コーポレート部門の経営課題は「専門」人材の不足 戦力補充は採用だけでは不足? 民間調査

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デロイト トーマツ グループ(東京都千代田区)は6月4日、「コーポレート部門の課題」に関する調査結果を公表した。
人材不足やDX・AI活用がコーポレート部門でも経営課題であり、単純な人手不足ではなく、専門人材の不足が課題の背景にあることが調査結果からは浮かび上がった。
コーポレート部門の経営課題は「人材育成・人材確保」「DX・AI活用」
調査は従業員500人超の国内企業の経営企画・総務・法務・人事などコーポレート部門従事者2500人が対象。コーポレート部門の経営課題は「人材育成・人材確保」(40.1%)が最も多く選ばれ、2番めには「DX・AI活用」(38.9%)が続いた。
こうした傾向は企業の上場・非上場の違いや売上規模にかかわりなく、共通の課題となっていた。
経営課題に対応するため、コーポレート部門が果たすべき役割としては、「業務の効率化」(40.7%)が最も多く、「事業部門との連携」(24.5%)、「新技術への対応」(24.0%)、「経営層への提案・提言」(20.8%)と続いた。

役割を果たすことへの障害となっているのは、「社内リソース不足」を44.0%の人が挙げている。
「社内リソース不足」の内訳は、「人手・人材不足」(32.2%)と「社内人材育成がうまくいかない」(24.2%)が上位に挙がった。さらに、「新技術への対応」では、「知識不足」が障害となると挙げた割合が44.5%で、ほかの役割と比べて高い傾向となった。
人材不足の理由は「必要なレベル・スキルを持った人材の採用ができない」(43.4%)、「専門人材が少ない」(40.0%)が最も高い結果となり、単純な人手不足ではなく、専門人材が不足していることが背景にあることがわかった。

解決方法としては、「経験者採用を強化する」(51.3%)、「ポテンシャル層を採用し、育成する」(37.1%)が多く、「同業他社との協力」(20.1%)、「海外、国内企業への外部委託」(18.0%)といった項目は一定程度にとどまった。
また、人材不足の解決方法として「パートナー企業や外部ベンダーなどへの外部業務委託を行っているか」については、「外部業務委託を現在行っており、今後も拡大する方針」との回答は29.0%にとどまった。
同社は「日本では特に専門人材の不足が課題であるものの、解決方法が人材採用に偏っており、外部連携や外部委託にはいまだ積極的に取り組めていない」とコメントしている。
野村総研、専門人材獲得・育成のための制度設計を紹介
専門人材の獲得・育成について、「画一的な仕組みで対応することには限界がある」として、野村総合研究所(東京都千代田区)が専門人材向けの人事制度を紹介している。
各社が求める専門性の内容や要員規模に応じて、制度の設置が必要かどうかも含めて、各社に適した仕組みが異なるとし、「専門人材向けの新たな制度設計」が必要な場合の3つのパターンを示している。

また、いずれのパターンでも職種を新設する場合は、以下の手順が必要としている。
- 対象となる専門性領域を明確にする
- 対象となる専門性のレベル要件を考慮して等級要件や評価基準を策定する
- 市場の報酬水準と既存社員とのバランスを参考に報酬の水準や支払い方を検討する。
その上で、野村総研は「人事部だけでなく専門人材が活躍する事業部門との協業で設計することが望ましい」としている。
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