定着に効く福利厚生

利用率だけで判断しないで! 福利厚生の見直しは「誰に報いたいか」で考える

月刊総務オンライン編集部
最終更新日:
2025年07月10日

前回「変わりゆく福利厚生のニーズに対応できていますか? 『4つの観点』で自社の制度をアップデート」では、福利厚生を取り巻く環境変化などを整理した。今回は、制度見直しのポイントについて、マーサー マーシュ ベネフィッツの山浦拓さんにうかがった。

見直しの根幹に据える「誰に報いたいのか」

マーサー マーシュ ベネフィッツ
ベネフィット コンサルティング
山浦 拓さん

損害保険会社を経て、マーシュジャパン株式会社に入社。国内外の事業会社を対象とした福利厚生保険の制度設計および保険手配に従事し、健康保険組合移行支援やM&Aに関するプラン策定支援、大手自動車メーカーの福利厚生最適化コンサルティングなどの経験を有する。一橋大学社会学部卒業。マーサージャパン株式会社「人と仕事の未来 研究所」研究員。

環境変化は、企業に福利厚生の見直しを促している。では、より良い見直しのポイントはどこにあるのだろうか。

「重要なのは企業パーパスと整合性が取れているかどうかです(図表3)。基本的にはトップダウンで見直しを主導していく必要があります。まずは現状の把握ですが、いくつかのポイントの中で重視すべきなのが、各サービス提供者の統率と、自社施策のマーケットにおける立ち位置確認です」

住宅支援をはじめ福利厚生制度の中で提供されるサービスは、大体、複数のベンダーにアウトソーシングされている。しかし、それぞれのベンダーが個別に従業員対応を行うに任せていると、統一感が失われてしまう。どんなメニューがあるのか利用者側に伝わりづらく、コストばかりが膨らんでいくのだ。ボトムアップで要望を吸い上げるだけだと、こうした事態に陥りやすい。不利益変更を防ぐには全体像を把握した上で予算を再配分する必要があり、会社のカラーを打ち出す施策、従業員のニーズへの対応度、それぞれのコストなどを見極めることが先決だ。

「統一感を出すためには、自社の福利厚生の目的を明確にすることが重要です。土台になるのが、『誰に報いるための制度なのか』という問いです。企業のパーパスや将来像を踏まえ、どんな人を大事にしていきたいのかというビジョンを福利厚生に反映します。そこから逆算することで、減らすべきメニュー、手厚くするべきメニューを正しく調整することができるのです。あくまでも方針を決めるのは企業であり、そこを踏まえて各ベンダーへの発注を行います」

図表3:福利厚生制度を見直す際の視点・方針

出所:マーサー マーシュ ベネフィッツ

見直しの詳しいステップは図表4の通りだ。現状把握のステップにおいては、ベンチマーキングが有効だという。同業界でも異業界でも、労働力が移動する可能性のある企業の中で、自社の取り組みがどのくらいの充足度であるかを比較するのだ。「この部分は業界内で上位10%を目指す」「こちらはマーケット平均を下回ってもいい」などのベンチマーキングはKPIにしやすい。

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