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改正民法で変わる債権法【その4】法定利率の改正

2019年05月31日

 今回は、法定利率の改正についてご説明します。

■法定利率とは

 法定利率とは、当事者同士で延滞利息について合意がないときに適用される民法上の利率です。お金を支払う債務には支払い期日がありますが、これに遅れると遅れた期間分の利息がかかります。債権者にすれば、もしきちんと支払いを受けていれば、そのお金で資産運用を行い、さらに利益を得られていたかもしれないためです。

■改正の内容

(1)利率の見直し
 現行民法では、民法404条により、適用利率について当事者間の合意がない場合、基本的には年率5%の利率が適用されることになります。ただし、商人は仕事として売買をしているので、債務不履行についての責任が一般人よりも重く規定され、例外として、商人同士の取り引きには、商事法定利率として6%の利率が適用されるとなっていました。

 しかし、近年日本では未曽有の低金利が続いています。そのため、この5%なり6%という法定利率は、現状の時勢にそぐわなくなってきました。そこで、今回の改正では、404条2項により法の施行時点での法定利率が、年率3%に引き下げられました。

 そして、実際の経済情勢に合わせて適切な利率となるように、この3%の利率は、国内銀行の短期貸出約定平均金利の直近5年間の平均値の変動に応じて、その後3年ごとの期間で、1%刻みで変動し得るという変動利率とされました(民法404条3項・4項)。

 このような変動制の利率を採用することにより、市場と法定利率が緩やかに連動していく仕組みとなりました。なお、変動利率の定めの詳細は法務省令で示されます。また、今回の改正により、特則として存在していた商事法定利率6%の定めは(商法514条)なくなり、一律で上記のような定めになりました。

(2)発生時点
 変動金利が採用されたことにより、どの時点での利率とするのかという点も重要になります。まず、利息を生ずべき債権については、基本的に利息が生じた最初の時点の法定利率とします。債務不履行の場合の損害賠償債権については、債務者が遅滞の責任を負った時点の法定利率です。後遺障害の逸失利益の計算における中間利息の控除については、損害賠償の請求権が生じた時点の法定利率によることが定められました。

■企業の実務への影響

 日本の民法では契約自由の原則を採用しているため、改正前も改正後も、延滞利息の料率について当事者が別途合意していれば、その合意内容が法定利息に優先して適用されます。公序良俗に反するような特別の場合を除き、合理的な遅延利息であれば、合意内容は有効と判断されますので、企業間取引のように、契約書で遅延利息を定めていたりする場合は、今回の改正による影響はあまりないといえるでしょう。

 影響がある場合としては、契約書に記載がない場合やその他特段当事者間で合意がない場合に、これまでの法定利率と異なるので、債権管理の実務に影響が考えられます。また、不当利得や不法行為の損害賠償債務の法定利率についても影響があります。不当利得や不法行為などは、事前に発生することが当事者間で想定されていない法定債権ですので、通常あらかじめ当事者の合意がないことがほとんどです。

■最後に

 繰り返しになりますが、契約に基づいて生じる利息については、利率も合わせて約定するため、事業者としての問題はあまりないかもしれません。一方で、予期せず他人に損害を与えてしまったなど、損害賠償責任や不当利得返還責任を負ってしまった場合には過払いにならないようきちんと利率にも注意を払う必要があるでしょう。

白石 哲也
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