身近な著作権法:音楽著作権の世界

最終更新日:2010年03月03日

身近な著作権法:目次

(1) 歌手やタレントの収入源

通常、歌手やタレントはプロダクションに所属しています。プロダクションはマネージャーをつけて、テレビラジオの出演、レコードやCMなどさまざまな仕事の世話をし、その報酬として出演料や講演料を得ます。その一部を専属料として専属実演家契約によって管理している歌手やタレント本人に分配します。芸能人がその才能を活かし成功するには、有能なプロダクションの存在が欠かせません。

(2) 実演家という人々

アイドルタレントは主に歌ったり踊ったりするのが専門で、歌詞やメロディーを作るのは作詞家作曲家の仕事です。歌ったり踊ったりする人を著作権法では実演家といい、実演家は録音権・録画権・送信可能化権・貸与権・貸与による報酬請求権・二次使用料請求権・私的録音録画補償金請求権、といった権利を持っています。歌をCDにコピーして販売したり、実演したテレビ番組を放送する場合、実演家から許諾(録音権・録画権に基づく)を得る必要があります。ただし、実際には歌手などの実演家権は専属実演家契約によりレコード会社などに帰属しているので、歌手自身が許諾を行うのではありません。その反面、レコード会社等は自由に専属アーティストの実演を録音録画する権利をもちます。歌手は専属アーティストとしてレコード会社等から印税を受け取るのであって、著作権使用料を直接もらえるのではありません。ところが、最近は歌を自分で作り、その歌を自分で歌うアーティストが多くなりました。その方が実演家、著作者、両方の立場からの収入が得られるのです。才能のあるアーティストはこちらを目指します。

(3) 著作権は音楽出版社に

歌においては作曲家と作詞家が著作者です。しかし、作曲家や作詞家は、その歌の著作権を音楽出版社に譲渡してしまうのが普通です。というのも、作曲家や作詞家は芸術的な才能はあっても、歌を世に広め著作権を管理して利益を得るのは苦手です。著作権は、複製権、演奏権、公衆送信権、貸与権など、さまざまな権利を含んでいて管理をするのが大変なので、音楽出版社というプロに任せておく方が合理的です。著作者は歌の著作権を音楽出版社に譲渡する代わりに印税を受け取ります。ここが著作権料と印税の違いです。著作権料はJASRACがレコードの売上などに応じて徴収し、著作権者(通常は音楽出版社)に分配するものです。あくまでも著作権料を受け取るのは、著作権者である音楽出版社であって作詞作曲家ではありません(JASRACに著作権管理を任せていない場合は異なります)。しかし、作詞家や作曲家が依然として著作者であることに変わりありません。著作権は譲渡できても、著作者としての地位は永遠に動かせないのです。そして、著作者には著作者人格権という固有の権利が著作権法上認められています。

(4) レコード製作者

歌をCDとして売り出すためにはレコードの原盤を制作しなければなりません。原盤を制作するにはスタジオの使用料などに多大な費用がかかるので、アーティスト自身ではなく、アーティストと専属実演家契約を結んでいるレコード会社や音楽出版社などが原盤制作を行い、原盤権を取得する場合がほとんどです。レコード会社は原盤権を譲り受けてCDとして大量に複製して流通網に乗せて広告し販売します。かつては、原盤の制作はレコード会社が独占していましたが、最近では音楽出版社やプロダクション、放送局などが共同して原盤制作を行うことが多くなったといいます。以上のように、音楽アーティストが楽曲を世に送り出すまでには、実演家、プロダクション、音楽出版社、レコード会社などが互いに役割を分担し合っています。

(5)CD1枚あたりの著作権料

CD1枚あたりの著作権料は、(税抜き価格: 税込価格*5.35%)×0.06です。

ただし、ジャケット控除というものがあり、計算の対象となるCD売上枚数を一般の販売の場合は出荷数の80%、通信販売なら90%などとして取り決めている。3000円のCDならおよそ135円程度か。音楽業界は今や劇的な変化を目前にしている。インターネットによる音楽の配信が実用化されるからだ。これまでアーディストが音楽作品を世に出すためにはレコード会社や音楽出版社の存在が不可欠であったが、インターネットでアーティストから利用者に直接音楽を届けられるとすると、原盤さえ制作すれば誰でも簡単にネット市場に売り出すことができる。もちろんCDが市場から姿を消すことはないだろう。インターネットで配信する場合、CD生産のコストが不要であるため1曲につき200円から300円という低価格(CDならシングルでも1000円位が多い)で販売されそうである。しかも、利用者は自分が好きな曲のみを選んで購入できる(CDならば買い手の意思に関係なくアルバムの全曲を買わされる)のが決定的な違いだ。余計なB面の曲を買わされないで済む。考えてみると、今までの音楽著作権は関係企業の利益追求に傾きすぎていたように思う。これからはアーティストが何の気兼ねなしに自分の作品を公表できるようになるのだろうか。真に文化の発展に結びつく音楽著作権であって欲しいものだ。

(執筆:のぞみ合同事務所 行政書士日野孝次朗)

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