月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【緊急企画】新型肺炎から社員を守る 企業の対応策(1)

2020-03-09 10:00

世界的な新型コロナウイルスの感染による肺炎流行が止まらない。日本でも各地で感染者出ており、もはや日常生活の中でいつ、どこで感染するかわからない状況だ。会社と社員を守るため、今後起こり得る流行シナリオを把握し、迅速かつ適切な対応を取っていこう。

※記事内容は2月17日時点のものです。

繰り返し発生する新感染症・新型インフルエンザ

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」の流行が騒がれていますが、このような感染症の突発的な流行、あるいはパンデミック(世界的大流行)の発生は、BCP(事業継続計画)において想定外の要素ではなく、織り込んでおかねばならない「自然災害」であるといえます。


繰り返し発生する新感染症

 世界ではさまざまな感染症が常に流行しており、国内で注目を集めたものだけを並べても図表1のように多岐にわたります。今回の流行と同じ「コロナウイルス」を原因とした、2002年の「重症急性呼吸器症候群(SARS)」と2012年の「中東呼吸器症候群(MERS)」などは、その致死率の高さが問題となりましたが、パンデミックには至りませんでした。また「エボラ出血熱」「ジカウイルス感染症(ジカ熱)」「新型コロナウイルス感染症」は、WHO(世界保健機関)から、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」が宣言されるなど、対策が必要な脅威として認識されています。

新型インフルエンザパンデミックはいつ生じてもおかしくない

 40-41_1_2.jpgまたパンデミックに発展した感染症としては「新型インフルエンザ」が挙げられます(図表2)。近代で最悪のパンデミックとなった1918年の新型インフルエンザ(スペインかぜ)は、世界人口の最大30%が感染し、2,000万-5,000万人が死亡したと推定されます。このときの「致死率(感染者÷死亡者)」は2.5%程度と推定されています。最近のパンデミックは、2009年に発生した新型インフルエンザで、WHOからパンデミック宣言が発表され、国内でも約2,000万人が感染しましたが、幸い致死率が「季節性インフルエンザ」並みであり、人類の脅威という状況には至りませんでした。
 新型インフルエンザは10年から数十年おきに生じており、次のパンデミックがいつ生じてもおかしくなく、致死率が高い(数パーセント以上)ものであれば、事業継続はもちろん、自分自身の生命の安全が脅かされる事態になる可能性があります。政府も、大地震や浸水害と同じく「いつ発生してもおかしくない脅威」として、「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」の策定など、準備を行っています。
 しかし、大地震や新水害に被害の大小があるように、新感染症やパンデミックが常に事業継続の脅威になるとは限りません。致死率の高い感染症は恐ろしい対象ですが、国内で発生していなければ、少なくとも社員の安全に対する影響は最小限です。一方、致死率が低い感染症であっても、そう判明するまでは「よくわからない恐怖」の対象となり、パニック状態となる可能性がありますし、国内感染者が増加すれば一時的に業務に支障をきたします。

感染症流行のシナリオと確認すべき情報

では、こうした新しい感染症による流行が突発的に始まった場合、どのようなシナリオが考えられるのでしょうか。

感染力×致死率で予測する

 今回の新型コロナウイルス感染症に限らず、家庭や会社で感染症の流行の推移を見守る際には、「感染力(感染者数)」と「致死率(死亡者数)」の組み合わせで、その脅威や対応すべき方向性を推し量ることができます。
 図表3は、横軸に「世界レベルでの流行度合い」の高低を、縦軸に「致死率・影響度」の高低を表して、さまざまなウイルスがどのような特性を持っているかを表したものです。厳密な数値を表したグラフではないので、イメージをするための図として見てください。

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A:人類の危機「生命の安全を最優先し、最小の業務構成とする」

 事業への影響がもっとも大きいのは右上の「A」ゾーンで、一説に人類の25%を死亡させたという感染症「ペスト(黒死病)」や、近代最悪のパンデミックとなった1918年の新型インフルエンザ(スペインかぜ)」が当てはまります。流行中の感染症がこのゾーンに入る場合は人類の危機です。最大限の感染防止対策のほか、BCPを発動して事業所を閉鎖することなどが必要となる場合があります。

B:大騒ぎとなるが影響小「季節性インフルエンザと同じ対応で」

 右下の「B」ゾーンは、二十世紀に発生した「パンデミックとなったが死者はそれほど発生しなかった(といっても数十万-数百万人単位では生じていますが)新型インフルエンザ」が当てはまります。パンデミックが起きると全世界で数千万-数億人の感染者が発生するため、一時的にはパニック状態になりますが、「致死率が低く、感染しても命を落とす可能性は低い」ことがわかると、一気に沈静化します。
 2009年の新型インフルエンザも、流行の初期段階においては一時的に店頭からマスクがなくなりましたが、致死率が低いことが広く伝わるにつれて沈静化していきました。このような感染症が流行している場合は、季節性インフルエンザと同じような対応で十分です。

C:海外発生時は冷静に「国内発生時は要対策。適切な情報収集を」

 左上の「C」ゾーンは、致死率が高いため感染国では大変な状態となりますが、流行が広まらない国においては冷静な対応で問題なしという状況です。今回の新型コロナウイルスは、現在(記事執筆時点)このゾーンに当てはまります。中国以外で爆発的な流行が生じずに沈静化すれば、中国ビジネスが主力である企業以外への影響は最小限となります。
 国内での流行が増加した場合は、致死率が低下すれば「B」ゾーンへ移行するので大きな問題にはなりませんが、致死率2%程度を維持したままで爆発的流行となった場合は、社内でも死者が発生する可能性があるため、徹底した感染防止対策や在宅勤務などの対応が必要です。

流行シナリオを把握し、適切な対応を取るようにする

 新感染症や新型インフルエンザの流行初期は、さまざまな憶測が飛び交うため不安になりがちです。「感染力(感染者数)」と「致死率(死亡者数)」をきちんと調べ、両方が高い場合は対策が必要ですが、いずれかが低い場合の影響は最小限です。感染力は、感染者数が正しく発表されている間はコントロールされた状態にあるため、大きな心配はいりません。致死率は、当初は高い数字となりますが、検査キットなどが出回り「感染者数」が増加すれば、一般的に低下します。情報に一喜一憂せず、冷静な判断をしましょう。

『月刊総務』2020年4月号P40-41より転載

ソナエルワークス代表
高荷智也さん
備え・防災アドバイザー/BCP策定アドバイザー。「自分と家族が死なないための防災対策」と「企業の実践的BCP策定」のポイントを解説するフリーの専門家。本誌にて「総務の引き出し:防災」を連載中。