2018年のDXレポートにおいては「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開が盛り込まれていた。コロナ禍を踏まえた2020年の「DXレポート2」にはデジタル変革を加速させる政策の方向性などが示されている。そして今年、経済産業省は新たに「DXレポート2.2」を発表。最新レポートの意図について、同省の和泉憲明さんに解説してもらった。
最新レポートの目玉はデジタル産業宣言
今春、「DXレポート2.2」が新たに公表された。DXレポート2.1までに提示されたデジタル産業へのステップアップを加速させるべく新設した「デジタル産業宣言」を核に、企業の事例も紹介している。
和泉さんは、「デジタル産業宣言」というアイデアのもとになっているのは、「アジャイルソフトウェア開発宣言」(図表)だと説明する。これは2001年、アメリカで17人のソフトウエア開発者たちが発表したもので、既存の開発プロセスとは異なった、彼らがソフトウエア開発を行う上で重要視している4つの価値と12の原則が書かれていた。
この価値観はエンジニアから多大な支持をされ、アジャイル開発という言葉は流行語にもなり、さらにはエンジニア一人ひとりが信念を持ってビジネスのブランディングを目指す大きなうねりとなったのだ。
今回新設した「デジタル産業宣言」も、気概ある経営者たちがともに掲げる共通理念になることが望まれる。
「これは認定制度ではなく、理念に共鳴する人々は誰でも自由に宣言していただいてかまいません。税制上の優遇や助成金のようなインセンティブはありませんが、宣言した方は経済産業省のホームページに名前を掲載しようと考えています。『デジタル産業宣言』の下、同志が見つかることが最大のインセンティブになるのではないでしょうか。そうして業界を横断して、志の高い人同士がつながっていくことこそが、日本のデジタル産業化を加速させると信じています」
DXの本質は新たな高収益ビジネスを創出し続けることにこそあるとし、その先にあるデジタル産業の実現に向けて発せられた宣言は、5つの柱から成る。
- ビジョン駆動
- 価値重視
- オープンマインド
- 継続的な挑戦
- 経営者中心
である。
「北極星となる自らのビジョンにどうアプローチするかが行動原則になります。また、大切にすべきはいくらで作るかよりも、いかに良いものを作るかであり、もはや自社だけでは時流に追いつけないので、オープンに社外とつながって、エコシステムを目指すマインドセットが欠かせません。PoC貧乏に陥らないためには、作っては捨てるというサイクルから抜け出し、ビジョンに向かって試行錯誤しながらも着実に前進していきます。これは無論、持続する意志を貫けるだけの心理的安全性の担保が社内に醸成されていなければなりません。最後に、経営者中心は大前提ですが、その上でのワンチームが重要となります。既存ビジネスと並走しながら、新規ビジネスを走らせていくイメージですね」
企業というくくりにこだわらず、意識の高い個人事業主の宣言にも使えるので、まさに「同志」を見つけるための指針になりそうだ。
母数が大きくなるほど力を発揮する、この「デジタル産業宣言」が、今後、社会運動にまで成長することを期待したい。
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