月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

働き方改革はここから始める 電子化・ペーパーレス入門(1)

2020-07-28 20:00

リモートワークや在宅勤務を行う上で、紙やはんこ必須の作業がネックとなった人も多いのではないでしょうか。

実は、世界で印鑑登録制度のある国は、もはや日本、台湾、韓国のみなのです。

日本は電子化・ペーパーレスの環境が整ってきているはずなのに、なぜ進まないのか。

本稿では、その理由も踏まえ、正しい電子化・ペーパーレスの方法を解説していきます。

日本の電子化・ペーパーレス事情

意外に多いデジタル化に関する法律

 日本では、ビジネス文書の電子化・ペーパーレス(以下、「デジタル化」)の規制緩和が急速に進んでいます。1998年の電子帳簿保存法に始まり、2001年の電子署名法、2005年のe‐文書法など、251の法規制により、紙保存を義務付けられている書類のデジタル保存が可能となっています。
 さらに電子帳簿保存法・スキャナ保存制度に関しては、2016年、2017年の規制緩和に続いて、2019年も「重要な国税関係書類(領収書、契約書、請求書や納品書など資金やモノの流れに直結する書類)を過去にさかのぼってデジタル保存を可能にする」など、規制緩和の流れが加速しています。
 そして、2019年5月24日、行政手続きを原則、電子申請に統一する「デジタルファースト法」が参院本会議で可決・成立しました。これは、従来の紙とはんこによる行政手続きへの決別を意味しています。
 しかしながら、われわれを取り巻くデジタル化の環境はスピード感を持って進んでいるとはいえません。法規制緩和は進んでいるのに企業が追い付いていない。これが今の日本が置かれている状況なのです。

なぜ日本でデジタル化が進まないのか

 法規制の緩和開始から20年以上経過しているにもかかわらず、多くの日本企業がデジタル化にシフトし切れていないことは残念でなりません。
 私自身、この3年間、デジタル化を日本に根付かせるべく、ビジネス文書のデジタル保存に要求される法的要件を備え、社内外でデジタル文書をやりとりできるクラウドサービスを開発・販売してきました。その過程で多くの企業のトップや現場の方々と意見を交換しています。
 その経験を踏まえると、デジタル化に踏み込めない企業は大きく3パターンに分類できます。
(1)トップがデジタル化に無関心、または否定的
 高齢の経営者に多いようです。ITリテラシーの低さであったり、デジタル化により享受できる効率性のイメージが欠如していたり、さらには「私が役員の間は面倒なので既存の仕組みを変えたくない」という拒否反応を示している経営者もいます。
 新しいチャレンジには失敗もあるでしょう。しかし、それを乗り越えることが次のステージへの絶対条件なのです。世代交代を待つしかないのでしょうか?
(2)トップはデジタル化を推進させたいが現場が否定的
 (2)は、さらにいくつかの理由に分かれます。
●新しい知識や操作を覚えることへの抵抗感
 とにかく既存の業務を変えたくないという理由です。(1)でも述べましたが、日本企業にまん延しているチャレンジ精神の欠如です。
●効率化が進み、人員が不要になるのではないかという心理的な不安
 これは経営トップ層が明確なビジョンや思いを示し、リーダーシップを発揮すべきところです。逆に、今後は少子高齢化によって人手不足になることは明白な事実なのですから。
●知識不足
 「その文書はデジタル化できないと思っていた」「電子契約だと印紙税がかからないの?」といったものです。ITの進化スピードは以前とは比べものにならないほどですし、わが国でのデジタル化の規制緩和はかなりのスピードで進んでいます。
 こちらはいわずもがなですが、ビジネス環境の変化を見逃さず、新しい知識を習得し続けるしかありません。
(3)他社の動向を気にする受け身の企業体質
 (3)に関しても、日本では多く見られる現象ではないでしょうか。「周りの会社もまだ紙だから」という理屈付けです。確かに、請求書や契約書など企業間でやりとりするビジネス文書では、取引相手がデジタルでの処理へ同意することが必要です。
 しかし、企業内やグループ会社間であれば、他社の同意を必要とせず進められます。できるところから着手すべきです。


【COLUMN』日本の労働生産性は低い?

 世界の労働生産性指標を見ると、日本は就業者1人当たり、時間当たりともにOECD加盟36か国中21位、G7加盟国では最下位に甘んじています。サービス業に至っては米国企業の半分、日本企業2人で米国企業1人と同じ生産性となっています※。日本は少子高齢化の影響が顕在化しつつあることからも、人手に頼らない生産性の向上は喫緊の課題です。
 ITを活用した生産性向上のためのデジタル化が求められ、中でも日本のビジネスシーンの象徴「紙とはんこ」文化からの脱却が急務であるといえるのではないでしょうか。

※出所:公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較2019」



ペーパーロジック株式会社
代表取締役社長 兼 CEO 横山公一さん
公認会計士・税理士。1991年監査法人トーマツに入所し、監査業務、株式公開支援業務、関与先のABS発行の会計税務等を担当。1999年創業メンバーとして金融特化型の会計事務所を設立、代表パートナーとして同社を取扱ファンド数1,500、管理金額4兆円へと成長させ、金融特化型会計事務所としては国内最大手にまで成長させる。ファンド管理のスペシャリスト。
https://paperlogic.co.jp/


『月刊総務』2020年5月号P52-53より転載