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番外編「人事労務リスク対処法(1)」

2010年10月27日

 今回から2回に分けて、番外編として人事労務リスク対応について説明します。

 最近、「労務リスク対応」「人事労務コンプライアンス」「労働CSR」などの研修やセミナーを行う機会が多く、このテーマでの各企業の危機感、問題意識の高まりを肌で感じるからです。

 今回は、人事労務リスク増加の背景、リスク対処の基本的考え方を述べ、次回は、「パワーハラスメント&セクシャルハラスメント」、「過剰労働と社員のメンタルヘルス」の2つの事例で説明します。


■人事労務トラブル発生の増加とその背景
 人事労務トラブルは毎年かなりの割合で増加を続けています。
 厚生労働省発表の個別労働紛争相談の内訳を見ると、リストラ、退職勧奨など解雇に関するものが約3割を占めています。

 その他に、サービス残業、労働条件の引き下げ、セクハラ、パワハラ、給料の未払いなど、さまざまなものがあります。

 増加の背景は、長引く不況による企業の人件費抑制や個人の価値観・労働観の変化、仕事のストレス増加、働き方の多様化などさまざまな要因が絡み合っているのでしょう。企業側、社員側それぞれの余裕、ゆとりのなさが人事労務トラブルを増加させている原因の本質なのではないかと考えます。


■人事労務トラブル発生による損失、コスト
 人事労務トラブル発生は企業に大きな損失、コストを発生させます。具体的には、

・対応する社員の時間コスト、弁護士費用
・風評被害、会社のイメージ悪化、信用の失墜による営業活動や採用活動への悪影響
・社内の雰囲気悪化、社員のモチベーション低下

 などです。金銭的被害に加え、お金では換算できない損失も少なくありません。「労務トラブル倒産」というような物騒(ぶっそう)な言葉も耳にします。

 
■基本は予防。発生したら、早期対応、早期解決
 前回までのコラムでリスクマネジメントの基本を繰り返し述べてきましたが、労務リスク対策でも、それは変わりません。
 「大原則は予防。それでも発生してしまったら、早期対応、早期解決」です。


■人事総務部門として行うべきこと
 人事総務部門として行うべき予防策の基本は3つあります。
 
 1つ目は、労働法の正しい理解です。
 労働基準法、労働者派遣法など労働各法は細かい改正が頻繁にあります。基本的な項目は現行法を正しく理解しておかなければなりません。

 2つ目は、自社の就業規則の点検、メンテナンスです。
 1つ目の労働法の理解にかかわることですが、自社の就業規則が法改正にキャッチアップしているか、記載事項に不足はないか、などチェックし、メンテナンスを続けることが必要です。

 そして3つ目は、社員、特に管理者への人事労務トラブル対策の教育です。

 多くのトラブルは故意によるものではなく、理解不足や誤解によるものです。労務管理は個人の常識、価値観ではなく、労働法と就業規則を基準にして行うものです。労働法の基本事項、自社の就業規則、管理者としての注意点、予防策などを繰り返し教育する必要があります。

最新の労働法を反映している公的機関作成のリーフレットなどは、3つの予防策のどれにも活用できて便利です。
(参考)東京都産業労働局の労働関連資料・パンフレットダウンロードサイト

 
■管理者が行うべき予防策
 次に、管理者(上司)が行うべき予防策ですが、基本は2つです。

 1つ目は、部下、職場の観察です。多くのトラブルは発生前に予兆があります。職場の雰囲気、部下の出怠勤、言動、表情などを観察し、予兆を見逃さないようにします。急に遅刻欠勤が増えたり、ミスが続いたり、といった部下の変化は要注意です。
 
 2つ目は、部下とのコミュニケーションです。忙しいと部下とのコミュニケーションはおろそかにされがちです。自分から声をかける、気軽に相談しやすい雰囲気作りをするなど、日頃からコミュニケーションの質と量を維持するように心がけましょう。


■発生してしまったら、早期対応、早期解決
 予防に努めていても、発生を完全に防ぐことは容易ではありません。しかし、不幸にして発生してしまった場合でも、早期に対応すれば被害の拡大を防ぐことができます。
ここでは、人事労務トラブルが発生した場合の、管理者(上司)がとるべき行動の基本を示します。

 まずは事実を確認することです。当事者や関係者から話を聞き、事実を確認しましょう。事実を十分確認することなく、一部からの話や推測だけで判断、行動してはいけません。

 事実確認をしたらすぐに上司や人事総務部に報告を行います。
人に関するトラブルが発生すると、自らの管理者責任が問われることを心配し、報告をせずに自分だけで解決しようと考える人がいます。しかし、素人判断をして内密に処理しようとして、対応が後手になったり間違った対応をしたりして、事態が悪化してしまうことがあります。

 上司、人事総務部に報告をして、必要に応じて弁護士や社会保険労務士などに相談しましょう。

 対応方針が決まったら、その時は迅速(じんそく)に行動しましょう。正しく、迅速な対応が被害拡大を防ぎます。
 
 次回は、「パワーハラスメント&セクシャルハラスメント」、「過剰労働と社員のメンタルヘルス」の2つを事例に、予防法、発生時対応を具体的に説明します。

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