認知され始めた「気象病」 個人・企業ができる対処方法

雨が降ると頭痛やダルさが…… 梅雨の時期にこそ気を付けたい「気象病」、なりやすい人の特徴は?

月刊総務 編集部
最終更新日:
2024年05月10日
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頭痛やけんたい感、めまいなどがあるのに、病院で検査しても原因が見つからない。「休めば治る」「精神的なもの」などといわれるばかり──。その不調、もしかしたら「気象病」かもしれません。「気象病」とは、気象により起こるさまざまな体調不良のこと。本稿では、その原因と対策を2回にわたり解説します。今回は「気象病」の原因やなりやすい人の特徴について、せたがや内科・神経内科クリニック 院長の久手堅 司さんにお話をうかがいました。

取材・文◎武田 洋子

気圧、温度、湿度の変化が頭痛や倦怠感を引き起こす

せたがや内科・神経内科クリニック 院長 久手堅 司さん
せたがや内科・神経内科クリニック
院長
けん つかささん

医学博士。気圧予報・体調管理アプリ「頭痛ーる」監修医師。「自律神経失調症外来」などの特殊外来を立ち上げ、「気象病・天気外来」ではこれまでに5000人以上の患者を診察している。『気象病ハンドブック 低気圧不調が和らぐヒントとセルフケア』(誠文堂新光社)など著書多数。

気象病とはその名の通り、気象により引き起こされる心身の不調を指します。主に気圧、温度、湿度の短期的な変化に影響され、当クリニックを訪れる患者の多くは頭痛、次に倦怠感、めまいを訴えますが、ほかにも首肩こり、耳鳴り、吐き気、関節の痛み、ぜんそく、どう 、不眠、不安感など症状は多様。しかも一つではなく複数を併発しているケースがほとんどです。

難しいのは、内科や耳鼻科でレントゲン、心電図、MRI、血液検査などをどんなに繰り返しても、異常が見つからないこと。私が気象病・天気外来を開設してから7年が経ちますが、当初、気象病という疾患は全く知られておらず、患者もたいていはほかの病院で「気のせい」「精神的なもの」「休めば治る」などといわれながら、つらい症状を抱え続けていました。

今も「気象病」は正式な病名ではありません。病名がないので、診断書を出す際には「起床困難」や「頭痛」など症状に沿って記載し、当クリニックの診断として天気の影響が該当します、と書き添えるしかないのです。しかし、ここ7年で気象病の認知はずいぶん進み、最近は、産業医からの紹介で来院される方も増えています。

さて、病院では不調の原因がわからなくても、患者本人は天候との関係を経験的に感じていることが多いです。私は5000人を超える診察例から気象病のチェックリストを作りましたが(図表)、ここまで詳細に聞かなくても、だいたい最初の2問で判断できます。「天候が悪いときに体調が悪い」「雨が降る前や天候が悪化する前に、何となく天気の変化が予測できる」、どちらかに当てはまったら私の中では8割方、気象病だと診断できるのです。

図表:気象病チェックリスト

出所:『気象病ハンドブック 低気圧不調が和らぐヒントとセルフケア』(久手堅司著、誠文堂新光社)を基に作成
(※画像クリックで拡大)

なぜ気象の変化が体調に影響を及ぼすのでしょうか? 気象条件の中でも、特に影響が強いのが気圧です。飛行機が上昇すると、ペットボトルがパンパンに膨らむでしょう。あれは、気圧が下がって中の空気が膨張するからです。体も、気圧が下がると内圧が上がって膨張します。いちばん影響されやすいのが耳で、鼓膜の内側にある内耳が膨らみ、耳が詰まったような症状や、めまいを引き起こします。また、気圧が下がると血管が拡張するため血圧が下がり、もともと低い人は朝起きるのがつらくなったりします。

気圧の高低差が原因になることが圧倒的に多いのですが、気温差に弱い人もいて、症状の一番は倦怠感です。人間は、暑いときは汗をかき、寒いときは血管を収縮させて、体温を36度~37度くらいでコントロールしています。ところが激しい寒暖差が続くと、自律神経が疲労し、調整が利かなくなってしまうのです。私の経験では、不調につながる寒暖差は7度以上。一日の最高気温と最低気温、一週間の気温差、室内外の温度差が7度以上あり、その状態が繰り返されることで疲労が蓄積されていきます。

これらの原因から、年間で最も患者が多いのが天候の悪い梅雨と台風の時季です。つまり、5月のゴールデンウイーク後から梅雨が明ける7月頃が第1シーズンで、9月~10月の台風時季が第2シーズンになります。

ベースにある不調を軽減することが重要

では、どんな人が気象病になりやすいのでしょうか? 当クリニックの患者は、7、8割が女性です。圧倒的に男性よりも多いのです。いくつかの可能性が考えられますが、まず、10 ~ 50歳代の女性に症状が強く出るのは、女性ホルモンが関係していると推測できます。女性は月経周期や更年期といったホルモン変化により、体調の浮き沈みが大きいものです。また、気圧の影響を受けやすい低血圧の人が多く、背骨から頭蓋骨にかけて負担がかかる骨格形状や筋肉量の少なさ、冷え性、貧血など、もともと揺らぎやすい傾向にあります。そこに気象変化が重なることが、女性の患者が多い原因ではないでしょうか。

次に気象病になりやすいのは、体を動かさないデスクワークの人です。外回りの人や日頃から汗をかき、運動習慣のある人の方が、気象変化への耐性が高いのは間違いないところです。コロナ禍で10歳代の患者が増えたのですが、オンライン授業に切り替わり、動かない上にパソコンやスマホへの依存度が強くなったことが原因ではないかと思います。それから、首肩こりのある人も天候に左右されがちですね。日頃から不調のある人ほど、気象変化の影響を受けやすいのです。それは裏を返せば、個々に改善できる余地があるということになります。

自分で対策するときのポイントは、いきなり完治を求めないことです。元気なときの体調を0として、100を超えると気象病の症状が出るとしましょう。気象病でない人は、気圧の変化を受けても0~100の間で体調を維持できるので症状は出ません。一方、気象病の人はもともとのベースが0ではなく20~70なので、少しの変化でも100を超えてしまいます。ですから、まずはベースとなっている不調の度合いが少なくなるように対策を行うことが重要です。

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月刊総務 編集部

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