最終更新日:2010年03月02日
私的録音補償金制度の概要
CD,MD、DVDなどのデジタル方式のコピー機能がついた機器(オーディオ、ラジカセなど)を買うときには、その価格の中に私的録音補償金という名目の著作物使用料が含まれています。 消費者にとってはとても便利なダビング機能ですが、著作権者にとっては無視できない脅威なのです。JASRACやレコード業界、映画業界などの権利者団体は高性能のダビング機器の普及が著作権者の収入に不当な損害を与えていると考え、文化庁に事態の打開を求めました。そこで1993年著作権法が改正され、30条2項で一定の録音・録画を行うものは相当の額の補償金を著作権者に支払わなければならないとされ、また、補償金の支払いは機器の購入時に文化庁長官に認可された補償金規定に従って購入者から製造販売業者を通じて指定団体に支払われることになりました。補償金の額は、複製の態様や機器の性能により多少異なり、だいだい基準価格(最初に流通したときの価格)の1%から3%程度です。
●問題点
著作権法30条1項では、個人的に、または家庭内など限られた範囲内における使用(私的使用)を目的とする複製を使用者に認めています。しかし、同条2項ではデジタル方式の録音録画機器で政令で定めるものを利用して録音録画を行うには、いちいち許諾を得る必要はないが、補償金を支払わなければならないとしました。市販CDなどの録音により現実に著作権者に不利益が生じるとしても、録音を行わないで再生機能のみを使用する人も多いはずですが、これらの人々も一律に補償金を負担することになります。また、著作権保護期間が終了している著作物や、家庭で撮影したビデオ、鳥や虫の声などを録音録画することはもともと自由なはずですが、このような利用のみを目的として機器を購入した場合にも補償金が課されます。私的録音をしないことを証明すれば、徴収された補償金を指定団体から返還してもらえることが著作権法104条の4第2項でわざわざ規定されていますが、実際に証明をしてまで返還請求をする人はいないでしょうし、どうやって証明すればよいのかもはっきりしません。仮に証明できたとしても、補償金返還後に私的録音をしないことをどうやって証明するのか?また、使用者に証明責任が一方的に課せられることに道義的問題はないのか?また1回の私的録音と100回の私的録音を一律に金銭負担させるのは不公平ではないかなど、問題点を指摘するときりがありません。このような問題があって、日本では長い間この制度の導入は見送られてきました。しかし、技術の進歩によって録音・録画が頻繁になったのも事実です。ドイツ・オーストリア・オランダ・フランスなどでは早くから(1980年代頃)この制度が導入されています。アメリカでは1992年に、日本はその翌年です。
(執筆:のぞみ合同事務所 行政書士日野孝次朗)
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