月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

総務パーソンが押さえておきたい10月のトピックス

2020-09-30 10:24

2020.October

■法務

執筆/小沢・秋山法律事務所 弁護士 香月裕爾


●契約成立における押印の要否

 政府よりテレワーク等のリモート勤務が推奨されている中、企業からは契約書等に押印のため出社せざるを得ない旨の指摘がされています。しかし、民法その他の法律には契約の成立要件等に記名押印は一切明記されていません。
 そこで、本年6月19日に内閣府、法務省、経済産業省は連名で「押印についてのQ&A」を公表しました。「契約書に押印しなくても、法律違反にならないか」という質問には、「私法上、契約は当事者の意思の合致により、成立するものであり、書面の作成及びその書面への押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていない」「特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印しなくても、契約の効力に影響は生じない」と回答しています。
 また、「文書の成立の真正を証明する手段を確保するために、どのようなものが考えられるか」については、「(1)継続的な取引関係がある場合には、取引先とのメールのメールアドレス・本文及び日時等、送受信記録の保存」「(2)新規に取引関係に入る場合には、契約締結前段階での本人確認情報の記録・保存。本人確認情報の入手過程の記録・保存。文書や契約の成立過程の保存」「(3)電子署名や電子認証サービスの活用」が回答内容となっています。
 (3)については、わが国の電子契約市場は拡大傾向にあり、今年度は100億円程度の市場規模になるとの予測もあるようです。


■労務

執筆/斉藤社労士事務所 特定社労士 斉藤貴久


●最低賃金引き上げ見送り

 2020年7月27日、中央最低賃金審議会は「令和2年度地域別最低賃金額改定の目安」について答申しました。新型コロナウイルス感染症による影響等を踏まえ、「引上げ額の目安を示すことは困難であり、現行水準を維持することが適当」とされ、最低賃金の引き上げが実質的に見送られたことになります。これにより、2016年から4年間連続した3%を超えるハイペースな引き上げが終了することになります。
 ただし、7月17日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2020」では、「より早期に全国加重平均1,000円になることを目指すとの方針を堅持する」とされており、今年は見送りになったものの、来年以降、最低賃金の引き上げがどうなるか注目されます。

●遅れているパワハラ対応

 厚生労働省は「令和元年度雇用均等基本調査」の結果概要を公表しました。この調査では、ハラスメントに対する企業の対応状況を調べています。セクシュアルハラスメント防止の対策に「取り組んでいる」企業割合は80.2%、同様にマタニティハラスメントでは75.7%、パワーハラスメントは37.9%です。
 「パワハラ防止法」が、2020年6月1日(中小企業は2022年4月1日)に施行されたばかりなのでやむを得ないかもしれませんが、企業の対応が遅れていることがわかります。


■税務

執筆/税理士法人AKJパートナーズ


●雇用調整助成金の課税関係と収益の計上時期

 事業主が新型コロナウイルス感染症の影響を受けたことなどにより、雇用調整助成金を申請し給付を受ける場合、その給付金は収益となり、法人税や所得税の課税の対象となります。
 また、その収益の計上時期は、給付を受けた時点ではなく、給付の原因となった休業等の事実があった時点です。仮に雇用調整助成金の申請後、給付を受ける前に決算日を迎え申告を行う場合、給付金額は確定していませんが、見積金額により収益を計上する必要があります。
 なお、雇用調整助成金の給付は資産の譲渡等には該当しないため、消費税は課税されません。

●配偶者居住権の創設

 2020年4月1日に施行された民法の改正により、新たに配偶者居住権が創設されました。配偶者居住権とは、相続開始時に亡くなった被相続人が所有していた建物に居住していた配偶者が、一定の要件を満たすことにより、相続後も賃料の負担なく、そのままその建物に住み続けることができる権利をいいます。配偶者居住権は所定の方法により財産評価され、相続財産となるため、相続税の課税の対象となります。
 一方、配偶者居住権を取得した配偶者が将来亡くなった場合、民法の規定により配偶者居住権は配偶者の死亡とともに消滅するため、配偶者が亡くなったことによる相続の相続財産とはならず、相続税の課税の対象とはなりません。


『月刊総務』2020年10月号P7より転載