市街地にも潜む「クマ」リスク。BCP視点の備えは? 総務が知るべき3つの警戒レベル別対応ガイド

BCP策定・気候リスク管理アドバイザー、文筆家 昆 正和
最終更新日:
2026年09月18日
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「クマの出没」や「クマの被害」は、以前は山間部での問題でしたが、ここ数年は住宅地や市街地など、人間の生活圏での脅威が高まっています。「山の餌が不足しているから里に下りてきた」というだけではありません。その背景には、狩猟が減ったことによるクマの個体数の増加や、山村部の人口減少と耕作放棄地の増加、平地は食べ物を得やすいと学習したクマが増えていることなど、実にさまざまな要因があるのです。
これらはいわば構造的な問題であり、一朝一夕には解決できそうにありません。人の生活圏でクマとニアミスが起こる状況は、今後もしばらく続くことでしょう。もちろん一般住民だけの問題ではなく、企業もまた、従業員の通勤や外出、屋外作業、事業所周辺などでの遭遇を想定し、平時から備えておくことが重要になります。クマ対策は一時的な注意喚起ではなく、従業員や訪問者の安全を守るための継続的なリスク管理として取り組むことが肝要です。

企業活動に及ぶクマ出没リスク

2025年はクマの出没件数が5万件を超え、人身被害者数は238人と、過去最多となりました。東京商工リサーチが2025年12月に実施した「クマ出没と企業活動への影響」調査では、「クマ出没の影響が出ている」と回答した企業は少なくありません。

調査で最も多かったのは「従業員への周知・啓蒙に迫られた」で47.0%。次いで「被害防止のための投資が必要になった」が27.5%でした。そのほか、「イベントの延期・中止」「訪問の取りやめ」「来客・受注の減少」「郵便・配送への支障」など、業務そのものに影響する回答も寄せられています(図表1)。

図表1:個々の企業から寄せられた具体的な事例

県名 業種 企業規模 クマ被害・影響の内容
秋田県 サービス業 中小企業 従業員が学校の送り迎えをするため勤務時間中に離席
秋田県 飲食料品小売業 中小企業 従業員が出勤不可となった
山形県 飲食料品卸売業 中小企業 クマによる食害
山形県 卸売業 中小企業 クマの被害の修繕
長野県 農業 中小企業 電気牧柵による防衛
長野県 その他の小売業 大企業 対策グッズの用意
群馬県 道路貨物運送業 中小企業 従業員がクマに襲われた
静岡県 建築材料等卸売業 中小企業 パトロール・点検作業などを複数人体制とした
出所:東京商工リサーチ 「TSRデータインサイト」の情報を基に筆者が作成

今日のクマ騒動は、従業員の出勤、勤務体制、施設管理、顧客対応、物流など、企業活動のさまざまな部分に波及する深刻な問題であることが見て取れます。

総務が平時から取り組むべき予防策

こうした事態に対し、総務部門は、どのような役割を担えばよいのでしょうか。そのポイントは、平時から自社にとってのクマ出没リスクを把握し、クマを寄せ付けない環境と、出没しても混乱しない仕組みをつくっておくことです。

まず、事業所周辺の環境や従業員の活動エリアを確認すること。「当社の事業はどのあたりがクマとの接点になりやすいか」を把握すること。雑木林や河川敷は、クマが人に見つからずに移動する手段となります。事業所周辺だけでなく、従業員の通勤経路、営業先、工場・倉庫、屋外作業場所なども含め、クマと遭遇する可能性のある場所を洗い出しておきます。

次は、クマを誘引するものやクマが身を隠しやすい環境を取り除くこと。柿などの果樹、ペットフード、コンポスト、家庭菜園の作物、夜間に出されたごみなどは誘引物となります。企業においても、生ごみや食品の残りかす、廃棄物などの保管方法を点検し、クマに荒らされにくい管理方法を検討します。敷地内に草木が密に生えていればせんていし、見通しを良くしておきましょう。

そして、従業員への周知方法を決めること。出没情報をどこで確認するのか、クマを見かけた場合に誰に連絡するのか、屋外作業の是非をどう判断するのかなど、基本的なルールをあらかじめ決めておきます。特に、クマの目撃情報のあるエリアで仕事をする従業員には、単独行動を避ける、クマ鈴を携帯するなど、地域の実情に応じた安全教育を行います。

警戒レベル別に考える対応

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プロフィール

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BCP策定・気候リスク管理アドバイザー、文筆家
昆 正和

マルチハザードBCP策定/気候変動リスク対策・適応策に関するアドバイス・講演・執筆活動に従事。一般社団法人日本リスクコミュニケーション協会理事。BCP・BCM・レジリエンス・登山に関する著書14冊。国際的な事業継続マネジメントの専門家組織、英国BCI(Business Continuity Institute)の公式Webサイトへの寄稿実績あり(2026年)。オンライン媒体や雑誌の連載など多数。趣味は登山と読書。著者のnoteはこちら

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