総務のキホン

有給・無給? 土日はどうする? 総務が知りたい「慶弔制度」の運用ポイント

寺島戦略社会保険労務士事務所 社会保険労務士 寺島 有紀
最終更新日:
2026年10月22日
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総務担当者が知っておきたい制度や業務について、意味や法律上の扱い、会社・総務が対応すること、実務上の注意点を基本から解説する新連載「総務のキホン」。第1回は「慶弔休暇」を取り上げます。
結婚や家族の不幸など、私たちの人生にはときに大きなライフイベントが起こります。こうした慶事・弔事にまつわるライフイベントが起こった際に付与される特別休暇は一般的に「慶弔休暇」と呼ばれています。
慶弔休暇は、多くの企業で導入されていますが、労働基準法で保障されている年次有給休暇などと異なり、法律で付与が義務付けられているものではありません。そのため、制度の有無もそうですが、その内容も企業によってそれぞれ異なります。
本稿では、この慶弔休暇の基本的な位置付けと、制度設計・運用上のポイントを解説します。

慶弔休暇の基本的な仕組みと企業が押さえておきたい知識

慶弔休暇とは、結婚や出産、家族の死亡といった大きな慶弔事由が発生した場合に、会社が一定期間休暇を取得することを認める制度です。

慶弔休暇は、年次有給休暇や生理休暇、育児・介護休業法に基づく看護等休暇や介護休暇等とは異なり、法律上会社に義務付けられている制度ではありません。そのため、そもそも自社で制度を導入するかどうか、また、どのような事由を対象とするか、何日付与するか、有給とするか無給とするか等の制度の概要は会社が決定できます。

一方でもし慶弔休暇を導入する場合、「休暇」は労働基準法上、就業規則に記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)の一つであるため、決定した慶弔休暇の内容は就業規則に規定していくことが必要です。

慶弔休暇の制度設計で決めておくべき事項と就業規則への規定方法

慶弔休暇を導入する場合は、少なくとも次の事項を明確にしておくことが重要です。

(1)対象となる慶弔事由と親族の範囲

自社で対象となる慶弔事由を決定することになります。一般的に、慶弔休暇では次のような事由での取得を認める企業が多くなっています。

  • 本人・子の結婚に伴う結婚休暇
  • 配偶者の出産に伴う休暇
  • 配偶者、父母、子などが死亡した場合の忌引休暇

なお、昨今結婚の形も多様化しており、事実婚や同性パートナーとの婚姻に相当する関係等もあります。地方自治体や大企業等でもこれらの関係は法律婚と同等に扱う動きが広がっていますが、自社でも対象をどこまでとするのかを事前に整理しておくと、いざこうした申請があった際にも迷わずに済みます。

また、結婚休暇についてたとえば入社前に入籍、挙式した場合を取得除外事由としたい場合には、明示的にその旨も就業規則に入れておく必要があります。

忌引休暇については、一般に、配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、配偶者の父母などを対象とします。対象範囲が広い会社でもおおよそ2親等までを対象としているところが多い印象です。なお、父母や子については「養父母」「養子」を含めるか等も会社ごとに異なります。

(2)付与日数と日数の数え方

対象事由ごとに何日付与するかを決める必要があります。たとえば、本人の結婚は5日、配偶者・父母・子の死亡は5日、祖父母・兄弟姉妹・配偶者の父母の死亡は2~3日といった設計は一般的ですが、これらはあくまで一例です。

また、実務で意外と盲点となるのが、「暦日」で数えるのか「所定労働日」で数えるのかという点です。暦日で3日とした場合、金曜日から取得すると土曜日と日曜日も日数に含まれます。一方、所定労働日で3日とすれば、通常は翌週の火曜日まで休めることになります。単に「3日」とだけ規定すると、個々人によって認識がずれやすいため、就業規則には数え方を明記することをお勧めします。

また、連続取得を原則とするか、分割取得を認めるかといった論点もあります。特に本人の結婚休暇の場合、一般的には新婚旅行といったまとまった日数での取得を想定した制度とし、分割で付与することは会社の方針となじまないという考えもあります。こういった場合には就業規則にも「原則として、連続取得とする」のようなルールを入れておく必要があります。

(3)取得可能期間と起算日

たとえば結婚休暇については、入籍日、挙式日など、どの日を基準とするかが問題になります。最近では、入籍から挙式まで期間が空くケースも多いため、「入籍日または挙式日のいずれかから1年以内」など、取得可能期間に幅を持たせる方法もあります。

忌引休暇についても、休暇の性質上死亡日から30日以内を取得可能期間とするといったルールを入れる企業もあります。

(4)有給・無給と賃金の取り扱い

慶弔休暇を有給とする義務はなく、無給とすることも可能です。有給とする場合には、「所定労働時間勤務した場合に支払われる通常の賃金を支給する」など、賃金の計算方法を明記します。

また、そもそもの慶弔休暇の趣旨上、たとえば慶弔休暇取得日を欠勤扱いとしないことや、賞与査定、人事評価などでマイナスの評価をしないといった企業が多いですが、こうした影響についても、整理しておく必要があります。

実務で「入社間もない方の結婚休暇が有給で取得されるのは違和感がある」というような企業の場合には「結婚休暇は勤続6か月以上の者のみ取得できる。但し、勤続6か月未満の者でも、無給で取得することはできる。」のような立て付けとし就業規則内に記載しておくことも多いです。

