なぜ部下のミスが減らない? 叱る前に知りたい大人の発達障がい:起こりがちなつまずき2パターン
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近年、「大人の発達障がい」という言葉が広く認知され、企業からの相談件数は着実に増えています。しかし、これは決して「急に発達障がいの人が増えた」わけではありません。発達障がいへの理解が社会的に広まり、医療機関を受診する機会が増えたことが一因です。さらに大きな理由として、現代の職場環境がより複雑で迅速さを求められるようになった点が挙げられます。「決まった作業に集中していれば評価された」時代とは異なり、現代の職場では多様なITツールを扱い、複数の業務を並行して進めながら暗黙の了解をくみ取ることが求められます。その結果、従来の環境では埋もれていた個人の得手不得手の差が、業務上のトラブルとして表面化しやすくなっているのです。
そこで本企画では、職場における発達障がいへの配慮について基本の理解から現場の具体策、組織の体制整備までを4回に分けて解説します。
総務窓口に持ち込まれる「現場の悲鳴」
企業の総務や人事・労務の窓口に、現場の管理職や同僚から相談が持ち込まれるとき、最初から「部下が発達障がいの診断を受けたので対応に困っている」という明確な形で始まることはほとんどありません。実際に総務担当者が直面するのは、以下のような現場の切実な悲鳴や、進行した不調のサインです。
- 何度注意しても書類のケアレスミスや入力漏れが減らず、周囲のチェック負担が増えてチーム全体が疲弊している
- 進捗を聞くと「大丈夫です」と答えるのに、締め切り直前になって全く手を付けていないことが発覚する
- 急に遅刻や休みが増え、表情が暗くなり、体調不良や不眠を訴えて出社できなくなってしまった
- 仕事のやり方を指導すると、急にかたくなになって言いわけを始めるか、黙り込んで会話が成り立たない
総務担当者が最初に出合うのは、本人の生まれつきの特性そのものではなく、職場環境とのズレによって引き起こされた「二次的なメンタル不調(抑うつや不安)」や「業務上のトラブル」「周囲の社員の疲弊」です。
どこで引っかかっているのか? 職場で現れる「2つのつまずきパターン」
職場で「ミスが減らない」「指示が通らない」といった問題が起きたとき、現場ではまず「本人のやる気や性格の問題」「努力不足」として捉えられがちです。しかし、注意や叱責を繰り返してもいっこうに改善せず、本人も上司も疲弊してしまうケースがあとを絶ちません。
一方で「もしかして発達障がいではないか?」という疑いが生じた場合でも、「医師の診断書がないと会社として配慮できない」「医療機関で確定診断がつかないと対応方針が立たない」と、診断の有無ばかりに目が向いて、現場の対応が手詰まりになるケースも少なくありません。
しかし現場の実務において、診断名や診断書の有無にこだわりすぎる必要はありません。総務や管理職は医師ではないため社員を診断する立場にはなく、仮に診断名がわかったとしても「具体的な対応策が自動的に決まる」わけではないからです。同じ診断名であっても、得手不得手の現れ方は一人ひとり全く異なります。
総務担当者が現場を支える上で真に役立つ視点は、診断の有無で苦慮することではなく「仕事のどの段階で、どのようなつまずきが起きているか」という観察可能な行動から捉え直すことです。
職場で起きるつまずきは、大きく「『入力・理解』のつまずき(ASD特性)」と「『注意・行動』のつまずき(ADHD特性)」の2つのパターンに分けて整理できます(図表1)。
図表1:職場で起きるつまずきの2つのパターン
それぞれのパターンについて、現場でどのようなことが起きているのかを見ていきましょう。
(1)「入力・理解」でつまずくケース(ASD傾向)
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