最終更新日:2010年03月03日
●OAフロア
現在、パソコンが一人一台配備され、さらにLANの発達により、オフィス環境が目覚しく変化している。その結果、OA機器、端末(コンピュータ)の導入によるスペースの確保、複雑化した配線の処理、メンテナンスやレイアウト変更に伴う手間とコストの問題などに対応する為に、フリーアクセスフロアによる先行統合配線を導入するケースが多くなっている。ご存知のように、フリーアクセスフロアとは(別名OAフロアとも言う)、床の下にさらに空間(高さ10cm程度)があり、その中を電源コードや通信回線を自由に敷設できる設備である。敷設工事の際は、どのOAフロアを使うか、工事業者に一存するのではなく、メーカーの選定も含めて自社で検討すべきである。インテリジェントビルと言われる最新のオフィスビルは、ほとんどがこの施設を完備している。
(1) 先行統合配線
OAフロアによる先行統合配線とは、初期の施設工事の時点で、あらかじめオフィス内全体を一定面積(例えば、2.5?)で区切り、各ゾーンに一定(例えば、6名)人数分の電話線、オンライン回線、電源の配線ベースを床下にセッティングしておくことである。先行投資費用はかかるが、事前にある程度余裕のあるインフラが完成されているので、レイ変や人員増に伴う電源、電話の配線移設や増設工事(床下の電話ジャックや電源コンセントを取出す作業)を自社で出来、外部に依頼することによるコストを抑えることができる。電話とオンライン回線をパッチパネルという切り替え装置で管理することにより、自社でレイ変に伴う内線番号の変更も簡単に対応できる。先行統合配線の工事については、電話、端末のジャックと電源コンセントをいくつどこに出すかを工事業者に伝えれば良い。通信用のジャックは、一人一台端末が配備されても賄えるような状態にしておくと良い。
(2) メーカー選定
OAフロアのメーカーだが、それ自体は什器メーカーや家電メーカーで販売している。施工業者にメーカーと型を指定すれば、そのメーカーから購入し、必要個数でもって施工してくれる。他の工事との関係だが、床ができていないと什器備品も設置できないし、配線工事も入れない。全自営工事の中で一番優先順位が高い。移転を伴わず、レイ変時に工事する場合は特に工程管理が難しくなるので、工事業者と十分確認する必要がある。購入後のメンテだが、OAフロア自体の修理はほとんど発生しない。破損した場合は代わりのプレートを取り寄せて交換するだけで、業者を呼んで対応してもらうこともない。但し、年限が経つと、OAフロア上のカーペットの糊が弱くなってくる。特に通行が激しい通路とか、コピー等の重量物を置いている所は剥がれやすい。剥がれた部分に専用の糊を塗って、カーペットを載せれば簡単に修理は可能であるので、予め、専用の糊を入手しておく。
●必要設備
まず重要な事として移転先・レイ変後の電話、電源設備状況の確認がある。電話回線については、建物により、引き込み回線がそもそも足りず、回線増設工事が必要になる場合、ビル自体で既に回線を増やすことができない場合もある。電話やFAXで使用する回線数と合せて必要な回線数の把握は、是非とも早期にかつ正確に行なうべきである。電源に関しては、移転先・レイ変後のビルの電源回路数が足りずに分電盤の増設工事が必要な場合もある。電気使用機器も含めて必要な電源確保が必要である。ホスト端末のスペース確保も必要である。間仕切りで囲うか、別の部屋を確保する。防火設備も、機器の保護の観点から注意が必要。あわせて、無停電装置の配備も検討する。
(1) 電源確保
電源で注意を要するのが、レーザープリンターである。この機器は電気使用量が大きく(10A程度)、単独回路をあてがう必要がある。事務室内には、それ以外にもコピー等の電気使用量が大きい機器を設置することになると思うので、そのことも考慮して、電源の確保を行う必要がある。また、コンピュータ単体では、そんなに電気を使用するものではないが、一人一台配備するような状態になると、結果として電源が足りるか、コンセントの数が足りるかどうかの問題が発生してくる。移転時に各回路とそれにぶら下がっているコンセントの場所と個数について、正確に把握しておき、端末が増えてきたときの対応がすぐとれるようにしておく。情報システム部門と移転後も連携を取って、知らないうちに端末が増えて、電源オーバーとなり、作業途中でブレーカーが落ちることにならないような体制をとっておく。
