2018年のDXレポートにおいては「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開が盛り込まれていた。コロナ禍を踏まえた2020年の「DXレポート2」にはデジタル変革を加速させる政策の方向性などが示されている。そして今年、経済産業省は新たに「DXレポート2.2」を発表。最初のレポートから今日に至る日本企業の動きと課題について、同省の和泉憲明さんに解説してもらった。
「デジタル」ばかりに着目し変革までに至っていない現状
経済産業省が2018年に出した「DXレポート」は、日本企業に衝撃を与えた。そこに記された「2025年の崖」は日本企業が近々に直面する危機として注目され、DX(デジタルトランスフォーメーション)は加速するかに思われた。
静岡大学情報学部助手、産業技術総合研究所サイバーアシスト研究センター研究員、同研究所情報技術研究部門上級主任研究員などを経て2017年8月より経済産業省商務情報政策局情報産業課企画官。2020年7月より現職。博士(工学)(慶應義塾大学)。
あらためて当時のレポートを紹介すると、まず既存システムが複雑化・ブラックボックス化している企業は、早急に業務自体を見直して経営改革に乗り出さなければならないと警鐘を鳴らしている。ブラックボックス状態を解消できず、全社横断型のデータ活用ができない場合は、市場の変化に対応できずにデジタル競争に敗れる、レガシーシステムの維持管理費がかさんでIT予算の9割以上を占める、さらに保守運用の担い手不足で事故・災害によるシステムトラブルやデータ滅失などのリスクが高まってくる。このような結果予測に基づき、2025年以降は最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるとした。これが2025年の崖だ。経済産業省の和泉憲明さんが補足する。
「このレポートで訴えたのは、企業はモノ(物理)中心のビジネス構造から脱却し、デジタル(サイバー)中心の経営・ビジネスへ転換すべきだということでした。モノを中心に最適化された事業は、ヒトの流れや物流に左右されます。ここ数年でコロナ禍によりヒトの流れは制限され、ウクライナとロシアの戦争が物流に影響していますが、こうした外的な要因の影響を強く受けるのです」
すでにデジタル中心のビジネスに移行済みの海外の事業者は、日本の人々のアクセス履歴や購買履歴をデータとして入手・活用している。結果、貴重な情報が海外に流れ出てしまっている状況だ。だからこその警鐘であり、レポートではDXの「放置シナリオ(失敗)」と「実現シナリオ(成功)」の両方を描いてみせ、できるものからDXを実施すべしと説いた。その結果がどう出たのかというと、和泉さんは、「DXという用語が独り歩きしてしまった」という。
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