(5)対象となる従業員

同一労働同一賃金ガイドライン上、慶弔休暇については不合理な差別の禁止対象に記載されており、「短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の慶弔休暇の付与(中略)を行わなければならない」ことになっていることには注意が必要です。

ただ、同ガイドライン上問題とならない例として「A社においては、通常の労働者であるXと同様の出勤日が設定されている短時間労働者であるYに対しては、通常の労働者と同様に慶弔休暇を付与しているが、週2日の勤務の短時間労働者であるZに対しては、勤務日の振替での対応を基本としつつ、振替が困難な場合のみ 慶弔休暇を付与している」といった例が列挙されていることは一つポイントです。

つまりは、簡単にいえば、週5日勤務の正社員はそもそも勤務日を振り替える余地がないため慶弔休暇を付与する必要性はありつつ、週1日勤務のパート・アルバイトについては、慶弔事由があった場合でも、勤務日での振り替えが週5勤務の正社員と比較すれば容易と考えられるため、基本は振り替えでの対応としつつ難しい場合のみ慶弔休暇付与ということも許されていると解釈できます。

またダイレクトに同ガイドラインには記載はないものの、たとえば週5日の正社員を前提として5日の慶弔休暇を有給付与している場合、所定労働日が週1日の有期雇用者にも5日を付与するということではなく、年次有給休暇の比例付与のように、所定労働日数の差に応じて、5分の1として、1日の慶弔休暇を有給付与という設計であれば、所定労働日数に応じた均衡がとれており、合理的な待遇差の範囲といえると考えています。

◆就業規則イメージ
第〇条 (慶弔休暇)
従業員が次の各号のいずれかに該当するときは、本人の請求によりそれぞれ定める日数の慶弔休暇を与える。但し、週所定労働日数が5日未満でありシフト等で労働日が調整できる者については原則として本条文に定める日数を按分付与するものとする。

  事由 日数
1 本人が結婚するとき 連続5日以内
2 子が結婚するとき 連続2日以内
3 配偶者が出産するとき 連続2日以内
4 本人の父母、配偶者、子女が死亡したとき 連続5日以内
5 配偶者の父母が死亡したとき 連続3日以内
6 本人の祖父母、兄弟姉妹、孫が死亡したとき 連続2日以内
7 子の配偶者・兄弟姉妹の配偶者・配偶者の祖父母・配偶者の兄弟姉妹が死亡したとき 連続2日以内
8 その他前各号に準じ、会社が必要と認めた場合 認めた日数

(2)前項の「配偶者」には、法律上の婚姻関係にある者のほか、婚姻の届出をしていないものの、事実上婚姻関係と同様の事情にある者(同性パートナーを含む。)をいい、「父母」には実父母のほか養父母を含むものとする。
(3)第1項第1号の特別休暇は、入社後に入籍した場合を対象とし、勤続6か月以上の者のみ取得できる。但し、勤続6か月未満の者でも、無給で取得することはできる。
(4)第1項第1号及び2号の特別休暇を請求する場合には、少なくとも1か月前までに所定の方法で申請の上会社の承認を得なければならない。第3号以降については可能な限り速やかに承認を得るよう努めなければならない。
(5)本条に定める特別休暇は有給とし、通常の賃金を支払う。
(6)【暦日ベースの場合】特別休暇の日数には介在する休日を含むものとする。【所定労働日ベースの場合】特別休暇の日数には介在する休日は含まないものとする。
(7)結婚休暇は入籍日より1年経過した後、忌引休暇は死亡日から30日を経過した後は権利が消滅するものとする。
(8)会社は、慶弔休暇の申請に際し、慶弔事由の発生および申請者と対象者との関係を確認するため、必要かつ合理的な範囲で証明書類の提出を求めることがある。

慶弔休暇の申請・取得時に押さえておきたい実務上の注意点

慶弔休暇は結婚休暇を除き、突発的な申請が多いため、通常の休暇よりも柔軟な運用が求められます。特に忌引休暇については、事前申請を絶対条件とせず、まずは口頭や電話やメール、チャット等での簡易的な連絡を認め、正式な申請は事後でも可能としておくことも現実的です。

証明書類についても、会葬礼状、葬儀案内、死亡届の写しなどを求めることはできるものの、本人にとって過度な負担とならないよう必要最低限にとどめることが無難です。会社として虚偽申請が心配という気持ちはわかりますが、そもそも慶弔休暇については人生において何度も起きるような事案ではないため、短期間に何回も申請が繰り返されるような場合等疑わしい場合に証明書類を提出させる余地は残しつつ、通常は厳しく提出を求めるというような運用はあまりなされていない印象を持っています。

また、慶弔休暇と年次有給休暇は別の制度です。年次有給休暇は従業員の申請に基づいて取得がなされるものであり、会社が本人の許可なく慶弔休暇の日を一方的に年次有給休暇として処理することはできません。特に、無給の慶弔休暇を設けている場合に、従業員が年次有給休暇の取得を希望することは考えられるものの、申請がないにもかかわらず一律に年次有給休暇として処理するような運用は避け、申請時にどちらを利用するのか確認する運用が適切です。

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プロフィール

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寺島戦略社会保険労務士事務所 社会保険労務士
寺島 有紀

一橋大学商学部卒業後楽天株式会社に入社。国内・海外子会社の社内規程管理、内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。現在はスタートアップから上場企業まで労務顧問、IPO労務コンプライアンス整備、M&Aの労務DD・PMI対応、海外進出労務体制構築等、幅広く人事労務コンサルティングを行っている。
著書に『意外にしらない?!最新働き方のルールブック(アニモ出版)』等多数

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