(2) スペース確保
ここでの課題は、ホストコンピューターを設置する電算室の位置をどこにするかである。電算室にはサーバー等のメインフレームを設置し、通常使用するコンピュータやプリンターは設置しない。常時人が作業することは無く、メンテナンスやシステム変更等の作業を行う場所である。大規模なオフィスビルでマシーン室が個別に取れるのであれば問題ないが、事務室に並存する場合はその場所の確保に苦労する。確認事項として、必要電圧、単独回路の必要個数、コンセントの必要個数がある。現在使用している機種の必要電源等を確認し確保する。必要電話回線数が引きこめるかも確認しておく。セキュリティーについても検討する。一般社員が入室できないように鍵管理までするのか、フリーにしておくのか。情報システム室を交えて確認する。それによって部屋の作り(間仕切りの仕方)が変ってくる。また、設置する備品の確認もしておき、それが設置できる什器を用意しておく。
(3) 間仕切り
設置場所は、基本的には事務室の一番奥まったところになるかと思うが、注意する点は騒音と放射熱対策である。当然パーテーションや間仕切りで区切ることになると思うが、その場合の形態、つまり、天井まで仕切るのか、上部は欄間開けにするのか、ガラス窓をつくるか、完全目隠しとするのか、扉の形態はどうするのか等検討が必要になる。事務室内設置の場合は、特に騒音と放射熱には注意を要する。空気の流れが悪い場所だと熱がこもってしまい、その周囲、場合によっては事務室内の全端末と合せて事務室内全体の温度が上昇してしまう。個別に空調を設置するといった検討が必要になる。ちなみに、移転先ビルの換気状態や空気の流れは是非とも確認しておくべきである。空気の流れを遮断するような場所に什器を設置したり、間仕切りを立てることは、温度上昇の原因となるので是非とも避けるべきである。
(3) 防火設備
通常の消火器や水による消火器では機器自体が故障してしまうので、二酸化炭素消火器等のものを準備する。また、間仕切りを使っての部屋の仕切り方について、天井まで仕切ってしまった場合は、その部屋内に煙感知器やビルによってはスプリンクラーの設置が消防法上必要になるので注意が必要。増設するか、間仕切りの仕方を変える必要が出てくる。さらに、ホストコンピューター等の設置には、耐震対策も加味した什器で設置すべきである。各什器会社より、耐震性に優れたものがでているので検討した方が良い。
(4) 無停電装置
ホストコンピューターについては、無停電装置が必要になる。建物自体が停電になったときでも、2?3時間程度は稼動できるようなバッテリーである。いきなりシャットダウンするのではなく、バックアップをして通常どおり電源が落とせる時間を確保するためにも必要である。また、無停電装置は必要な電圧が20A程度と高めなので、設置場所の電圧の確保といった問題も見逃せない。
●引越作業
情報システム部門と関連する業者を集めて早めに工程会議を開き、その進捗状況についての確実な管理が是非とも必要である。優先設置を行うため、移動に関しては、優先的に搬出、搬入し、検証作業が十分に行える時間を確保する。移動手段についても、機器の損傷がないように、運搬するトラックもエアサスペンションのある車両を手配するなど留意する。
●優先設置
現在使用しているコンピュータ類を、そのまま移転後も使用する場合、搬出から業務開始までの短い間に搬入、取り付け、稼動を確認する必要がある。通常は、金曜日の夜から、土日にかけて移転作業を行い、月曜日の朝には通常業務が開始できるような状態にすることが必要である。移転前にいろいろなシミュレーションのもと情報システム部門が移転に備えた試験を行なうと思う。総務部としては、その試験から導き出された移転に必要な時間を、移転作業と各種事前工事の工程を考慮しつつ、ひねり出すことである。時間創出の方法として、コンピュータ、特にホストマシンの搬出、搬入を優先すること、ホストマシン近辺の電源及び通信回線工事、それらの配線工事を優先的に行なうなどして時間をひねり出す。
(執筆:『月刊総務』)
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