手法のパターンを問わず、必ず意識したい視点・行動をまとめます。


▼(1)読後感を設定する

 個別の特集・記事では、情報に接した読者(従業員)の「読後感」を設定しましょう。担当者側の視点からいえば、読んだあとに従業員にどのような感情や態度の変化を期待しているのかを明確にしたゴールが読後感です。
 読後感は個別の企画・記事の「なぜ」と「誰に」を包括したものです。複数あってもかまいませんが、種別が異なるものを設定してしまうと、「何を」「どうやって」もあいまいになってしまいます。
 たとえば、「新しい経営方針の浸透」を題材とし、経営方針を浸透させたいターゲットが「現場の中核を担っている職場リーダークラス」だったとしましょう。考えられる読後感は、職場リーダーが「経営方針について納得できた」、あるいは「新しい経営方針の実践によって会社も自分もメンバーも成長できそうと感じた」などです。
 前者の読後感であれば、新しい経営方針の全文、経営者の想い、現在の経営状況、この方針が必要な背景事情(課題)など、納得感につながる要素が必要だと考えやすくなります。
 一方、後者の読後感であれば、経営方針の考え方に沿った実践事例、似た考え方で成長している他企業など、成長をイメージできる要素が必要だと考えやすくなります。
 読後感によって掲載要素や表現が変わるので、具体的なものにし、かつ、できる限り絞り込みましょう。

▼(2)掲載要素を考え抜く

 企画の出来不出来は、「掲載要素」の取捨選択の適切さに左右されます。先ほどの「新しい経営方針」の例でも、読後感に応じてさまざまな掲載要素が考えられました。
 掲載要素を考え抜くことは意外と難しいものです。アイデアを柔軟に発想できるタイプの人にとっては苦でないようですが、取っ掛かりがないとイメージしにくい人もいます。掲載要素についてうまく棚卸しができない人は、「視座」「視野」「視点」を意識してみましょう。
 視座とは、どの高さからものごとを見るかです。たとえば、個人、職場、会社、社会の4つ。これはものごとを見る高さが変わります。「新しい経営方針」1つ取っても、この4つの視座を意識すると、さまざまな掲載要素の候補が浮かんでくるはずです。
 視野は、ものごとを見る範囲のことで、時間軸・空間軸を指します。時間軸は過去・現在・未来。空間軸は本社・拠点・国内全体・海外全体などです。
 視点は、ものごとのどこを見るか。情報が1つのハコだと考え、側面をイメージしましょう。前の側面は光が当たる明るいポジティブなこと、後ろの側面は光が当たらないネガティブなことなど。情報は見るところによって変わるので、まずはポジティブ・ネガティブを考えてみましょう。
 また、視点は、「どこを見るか」と別に、「誰から見るか」という考え方もあります。たとえば、同じ情報でも、入社1年目の新入社員と、管理職では必要な情報の要素が違います。
 このように、個別の特集・企画では、まず掲載要素の候補を棚卸しして、テーブルの上に並べましょう。

▼(3)掲載要素を絞り構成を練る

 洗い出した掲載要素は、従業員目線で絞り込みます。特集であれば多くの掲載要素があると企画に厚み・深みが出ます。あまりにも要素が多く絞り込めない場合は、複数回に分けるなど連載型を検討します。
 それぞれの掲載要素のボリューム感を決めて、ページの構成に落とし込みます。構成がしっかりしていれば、従業員に伝わりやすくなります。


※『月刊総務』2020年10月号総務のマニュアル「テレワークでもエンゲージメントを高める 社内広報活動のポイント」CHAPTER3を一部改変して掲載



●執筆者プロフィール
株式会社タンシキ 代表取締役 秋山和久
媒体側(記者)、受注側(PR 会社、広報コンサル)、発注側(広報実務)をすべて経験。豊富な知見から、マスコミ向け広報はもちろん、社内広報、危機管理、ホームページ等の広報ツール、あるいは広報部門の新設・再編まで幅広く、企業・大学・自治体の広報活動をサポート。2016年6月から現職。『月刊総務』の「総務の引き出し(広報)」の執筆を担当。