総務のマニュアル : 基礎知識から現場対応まで。大人の発達障がいへの配慮と職場づくりガイド

なぜ部下のミスが減らない? 叱る前に知りたい大人の発達障がい:起こりがちなつまずき2パターン

不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック 院長 飯島 慶郎
最終更新日:
2026年11月09日
202610m_00

近年、「大人の発達障がい」という言葉が広く認知され、企業からの相談件数は着実に増えています。しかし、これは決して「急に発達障がいの人が増えた」わけではありません。発達障がいへの理解が社会的に広まり、医療機関を受診する機会が増えたことが一因です。さらに大きな理由として、現代の職場環境がより複雑で迅速さを求められるようになった点が挙げられます。「決まった作業に集中していれば評価された」時代とは異なり、現代の職場では多様なITツールを扱い、複数の業務を並行して進めながら暗黙の了解をくみ取ることが求められます。その結果、従来の環境では埋もれていた個人の得手不得手の差が、業務上のトラブルとして表面化しやすくなっているのです。
そこで本企画では、職場における発達障がいへの配慮について基本の理解から現場の具体策、組織の体制整備までを4回に分けて解説します。

総務窓口に持ち込まれる「現場の悲鳴」

企業の総務や人事・労務の窓口に、現場の管理職や同僚から相談が持ち込まれるとき、最初から「部下が発達障がいの診断を受けたので対応に困っている」という明確な形で始まることはほとんどありません。実際に総務担当者が直面するのは、以下のような現場の切実な悲鳴や、進行した不調のサインです。

  • 何度注意しても書類のケアレスミスや入力漏れが減らず、周囲のチェック負担が増えてチーム全体が疲弊している
  • 進捗を聞くと「大丈夫です」と答えるのに、締め切り直前になって全く手を付けていないことが発覚する
  • 急に遅刻や休みが増え、表情が暗くなり、体調不良や不眠を訴えて出社できなくなってしまった
  • 仕事のやり方を指導すると、急にかたくなになって言いわけを始めるか、黙り込んで会話が成り立たない

総務担当者が最初に出合うのは、本人の生まれつきの特性そのものではなく、職場環境とのズレによって引き起こされた「二次的なメンタル不調(抑うつや不安)」や「業務上のトラブル」「周囲の社員の疲弊」です。

どこで引っかかっているのか? 職場で現れる「2つのつまずきパターン」

職場で「ミスが減らない」「指示が通らない」といった問題が起きたとき、現場ではまず「本人のやる気や性格の問題」「努力不足」として捉えられがちです。しかし、注意や叱責しっせきを繰り返してもいっこうに改善せず、本人も上司も疲弊してしまうケースがあとを絶ちません。

一方で「もしかして発達障がいではないか?」という疑いが生じた場合でも、「医師の診断書がないと会社として配慮できない」「医療機関で確定診断がつかないと対応方針が立たない」と、診断の有無ばかりに目が向いて、現場の対応が手詰まりになるケースも少なくありません。

しかし現場の実務において、診断名や診断書の有無にこだわりすぎる必要はありません。総務や管理職は医師ではないため社員を診断する立場にはなく、仮に診断名がわかったとしても「具体的な対応策が自動的に決まる」わけではないからです。同じ診断名であっても、得手不得手の現れ方は一人ひとり全く異なります。

総務担当者が現場を支える上で真に役立つ視点は、診断の有無で苦慮することではなく「仕事のどの段階で、どのようなつまずきが起きているか」という観察可能な行動から捉え直すことです。

職場で起きるつまずきは、大きく「『入力・理解』のつまずき(ASD特性)」と「『注意・行動』のつまずき(ADHD特性)」の2つのパターンに分けて整理できます(図表1)。

図表1:職場で起きるつまずきの2つのパターン

図表1:職場で起きるつまずきの2つのパターン

それぞれのパターンについて、現場でどのようなことが起きているのかを見ていきましょう。

(1)「入力・理解」でつまずくケース(ASD傾向)

続きは「月刊総務プレミアム」会員さまのみ、お読みいただけます。

  • 実務や法改正の解説など、情報価値の高いWEB限定の有料記事が読み放題
  • デジタルマガジンになった『月刊総務』本誌が読み放題
  • 『月刊総務』本誌を毎月の発売日にお届け
  • 当メディアが主催する総務の勉強会や交流会などのイベントにご優待
  • スキルアップに最適なeラーニングコンテンツが割引価格に

※掲載されている情報は記事公開時点のものです。最新の情報と異なる場合があります。

プロフィール

y-iijima

不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック 院長
飯島 慶郎

精神科医・心療内科医・臨床心理士。2002年島根医科大学卒。総合診療・地域医療に従事し、2012年から2022年まで浜田市消防本部の嘱託産業医を務めた。2018年、不登校/こどもと大人の漢方・心療内科を掲げて開業。公認心理師、産業カウンセラー、日本医師会認定産業医。著書に『不登校は病気?〜医師の診断が子供と家族を救う〜』(みらいパブリッシング)ほか。

関連記事

  • 東京都、契約後手続きのデジタル化を推進 全対象案件で「東京都契約請求システム」の利用を目指す PR
  • 社宅需要の増加で膨らむ総務の負担を8割削減へ 変化するニーズに対応する管理代行の選び方とは PR
  • 手軽に始められる健康経営施策 「Vivoo」で食習慣を見える化、行動変容を促進 PR

特別企画、サービス