2024年度「DX銘柄」決定 グランプリにLIXILなど3社、デジタル技術の活用などが評価
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経済産業省は5月27日、東京証券取引所(東京都中央区)および独立行政法人情報処理推進機構とともに、デジタルトランスフォーメーション(DX)の先進的な取り組みを行う企業を選定する「DX銘柄」において、「DX銘柄2024」25社(うちDXグランプリ企業3社)、「DX注目企業2024」21社を発表した。
専門知識のない社員のDX支援やグローバルでの専門人材の採用拡大などを評価
2024年のグランプリには、LIXIL(東京都品川区)、三菱重工業(東京都千代田区)、アシックス(兵庫県神戸市)が選ばれた。
新たなデジタル技術の活用に積極的に取り組む(LIXIL)
LIXILは、デジタル技術を業界全体を変革する重要な戦略手段のひとつと位置付け、再現性の高いグローバルな成長の基盤としてDXを推進。2021年には、プログラミング言語などを必要としない「ノーコード」でアプリ開発ができるツールを導入したほか、専門知識のない従業員がシチズンデベロッパーとして、独自の業務ツールを開発できる環境を整えた。また、社員の働き方においても、デジタル技術を積極的に取り入れるなど、EX(従業員体験)を高めている。
こうした取り組みについて、審査員は、「DXに限らず非常に多岐にわたる変革を推し進めており、それらが企業のパーパスと明確に結びついており、従業員のパワーのベクトルを
全事業分野を対象にDX化を推進(三菱重工業)
三菱重工業は2022年7月、DX推進に向けて、従来からある技術基盤の共有化とグループ内の展開を目的に「デジタルイノベーション本部」を新設。グループ全体で2万人強のデジタルイノベーション人材の育成や事業の顧客接点に関するデジタルサービスなどを展開している。
特に、同社の強みである技術標準や設計ノウハウについては、形式知化し標準のITツールとして集約するなど、共通の技術基盤を整備することで、全事業分野でいつでも安心して活用できる環境を整備した。
審査員は、「同社の取り組みは、具体的なロードマップを示すとともに、年々具体化されてきている」と指摘した上で、「今後も社会課題解決企業として、DXを大きな武器としてさらなる成長が見込まれる」と期待を寄せた。
700人以上のデジタル人財をグローバルに配置(アシックス)
アシックスはこれまで、中長期経営計画において、DXを重要課題に掲げるなど、時代の流れを見据えながら、業務の効率化や新たなコンテンツの提供など幅広く可能性を広げてきた。現在は、海外ではアメリカ・カナダ・オランダで、国内では神戸・東京を中心に、700人以上の高度なITスキルを保有したデジタル人財を配置している。
機能役割に応じたグローバルな人材配置については、審査員も高く評価しており、「DX実現能力が高い企業」とコメントしている。
「DX銘柄2024」選出企業(22社)
グランプリ企業3社を除いた「DX銘柄2024」に選ばれた企業22社は以下の通り。
- ニチレイ(東京都中央区)
- ワコールホールディングス(京都府京都市)
- 旭化成(東京都千代田区)
- 第一三共(東京都中央区)
- ブリヂストン(同)
- AGC(東京都千代田区)
- JFEホールディングス(同)
- ダイキン工業(大阪府大阪市)
- オムロン(京都府京都市)
- 横河電機(東京都武蔵野市)
- アイシン(愛知県刈谷市)
- SGホールディングス(京都府京都市)
- 日本郵船(東京都千代田区)
- 日本航空(東京都品川区)
- 三菱倉庫(東京都中央区)
- ソフトバンク(東京都港区)
- マクニカホールディングス(神奈川県横浜市)
- アスクル(東京都江東区)
- 三井住友フィナンシャルグループ(東京都千代田区)
- 大和証券グループ本社(同)
- クレディセゾン(東京都豊島区)
- H.U.グループホールディングス(東京都港区)
顧客体験を革新する取り組みに着手
ワコールホールディングスは2023年10月から、ボディデータの分析から開発したカウンセリングサービスを開始。3D計測による「自分を知る」顧客体験の価値を強化し、ユーザーのタイムパフォーマンスを意識した接客とよりパーソナライズされた商品提案を実施している。このほか、インナーウェアならではの対面接客のストレスに着目し、顧客体験を「よりストレスフリーに、より自由に」革新した3D計測サービスも展開している。
審査員は、「顧客から直接ボディデータを取得し購買行動に結びつける。ノウハウを異業種へ転用し、さらに得られたデータを共有するというシナリオは素晴らしい」とコメント。また「この仕組み自体は以前からあるが、それにとどまらず当該年においてもいくつかの新商品開発などに結び付けていることも評価できる」としている。
「DX注目企業」選出企業(21社)
「DX注目企業」に選ばれた企業は以下の通り。
- マルハニチロ(東京都江東区)
- 富士フイルムホールディングス(東京都港区)
- 塩野義製薬(大阪府大阪市)
- 日本碍子(愛知県名古屋市)
- 三菱マテリアル(東京都千代田区)
- デンソー(愛知県刈谷市)
- TOPPANホールディングス(東京都文京区)
- 東京電力ホールディングス(東京都千代田区)
- ヤマトホールディングス(東京都中央区)
- 商船三井(東京都港区)
- アジア航測(東京都新宿区)
- 大塚商会(東京都千代田区)
- 双日(同)
- 日本瓦斯(東京都渋谷区)
- ふくおかフィナンシャルグループ(福岡県福岡市)
- 東海東京フィナンシャル・ホールディングス(東京都中央区)
- プレミアグループ(東京都港区)
- 東京センチュリー(東京都千代田区)
- SREホールディングス(東京都港区)
- ビーウィズ(東京都新宿区)
- トランス・コスモス(東京都豊島区)
「DX注目企業」に選出された企業の主な取り組み
- マルハニチロ
- AI魚体計数機を開発。これまで手作業で計数していた尾数を、AIに魚種の形状と色彩を学習させ、精度99%の自動計数を実現した
- 富士フイルムホールディングス
- AIを活用した医師の診断を支援するデジタル技術を健診サービスに適用し、新興国における健康促進に貢献している
- アジア航測
- DX人財教育プログラムを実装。3年間で約3割の社員の受講を目指している
- ビーウィズ
- 自社開発システムを活用し、完全在宅型オペレーションセンターの構築を推進。今後も在宅オペレーターを増員し、従業員の働きやすさの提供につなげていく
なお、制度開始当初から傑出した取り組みを継続している企業を認定する「DXプラチナ企業2024−2026」には、日立製作所(東京都千代田区)とトプコン(東京都板橋区)が選ばれた。
中堅・中小企業向けのDX推進施策として、「DXセレクション」を展開
経済産業省では、中堅企業や中小企業などのモデルケースとなるようなDX事例を選定する「DXセレクション」も毎年募集している。
「わが社のDXのポイント」成果やDX導入時の苦労など、中小企業ならではの試行錯誤が参考にできる項目を掲載しまとめることで、地域内や業種内での横展開を支援している。過去の受賞企業の取り組みは同省の特設ウェブサイトで確認できる。
今回のDX銘柄2024の発表の詳細はこちらで確認できる。
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